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ヤンデレ彼女×サイコパス彼氏≒異世界最強カップル  作者: 釧路太郎
最強になりたい魔導士編
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最強になりたい魔導士 第五話

 採ってきてもらったキノコは大きくてそれなりに弾力があったのだけれど、これが本当に魔法のキノコなのかは判断が出来なかった。ここには魔法を使える人がいないのだから、仕方ない事なのだけれど、このキノコが本物かどうか確かめるためにも一度テンスのいる場所に戻る必要があった。

 簡単に戻れると思っていたのだけれど、私が受け取ったはずの棒きれが無くなっていたのでどっちが正しい道なのかわからない。キノコを採ってきてくれた魔物はそのまま帰ろうとしていたので、私がここにはいてきた場所がどこか教えてもらおうとしたのだけれど、目の前にキノコを巨大化させて擬人化したとしか思えないような魔物が現れて、私にキノコをくれた魔物を食べてしまったのだった。

 キノコの化け物は私の事も食べようとしてたようなのだけれど、私はもちろん抵抗してしまうのだ。当然、私はこんな化け物にやられるはずはないのだけれど、少しだけ体がピリピリと痺れているような気がしてきた。また毒を使うやつが出てきたのかと思ってたんだけど、今回は体が痺れているだけでまだ普通に動くことが出来ている。体が普通に動くなら問題ないかなと思って、キノコの化け物を細かく裂いてあげた。

 大きくなっているとはいえ、キノコはキノコでしかないので頭を叩き割ると体自体は簡単に裂くことが出来た。その時には無駄に胞子をばらまかれないように注意していたのだけれど、少しはもらしてしまったかもしれない。それでもこの森で育つ分には影響ないだろう。

 私は少しだけお腹が空いていたのだけれど、この大きな毒キノコを食べる気にはなれなかったし、この森にある植物はどれも食べては良くないような気がしていた。食べても影響はないとは思うのだけれど、なんとなく体には悪影響がありそうな感じがしているのだ。


 道がわからないし、どっちに行っても変わらない景色が広がっていたので、私は仕方なくそのままどこまでも直進することにした。とりあえず、まっすぐ歩いていればどこかで森の外に出るだろうと思っていたので、この行動は正しかったんじゃないかと思うのだけれど、森の切れ目が見えてきたころには何者かが争っているような声と不規則な爆発音が響いていた。

 何をやっているのだろうと思って見てみると、どうやらフェリスさんの軍隊が魔物と戦っているみたいだった。

 フェリスさんたちは目の前にある城を攻める手段が限られているのか、遠くから魔法を使っては反撃を受け、投擲武器を使ってみてもバリアに阻まれるという悲しい結末を迎えていた。私は計画を立てていたわけでもないし、フェリスさんがここを襲っているというのも知らなかったので、結果的に挟み撃ちのような形になったのは、フェリスさん達から受けた恩を返す絶好のチャンスなのではないかと思って見た。

 城を覆っているバリアをどうにかしないと中に入ることは出来なそうなのだが、バリアを発生させていそうな装置は城の最上階にありそうだし、他にも各フロアにいくつか設置されているように見えた。見えているのがバリアを発生させている装置なのかはわからないけれど、直接乗り込んで全員殺してしまえば関係無いのではないだろうか?


 そう思って見たけれど、私がバリアを発生させている装置を壊しに行くにはバリア自体が邪魔になっているのだ。バリアをどうにかして通り抜けてしまえば何とでもなりそうなのだけれど、その通り抜ける方法が一向に思いつかなかった。

 しかし、私がやけになってバリアを攻撃してみると、そこには何もなかったかのように体はバリアの中へと入っていってしまった。フェリスさんたちの様子を見る限り武器を使った肉弾戦でも通用しなかった攻撃が、私が少し力を入れようとしただけで壊れてしまうなんてバランスがおかしいんじゃないかな。なんて思っていたけれど、私のしているブレスレットがバリアを無効化していることに気付いちゃったんだよね。右手がバリアに触れるとそこから消えていたし、左手から触れると弾かれてしまう。そんな事を繰り返していたら、異常を察したのか何体かの魔物がこっちに向かってきた。


