表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤンデレ彼女×サイコパス彼氏≒異世界最強カップル  作者: 釧路太郎
死刑囚前田正樹編
42/78

死刑囚前田正樹 第五話

 次の日になると、穴は外から板で塞いだだけの簡単な修理がされていた。物音一つしなかったと思うので修理をした人は相当な技術を持っているのだと思う。

 その日は結局誰もここに来なかった。

 その次の日も誰も来なかった。


 僕はずっと横になったままだったのだけれど、この拘束具がちょうどよい塩梅でクッション代わりになっていて、横になっていても体が痛くなることも無く快適と言えば快適に過ごせていた。ただ、誰も来ないのは少し寂しかったのも事実である。

 そんな事を考えながら板で塞がれた穴を見ていると、轟音と共に凄まじい振動が僕の全身を襲ってきた。近距離にミサイルでも落ちてきたのかと思うくらいの衝撃だったのだが、建物自体は平気なようだった。窓ガラス一枚割れていないのは驚いたが、僕の体にはいまだに振動が残っているような気がしてならなかった。

 その揺れもだんだんと大きくなっていき、僕の頭もどんどん揺れが大きくなっていった。視界が揺れてだんだん気持ち悪くなってきたのだけれど、揺れが最高潮に大きくなったと同時に無事だった壁が破壊された。


 そこに立っていたのはみさきだった。


「良かった。まー君が生きてて本当に良かったよ。ずっと探していたんだけどさ、どうしても見つからなくてまー君じゃなくて唯ちゃんを探すことにしたんだよね。でね、唯ちゃんを見つけることが出来たんだけど、この町ってなんかおかしいんだよね。魔導士はこの町で魔法を使っちゃ駄目だって言われてるみたいなんだけど、私は魔法を使えないし別にいいかなって思ってたら、ここの町にいる女の人はみんな魔法を使って攻撃してきたんだよね。私って魔法に耐性を持ってないからマズいなって思ってたんだけど、よくよく考えてみたら、私のブレスレットって魔法を無効化してくれたりするから問題なかったのさ。で、襲ってきた人たちを捕まえて唯ちゃんの居場所を探してみたんだけど、どこにもいなかったんだよね。どうしたらいいのかなって思ってたらまー君がこの町にいるような気がしてさ、ちょっと探してみようかなって思ってたら、私が今いる国とここの国が戦争を始めるみたいだったんだよね。そこで、私がこの町に潜入して魔法を使えるようにするって仕事を任されたんだよ。潜入捜査みたいな感じなのかな、そんな事を一通りやってたら唯ちゃんを見つけたんだよ。どこにいたと思う?」

「唯がいた場所って、この建物のどこかでしょ?」

「違うのよ。この町に大きな塔があるんだけど、その塔の地下三階に監禁されていたのよ。唯ちゃんだって私と同じくらい強いはずなのにおかしいなって思ったらね、唯ちゃんは何か強力な薬物を体内に取り入れちゃったみたいで、それが原因で意識も混濁しているみたいだったんだ。これは私が連れてきたお医者さんに診てもらったから間違いないと思うんだけど、唯ちゃんは意識が無いはずなのにまー君の事を何度も何度も読んでいたんだよ。何があったのかは謎だけど、唯ちゃんの分もまー君の分もこの町にはきっちりと落とし前を付けてもらわないとね。とりあえず、唯ちゃんに薬物を投与した人物を探さないといけないんだけど、まー君は心当たりがあったりするかな?」

「心当たりと言えば、この町の領主の妻のモンテと娘のティアかな。その二人と一緒に唯がここから出て行ったのを見ていたからね」

「そうなんだ。その二人って、金髪の巻き髪で目がオッドアイの親子だったりする?」

「ちゃんと目を見たわけじゃないからわからないけど、金髪の巻き髪だったと思うよ」

「じゃあ、娘の方って自分の事をティアって言って、まー君の事を正樹様って呼んでたりする?」

「うん、そうだと思うよ」

「そっか。じゃあ、この話は無かったことにしましょうね。とりあえず、この町で戦えそうな人はもういないと思うんだけど、一応隠れてたら困るんで殲滅専門の部隊に来てもらう事にするね。でも、この町の領主だけは連れて帰らないといけないんだった。まー君は誰が領主かわかったりするかな?」

「顔を見ればわかるよ。でも、僕は自力で動くことが難しいんだよね。誰か呼んできてもらってもいいかな?」

「そうね。私がまー君を起こすことが出来ればいいんだけど今はまだその時じゃないしね。誰か呼んでくるけど、その変なブロックみたいのは何なの?」

「これはね、魔法を使えなくする拘束具だってさ。これのお陰で僕は何も出来ずにこうして横になってるだけなんだよね。僕の魔法が使えなくなるくらいなんだから、誰もこれに抵抗出来ないんじゃないかな」

「そんなに凄いなら、神とか悪魔もそれで拘束しちゃえばいいんじゃない?」

「それは僕も考えてみたんだけど、僕がそれに触れた時点で僕が拘束されちゃうんだよね。これだって、僕がベッドに横になっただけで拘束されたんだからさ。普通はこんなのありえないって思うけど、とんでもないトラップだと思うよ。一回目は引っかかっても二回目は引っかからないと思うし、神も悪魔もそんなのお見通しじゃないかな。そう思ってたりもするけど、意外と簡単に引っかかるかもしれないね」

「試してみる価値はありそうだけど、何個か持って行ってもいいのかな?」

「大丈夫だと思うけど、どこにあるのかどんな形なのか僕にはわからないんだよね。それを見る前に引っかかっちゃったからさ」

「そう言う事なら、領主を捕まえて聞きだせばいいって事よね。私はあんまり尋問とか得意じゃないからうまく聞きだせるか心配だよ」

「みさきは優しいから性格的に難しいんだね」

「違うの。ちょっとのつもりで脅そうとするんだけど、力加減を間違えて殺しちゃうんだよね。それで何度か失敗しているんだけど、それでも私の事を信じてチャンスをもらってるんだよね」

「チャンスって?」

「今日もね、本当は私一人じゃなくて何人かで潜入するって話だったんだけど、この町の状況を見て私一人に変わったみたいだよ。この町じゃ男が潜入するにはリスクが大きすぎたんだって」

「それってさ、チャンスじゃないんじゃないかな?」

「ええ、私に失敗を挽回するチャンスをくれたんだと思うよ。みんないい人だもん」

「そうか、それならいいんだけどさ」


 僕にはみさきが良いように使われているように思えて仕方が無かった。本当ならもっと楽な仕事をさせてもらえると思うんだけど、魔法の効かないみさきはハッキリ言って誰にも抵抗することは出来ないだろう。唯とならいい勝負をするかもしれないのだが、二人があれからどれくらい成長しているのかもわからないし、もしかしたら圧倒的な差がついているかもしれない。

 だからと言って、みさきがこの町に単独で潜入して無事に済まない可能性だってあったはずだ。僕はそれが許せないのだ。みさきがお世話になっていたのは事実だろう。でも、だからと言って、みさきを丈夫な手駒のように扱う態度が気に入らなかった。

 この事はみさきには黙っておいた方がよさそうだ。


 僕は自分が捕まって何も出来ないことよりも、みさきが良いように扱われていることの方に腹が立って仕方なかった。

 とりあえず、この拘束具をどうにかできたらみさきのために何かしてあげることに背負うと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