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悪役令嬢になるのも面倒なので冒険に出かけます(仮)  作者: 綾月百花
8   北のダンジョン攻略
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5   祝杯


 怪我をした魔術学校の生徒はトラックが何台かやって来て、病院に運ばれていった。

 シオンの仲間が、運ばれていった生徒の名前を確認して記録していた。90人ほどが運ばれて、残ったのは10人そこそこだ。

 マイクを持ったシオンは、まだ偉そうな顔をしている。


「今日はダンジョンの攻略お疲れ様でした。無事に攻略できて何よりです」

「王子からは以上ですか?」

「はい」


 シオンはマイクを騎士団長に渡すと、椅子に座った。


「王子だってさ」とこそこそと騎士団の中で皆が囁く。


「リリーの婚約者?」

「・・・・・・違いますわ」

「リリーがあんな心もなさそうな奴と結婚させられるなら、俺がリリーを守ってやる」


 アハトが胸を張って、言った。

 アトミスの顔色が悪い。

 王子の挨拶も、素っ気なく、態度も悪い。

 これでは、アトミスが婚約者だと胸を張って言えないだろう。アトミスが望んでいなくても、婚約者であることは変わらないのだから。


 今日の攻略でリリーは何も言わなかったが、コウモリに余計な攻撃をしてきたのは、シオンだと気付いた。攻撃がそれほど強くなかったから、逃げ出したコウモリが一匹だけだった。あれでもっと力のある攻撃だったら、コウモリはもっとたくさん解放され、被害者が出たかもしれない。シオンは魔法が苦手なんだと感じた。それを悟られないように一生懸命隠しているような気がした。


 団長がマイクを握り直し、騎士団員に向かって頭を下げた。


「今日は申し訳ないことをした。我々だけなら、もっと早く攻略できただろう。余計な怪我人も出して、皆を危険な目に遭わせた。魔法学校の生徒を受け入れた私の責任だ」


 そう言うと、再び深く頭を下げた。


「まるで俺たちが邪魔をしに来たみたいに聞こえるんだけど・・・・・・」


 シオンが不愉快そうに声を出した。


「ラスボス戦で余計な攻撃をしたのはシオン王子でしたね。私は透視ができる。なので、透視で見ていました。もし、もっとたくさんのコウモリが逃げ出てきて、襲いかかってきたら、団員の命も危なかった。シオン王子の命も危なかったのですよ。私はあのコウモリの怖さを知っています。群がったコウモリは骨を残すまで肉を食べ尽くします。王子、その哀れな最後の姿を想像できますか?私は騎士団長として、騎士団員の皆の命を守る義務があります。最初に攻略の指示がなされたでしょう。その通りに動かなければ危険だから、何度も話し合いをして攻略方法を考えてきました。どうか上に立つ身ならば、責任の重大性を考えていただきたい」


 シオンは机を叩くと、食堂から出て行った。その後を、魔法学校の生徒が追った。


「では、諸君。立派に恐怖と戦いながら、よくやってくれた。国の誇りだと感じている。君たちほどの英雄はいないだろう。どうか胸を張ってこれから生きていって欲しい。身につけた魔法は良い使い方に使って、これから生かして欲しい。今夜はシェフが腕によりをかけた夕食だ。よく味わって欲しい。皆、ありがとう」


 拍手が沸き起こった。

 今日の食事はシェフがトレーを渡してくれる。美味しそうなステーキにサラダとスープとパンが置かれている。


「魔法学園の生徒の分が残っているから、皆、おかわりは自由だ。好きなだけ食べるといい」


 スープとパンと飲み物は、いつもの定位置に置いてある。

 リリーは久しぶりの豪華な食事に、眠気も吹っ飛んだ。


「アトミス、悩みは後にして、今は料理を食べましょう」


 アトミスは苦笑しながら、頷いた。


「お腹が空いたわ」

「戦う前は、しっかり食べないと負けてしまうわ。私が婚約破棄したときは、お腹を満腹にしたわ。アトミスがどうしたいのか、後で教えてくだいますか?必ず協力するわ」

「・・・・・・リリー」


 アトミスは頷いて、料理を食べ出した。

 リリーはお肉もスープもパンもジュースもみんなおかわりした。

 アハト達も喜んでおかわりしている。


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