邪竜バジリスク
ある魔獣が石化をもたらした。
石化とは人間が石になることである。
魔獣は目を光らせると、人を石化させていった。
魔獣は人々を次々と襲った。
被害は大きくなっていった。
ディックはワシの目で俯瞰的に町全体を眺め、次いでカラスの目で地上の隅々まで眺めた。
ワシの目とカラスの目はディックの特殊能力だった。
洋館にいながら、ディックは町を見ることができた。
「石化、か」
「石化? なんなの、それは?」
詩音がディックに尋ねた。
「石にされることだ」
ディックは執務室で窓際に立ち、ワシの目とカラスの目で都市を観察していた。
ディックは石化事件を追っていた。
「石にされることって、できるの、そんなこと?」
「石化を持つ魔獣になら可能だ。人を石にしてしまうのさ」
「ディックは何を見ているの?」
「俺の目は特殊でね。ここにいながら梅園市が見えるのさ」
そう言うと、ディックはイスに座った。
「石化が為されたのは夜だ。ということは夜間見張っていれば何かしっぽがつかめるかもしれない」
夜――魔獣は湖のほとりに現れ、人を石化させた。
人々は驚く間もなく、石化された。
「そこまでだ!」
魔獣の前にディックが現れた。
ディックはすでに刀を抜いていた。
「石化をもたらす魔獣の正体はバジリスクだったか」
邪竜バジリスク。
一つ目の竜で、体の色は茶色だった。
バジリスクはディックに目を定めた。
バジリスクは目を妖しく光らせた。
フラッシュが放たれた。
「おっと!」
ディックは右側に急いでよけた。
「俺に石化は通用しないぜ?」
バジリスクは妖しい光を目から何度も放ったが、ディックはそのすべてをかわした。
ディックはバジリスクを斬りつけた。
バジリスクはひるんだ。
バジリスクは口から闇の息をはいた。
ディックは横にずれてそれをかわした。
ディックは再度バジリスクを攻撃した。
今一つ、打撃力が足りなかった。
その後、ディックはバジリスクと距離を取った。
バジリスクは口から重粒子の弾をはいた。
重力の粒子が爆発と衝撃を巻き起こす。
周囲には爆風が起こった。
「ちっ!」
ディックは後方に跳びのいて爆発をかわした。
爆風が収まると、その場からバジリスクは消えていた。
「逃げられたか」
バジリスクは湖の中に逃げて、姿を消した。
ディックは険しい表情で、夜の暗い湖を見つめた。
「くそ、せっかくしっぽをつかんだというのに……」
ディックは帽子をかぶりなおした。
次の日の昼、詩音がディックのもとを訪れた。
「それで、どうだったの?」
「まんまと逃げられた。ただ、魔獣の正体だけはわかった。石化の竜バジリスクだ」
「バジリスク?」
「石化能力を持つ邪竜だ」
「ところで、石にされた人たちはもとに戻るの?」
「ああ。バジリスクを倒せば元に戻る」
ディックにはいつものふざけた調子がなかった。
「やれやれ……せっかく、しっぽをつかんだのにな。振出しに戻ってしまった」
ディックはおもしろくなさそうに言った。
それからしばらくはバジリスクによる被害はなかった。
バジリスクは姿をくらましたままだった。
ディックは町中を跳んでバジリスクの所在をつかもうとしたが、見つけられなかった。
「バジリスク……いったいどこにいる?」
しばらくのあいだ、バジリスクは姿を隠したままだった。
バジリスクが出現しない日が続いた。
ディックは偵察を終えて、洋館に戻った。
その日も詩音が来ていた。
「お疲れ様。何かつかめた?」
「いや、何もつかめなかった」
ディックはイスに腰かけた。
詩音はソファーに座って紅茶を飲んでいた。
「ここのところ、まったくバジリスクの気配がない。むしろ、不気味なくらいだ」
「バジリスク……どこで何をしているのかしら……不安だわ」
「まったく面白くない……奴はいったい何を……!?」
ディックは急にイスから立ち上がり、窓の前に立った。
「これは……!?」
「どうしたの?」
「駅だ! バジリスクが駅に現れた。
ディックはすかさず駅に向かった。
駅ではバジリスクが人々を襲っていた。
何人もの人々が石化していた。
人々はおびえ、逃げ惑った。
「見つけたぞ!」
そこにディックと詩音が到着した。
「体の色が黒に変わっている……それに前より巨大化している……奴め、脱皮したか!」
バジリスクの色はどす黒かった。
「今度こそ、決着をつける! 詩音、下がっていろ!」
「ええ!」
バジリスクは妖しい眼光をディックに放った。
ディックは離れて回避した。
ディックは直後反撃に移った。
バジリスクに斬りつける。
「こいつ……前よりも大幅に耐久力が上がっている!?」
バジリスクは目からレーザーを出して、地面を横に薙ぎ払った。
「!?」
レーザーが引かれたところから膨大なエネルギーが噴き出した。
ディックは後方に跳びのき、緊急回避した。
「なんてパワーだよ……」
バジリスクは目からレーザーを出して、駅の屋根を吹き飛ばした。
ディックの上からがれきが落ちてくる。
「くっ!?」
ディックはがれきから逃れた。
バジリスクは闇の息をはき出した。
ディックはよけきれずに、闇の息の中から脱出した。
ディックは攻撃に移った。
バジリスクに斬撃を叩き込む。
バジリスクは尾で薙ぎ払った。
ディックは姿勢を低くしてかわした。
バジリスクは尾でディックを打ちつけてきた。
ディックはよけた。
ディックがいた地点はヒビ割れた。
バジリスクは尾で衝撃波を巻き起こした。
「うっ!?」
ディックは衝撃で吹き飛ばされた。
ディックは詩音の近くまで飛ばされた。
「ディック、大丈夫!?」
「ああ、なんとかな」
ディックは起きて立ち上がった。
ディックはバジリスクに斬りかかった。
バジリスクはディックにかみつこうとしてきた。
ディックはかわして反撃の斬撃を叩き込んだ。
「徐々に効いては来ているか」
ディックの斬撃は確実にバジリスクにダメージを与えていた。
手ごたえを感じる。
ディックは再び間合いを取った。
ディックは刀で居合の構えを取った。
バジリスクは弱りつつある。
バジリスクは目から石化の眼光を出そうとした。
刹那――
ディックは一閃を放った。
バジリスクの首が切断された。
「どうだ?」
ディックはニヤリと笑った。
してやったり。
バジリスクは崩れ落ちるように倒れた。
バジリスクは粒子化して消えていった。
ディックは刀をしまった。
「やったわね、ディック!」
詩音が近づいてきた。
ちょうどその時石化された人たちがもとに戻った。
「石化が解けたのね。良かった」
「一件落着だ。さて帰ってコーヒーでも飲むか」




