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ヤンデレ彼女×サイコパス彼氏≒異世界最強カップル  作者: 釧路太郎
聖騎士の息子編
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聖騎士の息子 第三話

 聖騎士団と並んでこの国の戦力として存在している組織に、魔導旅団が存在している。魔導旅団はいくつかのグループに分かれて行動しているようなのだが、それぞれが独立した部隊として認められているのだそうだ。魔導旅団はそれぞれが聖騎士団と並ぶほどの戦闘能力を有しているのだが、今まで一度も共闘したことが無く独自に行動しているそうだ。

 ノエラの娘のシギも魔法が使えるので魔導旅団に入る可能性はあるそうなのだが、聖騎士団団長の娘が入隊することになると他の魔導旅団にとって大きなアドバンテージになるため、本人の意思とは別のところでスカウト活動が行われているそうだ。

 そんなシギは魔導旅団に入るつもりはなく、魔法使いのほとんどいない聖騎士団に入るのが夢なのだそうだが、騎士と魔法使いが完全に住み分けられている現状では難しいと教えてくれた。何故か、シギは僕と会話をするときはずっと手を握ってくるのだけれど、ここでも僕の能力が発揮してしまっているという事なのだろうか。


 聖騎士団の仕事について回っていると魔導旅団の人にあることもあるのだけれど、基本的に彼女たちは聖騎士団を下に見ているような態度が見受けられた。魔法を使える者は多くいるらしいのだが、戦闘で実際に魔法を使用できるものは限られた極一部のエリートだけなのだそうだ。魔法使い一人の命は聖騎士団一個中隊の命と同等に扱われているというのもエリート意識を増長させる要因だとは思ったのだが、訓練を見ているとその意味も納得させられるものだった。


「あの人たちって普段からあんなに本気で魔法を打ち合っているの?」

「いや、普段はもっとダラダラとした感じでやっているよ。彼女たちは自分の魔法にプライドを持っているし、自分の魔法を多くの人に見せるってことは欠点を見付けられる心配もあることだから普段はあんなに魔法を使ったりしてないね。もしかしたら、正樹殿が見てるから本気でやっているのかもしれないよ」

「僕の前で本気を出したってしょうがないのにね」

「ま、そんな事を言わずに見学しておくといいよ。もしかしたら、正樹殿が今よりももっと楽に魔法を使えるようになるかもしれないからね」


 そうなのだ。僕は相手を殺そうと思った時は簡単に魔法が使えるのだけれど、なんでもない訓練の時は一切魔法が発動しなかったのだ。魔力が底をついたわけでもなく、魔法が使えなくなったわけでもない。訓練に付き合っても魔法が使えなかった半日後の見回りで魔獣と遭遇した時には地形が変化してしまうほどの魔法を使うことが出来たのだ。その後は魔法で何とか地形を戻すことが出来たのだが、人に向かって魔法を使うことが出来なかったのだった。

 僕の敵は誰なのかはっきりさせることが出来ればいいのだろうけれど、お世話になっているノエラの仲間を傷つけたくないのではないかと無意識に抑えているのではないかと言われたりもしていた。


「それにしてもだ、正樹殿は敵には一切情けをかけないというところが徹底していて素晴らしいな。私達も魔獣と戦うときは手を抜いたりはしていないのだが、正樹殿のそれとは根本的に違うような気がしているのだ。何となくだが、味方でなくなった瞬間が恐ろしく感じてしまうよ」

「ノエラさんにはお世話になってますからね。この国の人たちも僕たち日本人に良くしてくれていたみたいですし、その分のお礼はきっちり返しますからね」

「日本人というのは我々と同じで受けた恩は忘れないと国王陛下も仰っていたのだが、正樹殿はまさにその通りの人物なのだな。君の彼女が一刻も早く見つかることを我々も願っているし、見回りの時にも目を配っているからね」

「たぶんなんですけど、僕が本気で探せばすぐに会えると思うんですけど、僕と彼女が再び出会ってしまうと世界が終わるって言われているんですよ」

「世界が終わるって?」

「はい、そう言われたんです」

「そんな事を言われて信じているのかい?」

「信じているかどうかって言われたら、胸を張って信じているとは言えないんですけど、前にいた世界が実際に壊れて無くなったんですよ。神が僕たち二人の仲を裂くためにそうやったんだと思いますね」

