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伝説の勇者サマがやってきた話




どうやら異世界の勇者の召喚に成功したらしい。


嘘か真か、そんな噂が飛び交った。

世界を救うだなんだと言われてるらしいが、それを耳にしたオレは身近に感じる話でもなかったそれをフーンなんて聞き流していた。

まさか今後のオレに多大な影響を及ぼすなんて思っていなかったから。

人生なにが起こるか分からないって本当なんだなっていつ振り返ったってこの時のことを思う。



***************



オレは流れの剣士だった。

剣士といっても強いこだわりを持って剣を振るってるわけではなく、町から町への荷物の運搬のような小遣い稼ぎもやるし、商人や旅人の護衛をしたり、魔獣を討伐する仕事も請け負ったりしていた。

食えれば何でも良かったけど、腕っ節が発揮できるようなものが性に合ったし、単純に稼ぎがよかった。

どこかに群れて上に従うのも癪だし、かといって自分が誰かを率いるなんて想像がつかなかったから必然的にこのスタイルが確立された。

流れ、なんて格好良く言ったところで所詮その日暮らしだ。日々に余裕があるわけじゃないがそれなりに腕は立つほうだし自分の好きなように生きていけるのはラクだった。


その伝説の噂を聞いたのも、護衛の仕事での雑談のときだった。

どうやら異世界の勇者の召喚に成功したらしいと。

例えばどこぞの大臣サマが不正で失脚したとか、有名な芝居小屋にスターが誕生したとか、そんな風に自分とは関わりのない遠い世界の話だった。

魔王だとか世界の危機だなんだと騒がれているがオレにとっては目の前のオマンマのほうが大事だった。

身近で目立った変化も感じられなけりゃ、一般人にとってはそんなもんじゃないかって思う。

強いていえば護衛や討伐の仕事が増えたから、魔獣や魔物が増えたり活発化しているのはその影響かもしれない。


オレはひとりモンだ。両親の顔も知らないし兄弟だっていない。多分。

大事なものはこの身とこの剣くらいだ。まぁその次くらいに師匠を入れてやってもいい。そもそもオレが大事にしなくてもあのジジイは勝手にピンピンしてるだろうし、慕う輩はたくさんいるだろう。


そんなオレだったけどうっかり野次馬根性が働いた。

ちょうどその噂を聞いたのが、その勇者を召喚したっていう王国まで雇い主を護衛するもんだったから。

まだ近くにいそうならついでに時の人でも拝んでおくかって軽い気持ちで、居場所とか聞けりゃいいかなと周囲に聞き込みした。


それは若干の刃こぼれが気になっていたから鍛冶屋に武器を託したときに店主のオヤジから。

食材調達で立ち寄った八百屋のオバサ……オネーサマから。

宿屋に宿泊手続きがてらに雑談した女将から。

仕事斡旋兼酒場のマスターから。


どうにも明るい話が聞こえなかった。

見事に異世界から勇者を召喚できて、王様は頼れる仲間を共として勇者につけたそうな。そして意気揚々に、晴れやかに送り出したという。

だが運悪く、近くで魔物を率いる幹部(そんなんいるの?ってオレは思うけど)に目をつけられ、せっかくの仲間は全滅。勇者のみが生存を果たし、這々の体でここに戻ってきたそうだ。

それのせいですっかり意気消沈した勇者だったが、宥め賺され再び旅立ったため、今はこの国にはいない。


ふーん。大変なこって。

その召喚された勇者ってのもとんだ災難だな。異世界ってのがどんなものか想像つかないが、ここではないどこかからやってきたってことだろう。まったく関係のないだろうこんなとこに呼ばれてさ。

こっちの事情に巻き込まれたあげく、仲間が目の前で殺されてしまうっていう光景はなかなかに悲惨だと思う。

まぁその勇者がもともと戦闘民族で慣れてるかどうかは知らねぇけど。

縁もゆかりもないってのに戦いに出されるだなんてよ。災難以外のなにものでもないだろ。


見たこともない勇者だが多少の同情を覚えた。

改めて、我が身を振り返る。今日で護衛の任務も終わって報酬も受け取ったから今はフリーだ。なかなかの懐の潤い具合なので気持ち的にも余裕はある。

聞けば勇者の出発もほんの最近の話のようだし近くにはいそうだなとも考えた。

勇者はこの国にはいないらしいが、地理的には次に向かうであろう村は検討がつく。だってこの国は海に面してるからな。

ここから陸路で旅立ったなら、どこへ向かうにしろ寄るであろう村は1つか2つだ。

どちらもここからそう遠くはないからオレならまぁまぁすぐに着くだろうけど知らない土地を旅するのに迷いなく行けるとも思えない。

夜を過ごすのにどちらかの村には立ち寄るだろうと踏んだ。


会いに行ってみるかね、噂の勇者サマってのに。


酒場のマスターからさほど実入りはよくないが最寄りの村宛ての荷物の依頼を受けることにして、早々に宿へ向かう。

さっさと食って寝て、翌朝日が昇って出発した。



名前付けが苦手なまま長編にレッツトライしてみました。

タイトルからもお察し案件。ネーミングセンスゥ……

見切り発車ですがどこかうまいとこ落下地点を見つけつつ頑張りたいと思います。

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