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悪役令嬢になるのも面倒なので冒険に出かけます(仮)  作者: 綾月百花
10   結婚について
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11   婚約の申し込み(3)


 ハスタは扉をノックして、扉を開いた。

 ビエントはソファーから立ち上がった。

 ハスタの後から、リリーの両親が入ってきた。


「お待たせしたようで」


 ハスタはそう言うと、「どうぞおかけください」と椅子を勧めた。

 ハスタと両親が目の前に座った。


「リリーは会いたくないとおっしゃったのですか?」


 ビエントはそこにリリーの姿がないことに、ショックを受けた。


「リリーは買い物の途中で熱を出して倒れた。今は眠っています」

「・・・・・・熱を?」

「真冬に春の装いだったと侍女から聞いています」

「すみませんでした。一番にリリーの事を考えなければいけなかったのに、母の策略でリリーから遠ざけられ、洋服すら買いに行かせてもらえず、国のために騎士団で戦って来たリリーに対しても、国王も王妃も労いもせず。とても恥ずかしい両親です。私は国を捨てるつもりで、リリーの元に来ました」

「皇太子なのに、国を捨てられるのですか?」


 ハスタはビエントの顔をじっと見た。


「我が国のために、忠誠を誓い働いてきましたが、好きな女性すら守れず、母の嫌がらせと子供っぽい虐めで、リリーを悲しめ、孤独に追いやった。両親には嫌気が差しております。リリーとこのまま婚約を継続させていただきたく、国を出てきました」

「リリーはなんと言うだろうか?」


 父は一言告げた。


「リリーに会わせていただけませんか?」

「病床で伏せておる」

「近くにいられるだけでいいのです」

「あなた、会わせてあげましょう。リリーはあの晩、冷たい体で、泣いて帰って来ました。本当は婚約破棄をしたくはなかったのでしょう」

「よかろう。部屋は客間を使うといい。使用人に案内させよう」

「ありがとうございます」


 ビエントは深く頭を下げた。






 客間に案内されたビエントは荷物を置き、コートを脱ぐと、リリーの部屋に案内された。


「ビエント様」


 モリーとメリーが驚いた顔をしてビエントを出迎えた。

 椅子をベッドの近くに置くと、「どうぞ」とビエントに勧める。


「ありがとう」


 ビエントは婚約のネックレスをリリーにはめた。

 リリーの手を握り、苦しそうなリリーを見つめる。蒼白な顔をして頬だけがピンク色に染まっている。手を握っただけで、高熱だと分かる。


「疲れが出たんだね。労ってあげられなくてごめんね」


 騎士団から帰った日、お店が閉まる時間でも、ビエントなら店を開けてもらうことはできた。暖かい洋服をその日のうちに着せてあげれば良かった。寒い姿で何日も放っておかれたら、実家に帰りたくなっても仕方がない。アストラべー王国で、既に体調を崩していたのかもしれない。


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