表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢になるのも面倒なので冒険に出かけます(仮)  作者: 綾月百花
9   婚約について
88/121

4   リリーとアトミス(2)


 王宮の階段を二人で歩いて行く。ビエントが「ようこそ」とアトミスを招いてくれた。


「お邪魔します」

「アトミス嬢、あのことですが、本気ですね」

「はい。すぐにでも自由な身になりたいのです」

「わかりました。ではこちらへ」


 ビエントはリリーとアトミスを連れて、応接室の一つに招いてくれた。

 綺麗な器に入った紅茶が出され、茶菓子にチョコレートが一つお皿に載っていた。

 二人がチョコレートを口に入れたとき、突然扉が開いた。


「誰だよ。客なんて呼んでないぞ」


 シオンが部屋に入ってきた。


「何だよ、チビと奴隷か。なんか俺に用でもあったのか?急に呼び出すな、俺はおまえ達に用はない」


 一気に捲し立てたとき、背後にビエントと国王様が立った。


「シオン、兄の婚約者に対してチビと呼ぶとは、礼儀作法から学ばなければならないな。学ぶのが嫌なら、不敬罪で首でも落とすか?」

「父上」

「婚約者に対して奴隷とは、なんという無礼だろう。王家として恥ずかしい」


 アトミスは国王様の前に跪いた。


「国王陛下、この通り、シオン様は最初から私のことは奴隷と申しています。愛情はないとはっきり言っております。私が光の魔術師だから危険な時に助けてもらうために、側に置くと申しておりました。この間のダンジョンでの戦いの時でも、自分に麻痺が起きたときだけ私を呼び、麻痺の治療をしてもお礼の一つもしませんでした。この先、伴侶となる者としては、とても尊敬できません。どうか婚約破棄していただきたいと思います」


 アトミスは一気に話して、まだ頭を下げたままじっとしている。


「アトミス嬢。バカな息子で申し訳ない。婚約破棄は応じよう。私欲のあった婚約だったことは、認めよう。いい縁談があるように、力になることを約束しよう」

「ありがとうございます」


 アトミスは晴れて、婚約破棄できた。


「この愚息は、家庭教師をつけて、躾からし直すつもりだ。心根が腐っておる。情けない」


 国王はアトミスの肩に触れて、頭を上げるように、声をかけた。


「伯爵令嬢でありながら、騎士団に入り、何年も力を注いでくれてありがとう。今回のダンジョンの攻略も危険な任務と知りながら、よく耐えて戦ってくれた。ありがとう、アトミス嬢」

「お礼をいただけて、嬉しく思います。仲間がいたからこそ、頑張れた任務です」


 アトミスがリリーを振り返る。

 リリーは微笑んで、頷いた。


「父を通して、正式な婚約破棄の使いを出そう」

「ありがとうございます」


 ビエント様がアトミスの腕を引き、立たせてくれた。


「ゆっくりリリー嬢と楽しんでくれ。ここにも遊びに来るといい」

「はい」


 アトミスは、今度は立ったままお辞儀をした。

 国王陛下は、シオンの耳を引っ張りながら、部屋から出て行った。





「やったわ」

「おめでとう。アトミス」

「リリーのお陰よ。いつも励ましてくれありがとう」


 アトミスはリリーを抱きしめる。


「アトミス嬢、弟が苦しめて、本当に申し訳なかった」

「いいえ、もう過去の事です」

「良かったわ、本当に」


 アトミスは涙を流しながら、喜んでいる。

 好きでもない相手と結婚なんて誰もしたくない。

 リリーは過去の自分を思い出しながら、アトミスの婚約破棄を喜んだ。


読んでくださりありがとうございます。

次回10章に入ります♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