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悪役令嬢になるのも面倒なので冒険に出かけます(仮)  作者: 綾月百花
10   結婚について
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1   忘れられた誕生日


 ビエントが忙しくて、洋服を買いにつれて行ってもらえない。リリーの洋服はずっと春物で寒い。リリーはアトミスにお店に連れて行ってと頼んだ。

 リリーはまだこの街に慣れていない。どこにどんなお店があるのか知らない。


「普段着よね?」

「そう。今着る物が欲しいの」

「リリー、身長が伸びて、もう私と変わらないから、私のお古は着られないわよね」


 リリーとアトミスは年齢が違っても、背丈は同じくらいになった。


「靴も窮屈になったの」


 アトミスに連れて行かれたお店も専門店のようでオーダーメイドも扱っているらしい。


「私は、この店が好きで、ここでよく買うわ」


 お店を見て回ると、確かにアトミスの好きそうな服が並んでいる。

 清楚で品がいい。

 体のサイズを測ってもらって、リリーのサイズを出してもらう。


「できたらワンサイズ上げてもらいますか?成長期なので」


 店員が微笑んだ。

 サイズの物を並べてもらい、そこから選ぶことにした。

 色はアトミスの好きな空色が多い。今日のアトミスは、このお店の空色のワンピースにカーディガンを着ている。リリーはもう少し深い青にした。ミッドナイトブルーだ。汚れが目立たず、空を飛んでも気にならない。


「リリー地味よ」

「空用かしら、飛ぶと汚れてしまうの」

「そうなのね」


 次はピンクと白を選んだ。レースの飾りがどちらも美しい。


「靴はありますか?」

「こちらです」


 靴はシンプルだ。白い靴を一足選んだ。

 アトミスのようなカーディガンが欲しい。


「カーディガンあるかしら?」

「こちらよ」

「白い物が欲しいわ」


 店員が色々出してきて、選んだワンピースに着せていく。暖かそうなボレロとアトミスとお揃いのカーディガンを選んだ。


「これ、軽くて暖かいのよ」

「とても可愛いもの。私はどこかにブローチを付けるわ。そうしたら間違わないわよね」


 包んでもらって、リリーは最初に換金したお金で買い物をする。


「殿下が買ってくれるんじゃないの?」

「なかなか時間が合わないの。私の両親は異国にいるし。自分の事は自分でしなくては」

「リリー、偉いわね」

「家出した自分の行いが招いた結果よ」


 リリーは小さくため息をつく。


「アトミスのことも解決したし、一度実家に帰ろうと思うの」


 リリーはふらりと目眩をおこし、指先で額に触れる。


「王宮には私を想ってくれる人が少なくて、寂しくなるの。洋服も買えたから、しばらく実家に戻るわね。この国に戻ったら、顔を出すわ」

「ねえ、リリー、お誕生日祝いしてもらってないんじゃなくって?」

「そうよ。寄宿舎でケーキを食べさせてもらえてよかったわ」


 アトミスは「少し待ってくださる?」と言って、お店をくるりと回って、薄い黄色いワンピースを持ってきた。

 リリーにあてがい、お店の奥へと入っていった。

 綺麗に包まれた物を袋に入れてもらっている。


「リリーお待たせ。行きましょうか」

「あとチョコレートを買っていくわ」

「いいわよ」


 チョコレートを3箱購入して、アトミスの家に送って行くと、アトミスは洋服店で買った袋をくれた。


「お誕生日祝いよ」

「アトミスいいのに」

「リリーにはお世話になりっぱなしだもの」

「ありがとう」

「気をつけて実家に戻ってね。なんだか顔色があまり良くないわ。さっきも目眩を起こしていたし、暖かくしてゆっくり休んで」

「ええ、ゆっくり休みます」


 アトミスがリリーを抱きしめて、そっと離される。


「行ってらっしゃい」

「行ってきます」


 リリーは浮かぶと、そのまま王宮へと飛んだ。


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