 面倒だけど相手をしてあげないといけないよね。そう思っていたんだけど、魔物たちは私に近付くことも無く消えてしまった。魔物たちがいた場所には血だまりが出来ているのだけど、そのすぐ後ろに全身を銀色の鎧で覆った魔物が立っていた。両手から伸びている鋭い五本の爪の先からわずかに滴っている血を見ていると、私に向かってニヤニヤしながら近付いてきた。

 人を見下したその表情はとても不愉快だったのだけれど、全くそれには気付いていないようで馴れ馴れしく私に話しかけてきた。


「あんたも相当強そうだけど、あっちにいる魔導士の仲間なのか?」

「仲間かどうか聞かれたら仲間だって答えるけど、あんたはいったい何なのよ」

「俺かい。俺は魔王軍が誇る殺戮者の一人、銀爪のジェイク様だ。この鎧は全て爪になるから近付かない方が身の為だぜ。お前が俺と戦いたいって言うんなら話は別だけどよ。どうする?」

「私があんたと戦っても何の得もないと思うんだけど、あんたを倒さないとフェリスさんたちが苦労しそうなのよね。フェリスさん達にはお世話になっているから恩返ししたんだけど、このバリアを発生させてる装置を壊すまで待ってもらえるかな?」

「ああいいぜ。って言いたいところだけどよ、この城のバリアは解くことが出来ないんだ。俺はお前らがいくら襲ってきても平気なんだが、バリアが無いと他の魔物が困っちまうんだ。俺みたいに強いやつだけじゃなく弱いやつもいるからな。弱いと言っても、人間なんかには負けないんだけどな。でもよ、魔物が人間相手にビビっちゃいけないと思うんだよ。大人数でかかってこられたら面倒だとは思うこともあるかもしれないが、相手の人数の方が少ないのにビビるのは良くないな。さっきの奴らは恥ずかしいことに、たった一人しかいないお前にビビっちまったんだぜ。そんな事は許されちゃいけないよな。でもよ、こいつらがビビるほど強そうには見えないんだが、お前は強いのか?」

「相手の強さがわからないってことは、そんなに強くないのかもしれないよ。見逃してもらえないかな?」

「なんだよ。戦う意思もないのかよ。つまんないやつだな。それならさっさと行けよ。俺と戦うつもりになったらいつでもここにこいよ」


 この魔物は見た目は強そうなのだけれど、意外とそこまで強くないのかもしれないな。それにしても、あの爪ってどうやって収納しているんだろう?

 私に戦う意思が無いと感じると、伸びていた爪が体の中に収納されていくのが見えた。あの長さと大きさからみて体内に収納しているわけではないみたいなのだけど、少しだけ腕が太くなっているように見えるし、あの鎧に収納されているのかな?

 私は魔物の横を通って奥に行こうとしたのだけれど、私が魔物の真横を通り過ぎた時に後ろから割と強い衝撃を受けた。


「おいおい、そんな無警戒で俺の横を通ろうとするなよ。つまんないやつだな。久々に強そうな奴がやってきたと思って楽しみにしてたのによ。戦うつもりが無いならここにきてんじゃねえよ。って言っても聞こえるわけねえか。俺の爪が心臓を貫いているんだもんな」


 後ろから思いっきり押し飛ばされたと思ったんだけど、私は爪で心臓を貫かれたらしい。その割には痛みも無いんだけど、案外刺されてしまった時はそんなもんなのかもしれない。体に刺さった棘は抜いた後の方が痛かったりするし、体に刺さった爪も抜いた後の方が痛いのかな。

 でも、体に刺さっている感覚は本当にないし、胸を見ても爪なんて出てないんだよね。背中を触っても刺さっている感じはないし、この魔物は本当に私に爪を突き刺したのかな?


