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勇者サマ復活!冒険、始めますかね、な話


例の王国へ行って帰ってきたけど思いのほか時間がかかった。すっかり日が暮れてしまった。

小遣い稼ぎもそれなりにできてそれなりに有意義な一日になったんじゃないかと思う。

宿屋に戻り店番をしていた女将に軽く挨拶して世間話をしつつ王国で手に入れた焼き菓子を手土産として女将に渡す。女将には勇者のメシの都合とか頼んでたしな。こういうちょっとしたことが効くんだなコレが。オレの処世術。

女将からの話だと晩飯運んだときには大分顔色はよくなっていたとか。よしよし、それなら明日には出られそうだな。


「ありがとな。そういや、晩飯って残ってる?」

「そう言うと思って一人前残してあるさね。部屋で食べな」


ちょっと待ってな、と言われて大人しくその場で待っていると台所からいい匂いがしてきた。これは……シチューだな。

ほどなくして、大きめの器に入ったシチューを持った女将が台所から戻ってきた。


「助かる。ここのシチューは絶品だからさ」


女将に礼を言って部屋に戻る。歩きながら一口頬張る。腹が減ってたこともあり胃に染みる。やっぱりうまいわ、ここのシチュー。

無遠慮に部屋の扉を開けそうになって、一瞬思いとどまる。そういや一応病人だったっけな、って。

オレにしては慎重に部屋の扉を開けた。


ゆっくり開けて部屋に入ると勇者は寝ているようだ、すやすやと小さい寝息を立てている。

顔半分までかぶっている毛布を少しめくり顔色を見てみると朝の時分より大分マシな色になっている。

この調子なら予定通り明日にはこの村を出られそうだ。

安心して隣の自分のベッドに腰掛け、残りのシチューを胃に流し込んだ。

台所はどうやら閉めてたようだったし食器を持って行くのも明日でいいだろ。

サイドテーブルに器を置いて、今日調達してきた道具やら装備やらを追加で準備しておく。

昨日の時点で持っているものの整理はしておいたが今日は今日で王国に行ってきて追加で調達をしてきたもんでね。

オレ一人ならまぁテキトーにどうとでもなるがシロウトが一緒だとどうなるか分からんからな。

オレ基準であれこれ準備してまぁこんなもんかと一段落つける。もうやることはやったし後は湯浴みして寝るとしようか。

これで次はオレが体調崩したなんてあったら目も当てられないからな。



***************



翌朝。窓から差し込む光が伝えてくるのは相変わらず爽やか空気だ。

オレは勢いをつけてベッドから起き上がり全身で伸びをする。

隣にはぐーすか気持ちよさそうに寝ている勇者。顔色もやっぱり良さそう。よし、しっかり回復したな。


「起きろよ勇者サマ。爽やかな朝だぜ」


頭まですっぽりかぶっている毛布を腰あたりまで引っ剥がす。

なんかむにゃむにゃ言ってる。イヤー元気そうで何よりデスナー。


「起きろっつってんだよ雇い主。置いてくぞ」


ガン、とベッドを軽く蹴り飛ばして洗面台へ向かう。

昨日汲んで置いた瓶から水を桶に流し入れ顔をゆすいだ。あーすっきり。

ベッドの揺れか、オレの言葉かは分からないが起きたようだ。視界の端にベッドから勢いよく出てきたのが見えた。

ドタドタと騒々しくオレの後を追ってきた。


「あっ、あのっ、その……」

「ああ?」

「色々ありがとうっ、あの、俺……がんばるから!」

「そーかよ。ま、がんばんな」

「ああ!」

「とりあえずお前も顔洗ってこいよ」

「そうする!」


狭い洗面台だから入れ違いで場所を譲った。

あとは着替えて朝飯食いに……ああ、そうだ、昨日のシチューの器返しに行かないとな。


「なぁなぁ」

「あー?なんだ?」


寝間着をがさっと脱いで着替えてるとまたこっちに戻ってきた。

何してんだ。さっさと顔洗えよ。


「……これ、どうやって使うんですか」


水瓶を手にオレのところまでやってきた。

まったく、世話のやける勇者サマだこと。


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