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死人使い 第三話

「ヘカテーを倒したのって間違いじゃないですよね?」

「生き返るタイプの悪魔じゃない限り殺したと思うけど、それがどうかしたのかな?」

「どうもこうも無いですよ。あのヘカテーってもともと神の一柱だったらしいんですけど、神の世界でクーデターが起こってほとんどの神がその座を奪われたみたいなんですよ。その時にヘカテーも神の座を失って妖精の森にやってきたみたいでして、もともと住んでいいた妖精を追いやってこの森で暮らすようになったんです。妖精は何体か逃げ延びて自由にしている者もいるみたいなんですが、そのほとんどが妖精王と一緒に封印されているみたいなんですよ。あっちの森は妖精がいなければ維持出来ないような環境なんですけど、それって僕が暮らしている森の影響で木々が死んでしまうからなんです。僕は死人使いであると同時に死を運ぶ配達人みたいなもんでもあるんですよ。そう考えると、死体を通してですけど僕と対等に話をしてくれる正樹さんみたいな人って貴重なんですよ。近くの国の人は僕の姿を見ただけで泣き叫んで逃げ出しちゃいますからね。そもそも、僕と話をして何ともないってのも凄いって思いますよ。何ともない感じなんですか?」

「どうだろうね。最初は体が重く感じていたけれど、それ以外は特に問題ないと思うよ」

「あ、その体が重いってのはヘカテーの力で僕の能力は関係ないと思います。僕の能力は生き物の命を奪って別の生き物に与えるってやつなんですけど、僕が何かの命を奪ったことなんて一度も無いんですよ。僕が自分の力で綺麗に殺せる相手なんていないですからね。どこかに綺麗で新鮮な死体があればいいんですけど、最近見かけませんでした?」

「死体は何度か見ているけれど、エドラが期待しているような死体は見たことが無いかもね。好みとかあれば用意してあげてもいいんだけど、どんな感じなのが良いかな?」

「そうですね。贅沢は言わないんですけど、若い男の子がいいですね。若いと言っても幼すぎるのはダメです。死体になった時点で成長が止まってしまうので大きくなる可能性が無くなってますからね。それに、小さい子供の死体を使うのって人としてどうなんだろうって考えちゃうんですよ。子供じゃなくたって死体を使って行動するのは良くないじゃないかって言われれば反論できないんですけど、僕にはそれしか生きる手段が無いから仕方ないんですよ。中には、自分の息子の体を使ってくれるのはありがたいって喜んでくれる人もいたりしたんですけど、最近では誰とも交流を持つことも無いんでそんな話は一切ないですね。ちなみに、正樹さんが死んだら体を使ってもいいですかね」

「僕が死ぬことは無いんだけど、その時は好きにしてもいいと思うよ」

「約束ですよ。僕は正樹さんの事を尊敬しているけれど、不幸にも死んでしまった後は僕がその体を有効に使わせてもらいますからね。でも、魔法はきっと使えないんで宝の持ち腐れかもしれないですけどね」


 エドラに新鮮な死体を供給するのは簡単だと思う。そこら辺にいる人を適当に殺して与えてあげればいいだけの話なのだから。ただ、ヘカテーと戦ってみて感じた事なのだが、この森に入ってくるような人間はそもそもいないという事だ。

 みさきに似た気配は感じたのだけれど、この死人使いがいる森から出ている禍々しい力のせいでハッキリとどこにいるか見極めることが出来ないのだ。このエドラを無視してみさきを探しに行くことも出来るんだけど、それをあえてやらないでこの近くの勢力分布を変えてみたくなっていたりした。


「ちなみになんだけどさ、死体ってエドラのいる場所までもっていかないといけないのかな?」

「そんなことないですよ。僕の使っている死体が触れれば僕のモノになりますからね。逆を言えば、僕の使っている死体がいなければ僕が直接触りにいかない解けないってことになるんです。でも、僕は出来ることなら人前に出たくないからこれでもいいんじゃないかなって思っているんです。新鮮な死体が手に入ってらすぐに教えてくださいね。どこにいたって世界中探して見付けますからね」



 しかし、新鮮な死体を探すにも苦労はしそうだ。そもそも、この世界は人が死んだあとはどうやって処理しているのだろう。火葬だとしたらこうしてゆっくりしている時間も無いだろうし、土葬だとしてもいちいち掘り起こすのが面倒くさい。


「そう言えばですけど、ヘカテーがいないこの辺りを誰が支配するかでもめそうなんですけど、今はお酒も入って気が大きくなっているかもしれないけれど、何の準備もしないで妖精に会いに行ったら命を取られちゃうかもしれないんですよ」

「妖精って人間の命を取ってどうするつもりなのかな。それに、妖怪って人間の見方なんじゃないのかな?」

「僕は新鮮な死体が手に入ればそれでいいんですけど、この辺の妖精は自分自身が傷付かないように魔法を多用してくるから気を付けないといけないんですよ。ですが、正樹さんには妖精の使う魔法も効果が無いでしょうね。妖精王がいくら強いと言っても、元神様に勝てるはずが無いんですよ」

「じゃあ、僕がサクッと妖精王を殺してその体をエドラにプレゼントしちゃえばいいってことだね」

「正樹さんが妖精王を倒したらその死体をもらってもいいってことですか?」

「そう言う事だよ。でも、人間じゃなくてもいいのかな?」

「全然問題ないです。魔物でも妖怪でも悪魔でも何でもいいんです。人間の姿が多かったのは、単純に人間の死体が手に入りやすかったからだけですし、元が強い魔物とか悪魔だと最高だと思いますよ。そうそう、あんまり関係ないかもしれないけれど、妖精王は子供が大好きだから知り合いに小さな子供がいたらあまり近付けないことをお勧めするよ。それと、妖精王の復活は次の満月の晩だと思うけど、今までとパターンを変えてくる可能性もあるからあんまり考えすぎない方がいいかもね」

「そうだね。僕も綺麗に殺せるように頑張るよ」

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