 ゆっくり振り返ると、私と目が合った魔物は目の前の出来事が信じられないといったように私の目を見ていた。何故か目を逸らさない魔物の目を見ながら微笑んでみると、魔物はその場にへたり込んでいた。私は何もしないんだけど、この魔物は私に向かって命乞いをしていた。


「なんで、俺の爪が折れるんだよ。俺の爪よりも頑丈な鎧なんて聞いた事ないぞ」

「鎧なんて来てないけど。見てわかんないの?」

「本当か?」

「見てわかんないの?」

「鎧なんて着ているように見えないんだけど、もしかしたら見えない鎧とか?」

「しつこいな。そんな事より、その爪ってどういう仕組みなの?」

「仕組みも何もこの鎧が爪になっているだけだけど」

「そうなんだ、ちょっと見たいから鎧を脱いでもらってもいいかな?」

「それは出来ないんだ。この鎧は俺と一体化しているからこそできることなんで、鎧を脱ぐと俺の体も一緒に剥がれてしまうと思うんだ」

「大変なんだね。じゃあ、つなぎ目がどうなっているのか見せてね」


 私は鎧と鎧のつなぎ目がどうなっているのか気になって気になって仕方なかったのだけれど、いくら触ってみてもどうなっているのかわからなかった。もっと近くで見たいなと思って鎧を無理やり剥いでじっくり見てみることにしよう。私が鎧を無理やりはがすと、魔物は絶叫しながら痛がっているように見えた。だらしないな。

 剥がした鎧を近くで見てもどういう仕組みでそうなっているのかがわからない。どこにも爪をしまっているようには見えないし、近くで見ても普通の鎧にしか見えなかったのだ。何度か叩いたりして見たのだけれど反応が何もなかったので、もっと近くで見てみようかなと顔の前に持ってきたら無数の針が私の顔に向かって伸びてきていた。いきなり出てきてびっくりしたのだけれど、顔に針が当たるとさすがにチクチクして多少の痛みは感じた、痛みだけならそこまで気にするほどのモノでもないかな。でも、痕が残ったらいやだな。


「あの、わざとじゃないんです。自動で反撃するように出来ているだけでして、あなたを殺そうとか本当に思っていないんですよ。だから、気にしないでください」

「うーん、ちょっと痛かったけど、傷にはならなくても痕が残ったらどうしてくれるのかな。私も女の子だから顔に傷とか嫌なんだけどね。でも、わざとじゃないなら怒ることも出来ないじゃない。怒ってないよ。でもさ、怒ってないんだけど、わかるよね?」

「え、何をですか?」


 私は無言で魔物から鎧を剥いでいった。鎧を剥いで分かったことなのだが、この魔物は本当に鎧と一体化しているみたいでさっきの魔物が殺された時みたいに血だまりが出来ていた。

 鎧の胸の部分を剥がした時には魔物から反応が消えていたんだけど、剥がした鎧からは針だのナイフだの槍だのが飛び出てきていた。剥がす部分で違うものが出てくるのが面白くて、私はその後も一通り剥がしてみた。

 最後に頭の部分を外してみたのだけれど、兜を取ったと同時に頭が爆発したのは驚きすぎて思わず笑ってしまった。面白くて笑ったんじゃないんだけど、驚いた時も笑いが出るってのはちょっと意外な発見だった。


 帰り血で汚れちゃったから体を洗いたいなって思ったんだけど、ここってお風呂とかなさそうだし、少しだけ我慢していなきゃね。

 あれ、ここに来た目的は何だったっけな?

 そうだ、バリアが邪魔だから何とか出来ないかなって思ったんだった。でもね、バリアをどうやったら解除できるか知らないし、教えてくれる人もいないんだよね。


 うーん、とりあえず正面に回ってバリアを無理やり突破してフェリスさんに相談してみようかな。


 その前に、この中にいる魔物を駆除しておく方がいいかもしれないよね。

 ついでにお風呂かシャワーが見つかるといいな。

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