「神がやったと言っているが、ずいぶんと度量の小さい神だな。人の恋路を邪魔するなんて器の小さい神だよ。我々の信じている神ならそんな事は言わないと思うのだが、どうだね、正樹殿も我々の神を信じてみてはいかがかな?」

「あんまり神とかは関わりたくないかもです」

「そうか。それは仕方ない事だな。正樹殿にそんな事をした神だけが全てではないのだし、我々の信じている神ならきっとその呪縛を解いてくれると思うのだがな。無理強いはよくない事だし、この話はここでやめにしよう」


 僕はそのままノエラと昼食をとろうと食堂に向かっていたのだが、その行く手を遮るように僕たちを囲む集団が現れた。

 直接話をしたことは無いけれど、魔法を使って訓練をしているところは何度か見たことがある人たちだ。確か、団長と呼ばれている人達だったと思う。


「これはこれは各旅団の団長殿がそろってどうなされましたか。それにしても、皆さんが一堂に会しているところは式典でも見たことが無かったのですが、どうかなされましたか?」

「ノエラ団長は黙っていていただけますか。私達は正樹様に用事があってここに参りましたので。これからお食事をとられるのでしょうが、よろしければ我々と一緒に食事などいかがでしょうか?」

「一緒にって、僕はノエラ団長と一緒に食べるから断るよ」

「やはり、正樹様はそうおっしゃると思っていました。ですが、それも想定内の事ですので驚きはいたしません。そんな正樹様にお願いがあるのですが、どうか聞いていただけませんでしょうか?」

「あんまり長くないんだったら話くらいなら聞くけど、僕もノエラ団長も空腹なんで早めにお願いします」

「では、単刀直入に申し上げます。三日後に魔導修練場にて我々がマサキ様にかけられている魔法を解くお手伝いをさせていただけないでしょうか?」

「僕にかけられている魔法って?」

「忌まわしき呪いでございます。我々の中には相手の事を調べられるものもおりまして、その者曰く、正樹様には恐ろしき呪いがかけられているとのことでございます。我々の力が及ぶかわかりませんが、せめてもの手助けをさせてくださいませ」

「僕は別に構わないけど。呪いってそんな簡単に解けるものなのかな?」

「我々の力を全て使ってでも解いて見せます。例え、これから一生魔法が使えなくなったとしても、我々に悔いなどあろうはずがありません」

「そこまで思われるとちょっと怖いかも」

「大丈夫です。その感情も三日後にはなくなっていますから。それまでお会いすることは出来ませんが、三日後を楽しみに待っていてくださいね」


「やっといなくなりましたね。どうも私は魔法使いというものが苦手でして、潜在的に恐怖を覚えてしまうのですよ。それにしても、世界が壊れる呪いが解けるとしたら、正樹殿にとっては願ってもない事ではないでしょうか」

「それはそうなんですけど、そんな簡単に呪いって解けるもんなんですかね?」

「魔法の事はさっぱりですが、家に帰ったら妻に聞いてみましょうか」

「そう言えば、ノエラさんの奥さんは魔法使いだったんですよね」

「ええ、妻は今でも時々訓練に参加していたりはしていますが、そこそこ強い魔法使いなんですよ」

「へえ、まだ挨拶出来てないんでちゃんとお話聞けるといいな」


 僕のそんな願いもむなしく、ノエラの奥さんと初めて会うのは三日後になるのだった。


「お母さんなら、正樹君の呪いを解くために精神を集中させるから修行してくるって言ってたよ。なんか、三日後に全部解決させるって息巻いていたけど、正樹君って呪われているの?」

「実はな……。」


 僕の代わりにノエラが二人の子供に説明していたのだけれど、二人ともそれを信じていないようだった。僕も二人の立場だったら信じていいないだろうし、その気持ちは理解できるのだけれど、一度も会ったことのない奥さんがそこまで思ってくれているというのは、それぞれ思うところがあったようだ。

 僕たちは無言で夕食をとり終えると各自が自分の時間を過ごした。僕は特にやることが無かったので外の景色を見ていたのだけれど、今日もシギが僕に寄りかかって寝ていたのだった。この子は僕とみさきと同学年だと思うと、この状況は不思議な感じがしていた。


 そして、三日後の昼に魔導旅団の使いの人がノエラ宅を訪ねてきたのだった。

 訪ねてきたのは男性だったのが意外だったけれど、魔導旅団の雑務をこなすのは男性が多いという事を聞いて少し納得できたのだった。

 修練場には多くの者が見学に来ており、その中には国王のルドラ六世陛下もいらっしゃっていた。

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