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魔王会議 最終話

「今から緊急幹部会議を始めたいと思います」


 魔王の突然の号令によって集められた幹部連中ではあったのだが、スーパーヒーローが総出で魔王城にやってくるという報せをすでに受けていたので皆神妙な面持ちでこの時を迎えていた。


「魔王様。スーパーヒーローがやってくるという話は伺っておりますが、我々に出来ることは何かあるでしょうか?」

「正直に言えば、スーパーヒーローが一人や二人程度なら何とかなったかもしれないけど、総出となると出来ることなんて何もないと思います。でも、スーパーヒーローの対処は正樹さんと愛華さんにお任せするので安心してください。少なくとも、あなたたち幹部や他の魔物たちに被害が及ばないようにある作戦を立てていますからね」

「スーパーヒーローの相手をお二人がしてくださるというのは安心出来ることではありますが、それ以外のヒーローも割と厄介な連中が多いですし、そのあたりの対処はどうお考えでしょうか?」

「当然そのあたりの対策もしてあるのですが、私が説明するよりも正樹さんと愛華さんに説明していただいた方がわかりやすいと思いますので、お二人からお願いいたします」


 魔王軍の幹部になって日が浅い僕ではあったが、すでに多くの者から信頼を勝ち取って入ると思う。中には僕に敵対心を向けてくるものもいたのだけれど、ちょっと実力をわからせてあげたところとても従順な下僕となってくれたのだ。この世界でも力は正義であるという事が証明されたわけだが、魔族サイドにも魔法を正しく使えている者がいないというのは少し意外な事だった。


「作戦としてはこうです。僕と愛ちゃん先輩がこの魔王城を結界で包みます。正面入り口以外はどうやっても中に入れないようにしておきますので、スーパーヒーロー軍団との戦闘が始まってから中に入ることも外に出ることも出来ないと考えてください。もしも、出入りがしたいという方がいましたら、戦場のど真ん中を突っ切る覚悟でお願いします」

「お二人だけで戦うという事ですか?」

「そう言うことになりますね。ただ、戦場となるのは魔王城の前にある開けたスペースなのでこちらに有利な展開が予想されます」

「そうおっしゃいますが、あの場所ですとスーパーヒーロー達が一斉にお二人に襲い掛かると思うんですが、本当にお二人だけで大丈夫だと思っていますか?」

「そうですね。正直に言ってしまえば僕一人だけでも全滅させることは簡単だと思うのですが、それだと相手のメンツも立ちませんし僕も楽しくないですからね。僕の力だけではなく愛ちゃん先輩の力も思い知ってもらう必要があるんじゃないかと思うんですよ。だからと言って、愛ちゃん先輩一人だとスーパーヒーローも殺してしまうんじゃないかと言う恐れもあるんですよね。皆さんもご存じだとは思いますが、愛ちゃん先輩の毒はどんな風にでも応用が利くのでこの場にいる皆さんを殺すことだって出来ちゃうわけです。もちろん、相手がスーパーヒーローであっても毒に耐性が無い限りは効果があるんですよ。それで、ここからが肝心なんですが、僕らは初戦であるこの戦いでスーパーヒーロー以外のヒーローを全員殺します。全員と言っても、味方を生き返らせることの出来るヒーローは除いて殺しますが、相手に深刻な被害を与えることが出来ると思います」

「スーパーヒーローは殺せないってことですか?」

「いいえ、スーパーヒーローを殺さない事には理由があるのです。一つは、魔王軍に対する認識を改めてもらう事。もう一つは、一人一人ときちんと向き合うことで僕の成長につなげることですね。スーパーヒーローがどんな原理で力を持っているのかわからないけれど、多少はあると思う魔力を僕のモノにしたいってのがありますね。ま、全員纏めて殺してもそれを手に入れることが出来ると思うんですが、どうせ戦うなら相手を苦しめてあげるのも魔王軍っぽくていいんじゃないかなって思うんですよ。あなた方は本来なら人間に負けることなんてないと思いますけれど、一介のヒーローにすら手も足も出ないってのはおかしな話ですからね。もしかしたら、人間に力を与えている何かがいるんじゃないかなと僕は思っているんですが、それについて何か知っている人はいたりしませんかね?」

「正樹さんが強いのは知っているつもりなんですが、本当にスーパーヒーロー達に勝てると思っているんですか?」

「ええ、勝てると思っていますよ。目をつぶってただ立っているだけでも勝てると思いますが、試してみますか?」

「いや、俺はちょっと聞いてみただけなんで怒らないでくれ。ただ、ちょっと嫌な噂を知ってしまったんで気になっただけなんだ。なんでも、スーパーヒーローはとんでもない力を持っている女神を仲間にしたって話なんだが、その話は聞いたことがあるのかい?」

「女神。そんな話は聞いたことが無かったけど、その女神が女だったら僕が負ける理由は何も無いね。どんなに強い女神だとしても、女には絶対に負けない理由があるんですよ」

「その自信は頼もしい限りではあるけれど、自信を持ちすぎるのは良くないと思いますぜ」

「大丈夫大丈夫。僕はとある理由で種族に関係なく女性に惚れられてしまうという力を持っているんです。ここにいる愛ちゃん先輩も僕の事を心の底から憎んでいた時期もあったのですが、今ではこうして僕に惚れているみたいですからね。他の世界でも色々な種族の女性から求愛されていましたからね」

「そうなのか。俺らには性別って概念が無いからよくわからないけど、正樹さんがそれだけ自信満々に言うのなら大丈夫なんだろうね。で、スーパーヒーローだけを残してどうするって言うんですか?」

「彼らの性格上、一対一の戦いを挑むと逃げることが出来ないと思うんですよ。そこで、負けを認めるまで何人でも何回でも戦いを続けることが出来るってルールで一対一の戦いを挑んでみようかと思います。正直に言って、こちら側でスーパーヒーローと戦えるような戦力を持っているのは僕と愛ちゃん先輩だけだと思うのですが、僕が負けたらルールを無視して愛ちゃん先輩にスーパーヒーローと生き残っているヒーロー達を全員殺してもらおうと考えています。その後は皆さんが好きに暴れたらいいと思いますよ」

「正樹さんが負けるところは想像出来ないが、愛華さんが向こうの生き残りを全員始末してくれるって言うのなら大丈夫な気がしてきたな。俺らに出来ることは何もないかもしれないが、もしもの時は任せてくれ」

「そのもしもの時が来ないように祈ってくれるだけでいいですよ。愛ちゃん先輩は何か言うことありますか?」


 会議が始まる前から僕の隣で大人しくしている愛ちゃん先輩も何か言いたいことは無いかと思って聞いてみたのだが、相変わらずもじもじしている。

 そう思ってみていると、僕と目が合った愛ちゃん先輩は嬉しそうな表情を浮かべて抱き着いてきた。


「私の事をもう一度愛華って呼び捨てで呼んでよ!!」


 愛ちゃん先輩の一言で魔王軍会議は終了し、解散となった。

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