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Das Testament  テスタメント  作者: Siberius
Das Testament Shion
13/60

混沌の女王

「我々は今後地上に侵攻する。その時が来た。混沌が地上を支配するのだ」

アシュタルテ(Aschtarte)は女王のごとく言った。

アシュタルテは玉座に座り、目の前の部下を見ていた。

アシュタルテは数多くの魔物、怪物の頂点に立つ女王であった。

そのため、強大な権勢を誇っていた。

混沌の女王「アシュタルテ」。

「カオスこそ、地上のあるべき姿なのだ。おまえは先に地上に赴き、布石を打ってくるのだ。我々が人間界に現れるためにな」

「はは、お任せください。必ずや我らの本願を実現するためにも、務めを果たしてごらんにいれます」

部下はひざまずいて答えた。

地上で平和が続くころ、魔界では大規模な地上侵攻計画が進められていた。

部下はアシュタルテの前から姿を消した。

「カオスこそ、地上のあるべき姿なのだ。そして混沌の女王たるこの私が地上に君臨する。人間どもはこの私に隷属することによってのみ生かされるのだ」


梅園市は大地震に見舞われた。

それも一度や二度ではなかった。

立て続けに何度も起きた。

マスメディアは科学的観点からの分析で忙しいようだった。

ディックはそう思わなかった。

ディックはビルの屋上に来ていた。

高いところから町全体を見わたすためだ。

「この地震、何かが下から出ようとしているのか」

そこにミリエルがやって来た。

「アニキ、この地震って変じゃない? 何かが下からうごめいているように感じるわ」

「ああ、そうだ。これは魔界から何かが出ようとしている震動だ」

「なら悪魔のしわざというわけね」

「ただ、今回は今までとは違う」

「違う?」

「何か大規模なできごとが起ころうとしている。おそらく狙いは地上だ」

ディックは珍しく真剣に話した。

「いったい魔界で何が起きているのかしら?」

「ああ。いったい誰のしわざか、わからないがとんでもないことを企てているのは確かだ。どうやら平和な時は終わったらしいな」


アシュタルテの部下は地上で様々な工作にいそしんでいた。

梅園市の各地点に印を打ち、巨大な六芒星魔法陣を構築していた。

「これで最後だ」

部下は地面に印を穿つ。

「これでアシュタルテ様が降臨なさる準備が整った。地上侵攻は目前だ」

「ここで何をしている?」

「む?」

暗闇の中からディックが現れた。

「ヴァンパイアか。ヴァンパイアにしては妙な行動をしているな。地震と関係あるのか?」

「フフフ、もはや我らの邪魔をすることはできん。我らの目的は達成された。後は我らのあるじが降臨なさるのみ」

「何をしでかす気か知らないが、このまま見逃すと思うなよ?」

ディックは刀を取り出すと、ヴァンパイアに斬りかかった。

ヴァンパイアは爪を長くして、刀を受け止めた。

「何が目的だ?」

ディックは刀に力を込めた。

「きさまが知る必要はない。きさまはここで葬られるのだ!」

ヴァンパイアは左手の爪を長くし、ディックに斬りかかった。

ディックは後ろに跳びのいてかわした。

「死ぬがいい!」

ヴァンパイアは左右の爪で躍るように攻撃してきた。

鋭い爪がディックに襲いかかる。

ヴァンパイアの爪が標識に当たった。

標識は紙のように斬り裂かれた。

ディックはヴァンパイアの猛攻をかわしつつ、刀で反撃した。

ディックが刀でヴァンパイアの爪をはじいた。

「くっ!?」

ヴァンパイアは硬直し、隙ができた。

すかさず、ディックは刀の一撃を叩き込む。

「ぐあああああああ!?」

ディックがヴァンパイアを斬った。

ヴァンパイアは地面に倒れこんだ。

「くっくっく……」

「何がおかしい?」

「もはや我々の計画は止められぬ。地上は我らのものとなる。我があるじが降臨なさる時、地上は混沌に支配されるのだ。私の地上での目的はすべて終えた。私を倒したところで、我々を止めることはもはや不可能だ。おまえたちは自らの無力ぶりを思い知るがいい……」

そう言い終わると、ヴァンパイアは息絶えた。

遺体は残らず消滅した。


それは平日、真昼に起こった。

再び大地震が発生した。

さらに梅園市全体から六芒星魔法陣が現れた。

地面から魔力が噴出する。

「また来たか!?」

「アニキ、ねえこれ魔法陣じゃない!? 町全体が範囲に入っているわよ!?」

ディックとミリエルは高層ビルの上にいた。

ここからは町全体を高い位置から見わたすことができた。

「それにしても、あのヴァンパイアが仕掛けたのはこれだったのか」

地震と共に下から何かが出ようとしている。

「これ、魔界から何か来るってこと?」

「ああ、そうだ。いったい何が出てくる?」

地震と揺れは収まった。

魔法陣が光り、中心から光が上がった。

「あれは!?」

ディックは魔法陣の中心から立ち昇っている光を見た。

そして上空に今まで見たこともないものが出現した。

それは城だった。

その城は周囲をウロボロスの輪で囲まれていた。

「何だ、あの城は!?」

「周りを取り囲んでいるのはウロボロス――自らのしっぽを自ら加えている、の輪ね」

「まったく友好的には見えないな。あれを出現させることがあのヴァンパイアの目的だったのか」

ディックとミリエルは上空に浮かんだ城を見上げた。

「次はいったい何を仕掛けてくる?」


人々は上空に城が現れて、混乱した。

城は突然現れた。

人々はみな城を見つめた。

あるものは好奇心から。

あるものは不安から。

これは政府の実験だとか、宇宙人の侵略だとかデマが飛び交った。


アシュタルテは上空の城から地上を見おろしていた。

アシュタルテの目の前に梅園市の町並みが広がっている。

「ついに地上にやって来たか。我々の目的、混沌の支配を実現するのに大きな一歩だ。人間どもは混乱して何が起こったか理解できないようだな」

「アシュタルテ様、軍勢の出撃準備が整いました。あとはアシュタルテ様のご命令を待つだけです」

アシュタルテの背後から部下のヴァンパイアがひざまずいて答えた。

「うむ。地上侵攻の開始だ。まずはあらかじめ決めておいた地点を殲滅する。それから町全体を侵略し、日本全土を我がものとするのだ」

アシュタルテは城の高いところから、中庭に集まった魔物や怪物の軍勢の上に立った。

アシュタルテはこれら怪物どもの上に君臨する女主人、女王であった。

アシュタルテは怪物の軍勢に語りかけた。

「我々は地上に降臨した! その時が来たのだ! 我らが地上を我がものとする時がやって来た! みなのものよ、聞くがいい! カオスこそ地上のあるべき姿なのだ! 混沌が地上を支配する! それこそ真理なのだ! 我々は地上に混沌をもたらす! これより、地上侵攻を開始する! 我がしもべどもよ、出撃せよ! 混沌の女王アシュタルテの名において命じる! 地上を制圧せよ!」

怪物たちはテレポートで中庭から姿を消していった。

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