1 リリーとシオン(1)
リリーはビエントに頼んで宝石箱と、金庫を一つもらった。
さすが王宮なだけあって、すぐに欲しい物が出てきた。
モリーに頼んで金貨をしまうための袋を作ってもらった。頑丈な布で作ってもらったので、底が抜けたりはしないだろう。頼んで30分もしないうちに30枚以上の袋を持ってきてくれた。
旅行鞄を開けて、洗濯物と使いかけのシャンプー等を取り出して、リリーはメリーに手伝ってもらいながら、片付けを始めた。
ビエントは構って欲しそうにソファーに座っていたが、片付けが先だ。
体に付けた杖やロットはリリー専用なので、リリー以外は触れない。新しい王冠とマント取り出して、ビエントとモリーとメリーに見てもらう。
「ラストアタックを取ったのですわ」
リリーはワンピースの上から、王冠とマントを着けて、三人に見せる。
「これも専用なのか」
「はい。私以外は触れられません」
リリーはビエントの前に立った。ビエントが触れようとしても触れられない。
「すごいな。王冠も素晴らしく美しい」
「落としたのは、人を食べてしまう獰猛なコウモリでしたけれど」
「なんと恐ろしい」
ビエントは素直に驚いている。
「これは私の戦士としての勲章です」
「トルソーをお持ちしましょう。それに着せて、お部屋に飾りましょう」
凜々しいリリーの姿を見て、モリーが言った。
「それがいい。片付けてしまうより、飾ったらいいだろう」
リリーは見せたら、それを脱ぐと畳んでテーブルに置いた。王冠もマントの上に置いた。
「ビエント様、シオン様はもしかしたら魔術は苦手ではないですか?」
「ああ、あいつに魔術の才能はない」
「最後のボス戦で、シオン様が魔術を放って、危険な事が置きました。もう少し魔術に力があったら、もしかしたら、私もシオン様も無事ではなかったかもしれないほど、危険な事をなさって、最後に騎士団長がシオン様に注意をなさったんですけれど、少しも反省した様子はなく、寄宿舎の中から出て行かれたのですけど、あの後王宮に戻られたのでしょうか?」
「いや、まだ戻ってはいない。シオンが規律を乱したのか?」
「はい。戦法は何度も相談して決めた物でしたし、念のために戦う前に確認もしましたが、シオン様が勝手な行いをいたしました。シオン様は他にも毒ガスを吐き出す魔物のボス戦でもマスクもはめられないのに、無理矢理入られて、アトミスに対して奴隷だからマスクをはめろと命令されました。アトミスは、二人で出会った時も、アトミスに対して奴隷として、一生、シオン様を守るためにいるのだとおっしゃっていたとか。アトミスは酷く傷ついておりましたから、マスクは、私が無理矢理はめましたが、シオン様はアトミスに対して、愛情の欠片もない態度をしていらっしゃいますの。アトミスが戦場に向かったのも、この戦いを早く終わらせ、シオン様と婚約破棄をしていただきたいためだと言っておりましたわ。光の魔術師だから、アトミスを選んだとも言っておられました。国王様や王妃様はどうしてアトミスをシオン様の婚約者にしたのでしょう。ビエント様なら知っているかと思ってうかがっています」
ビエントはしばらく黙っていたが、隠してもリリーなら暴いていくだろうと思い口を開いた。
「シオンは魔術の才能がないから、シオンが倒れたとき、光の魔術師が近くにいれば救ってもらえるだろうとアトミスを選んだと聞いた」
「ダンジョンがなくなった今は、もう魔法で戦う事はなくなりました。そうしたらシオン様の婚約者でいる必要はなくなったのではないでしょうか?アトミスを傷つける事ばかりを口にするシオン様と一緒にいる必要はないと思いますの」
「リリーに対してもシオンは無礼な事を口にするのか?」
「私はチビと言われる程度ですわ。雑用のような運搬係を押しつけられたのは腹が立ちましたが、私以外にできる者がいなかったのですから、仕方がありません」
「弟が無礼な真似をして、申し訳なかった」
「私のことはいいのです。確かに、私の方が年下ですから、気に入らなかったのでしょう・・・・・・アトミスは、国王様に婚約破棄の話を持っていくと、アトミスの父が伯爵家の中で阻害されるのではないかと、それも心配しておりますの」
「父上に話してみよう」
「間に入っていただけたら、とても助かります。アトミスは婚約の笛も、既にはめておりません。悲しみに食事も喉を通らないほど、心を傷めていますわ」
リリーはアトミスの苦悩をビエントに話した。
きっと力になってくれると信じている。




