3 リリーとアトミス(1)
アトミスに教えてもらった高級チョコレート店でチョコレートを買って、リリーはアトミスの家を訪ねた。
すぐに応接室に案内されて、アトミスがすぐに来た。
「リリーがいないから、夜、よく眠れないわ」
リリーは微笑んで、チョコレートをアトミスに渡した。
「お茶菓子を持ってきたのね。こらからは何も持ってこなくてもいいのよ。我が家も茶菓子くらいは準備しているわ」
「一緒にチョコレートを食べたかったのよ」
「それならいいけど、気を遣わないでね」
「ええ」
すぐに侍女が紅茶を出してくれる。
アトミスはチョコの包みを取ると、チョコレートの箱を真ん中に置いた。
「私、ここのチョコレートが気に入っているの。とても美味しいもの」
「リリーはチョコレートが好きよね」
「アトミスは嫌いですの?」
「大好きよ」
「よかったわ」
二人でチョコレートを口に含む。
甘い味が口の中に広がり、わずかなほろ苦さも癖になるほど美味しい。
「ビエント様にシオン様の事を話したわ。今は、ダンジョンの攻略で無茶な指揮を執ったことを怒られているわ。死者が出たらしくて、国王様とシオン様は二人でお見舞いに行かれたわ。国王様にビエント様が話してくれると言っていたけれど、アトミスの気持ちは変わってないかしら?」
「ええ、シオン様は私を愛してはくれないわ。奴隷と言われて、私はシオン様を見るだけで嫌悪を感じるようになってしまったわ。お父様やお母様に、相談しました。相手は皇族なので、女性からの婚約破棄はできないと言われましたけれど、早く自由になりたいと思っていますの」
「私を訪ねて王宮に遊びにいらして、そうしたら国王様に出会う頻度も増しますわ」
「王宮に行ってもいいのですか?」
「私はビエント様の婚約者として、王宮に滞在しているので構わないですわ」
アトミスは頬に指をあてて考えている。
「今から行ってもいいかしら?」
「もちろんよ。私のお部屋の侍女は私の国から連れて来た私の味方ですから、何でもおっしゃって構わないわ。外に漏れることもないわ」
「リリーって策士よね。騎士団長と洞窟に行ったとき、もう作戦を考えて団長をその気にさせたのでしょう?」
「そんなことはないわ。思った事を遠慮せずに話しただけよ」
アトミスは微笑んだ。
「上着を着てくるわ。少しお待ちになって」
アトミスはハイキングにでも出かけるように楽しそうに応接室を出て行った。
リリーはもう一個チョコレートを食べて、紅茶を飲んだ。




