1 魔法学校の生徒
騎士団とは違う制服を着た魔術師が寄宿舎に集まった。今までゆったり座っていた騎士団達は端の方に追いやられ、まるで魔法学校の生徒に乗っ取られたようだ。
1人部屋だった戦士たちは、3人部屋に追いやられ、不満が絶えない。開いた部屋に魔法学校の生徒が宿泊している。飛べる者は家から通うらしい。実際に飛べる人数は、たったの5人で、後は、普通の魔術師だ。その中にシオン王子がいた。
アトミスは動揺して、顔色は蒼白だ。奴隷のように使われるのだと思うと、それだけで恐怖に変わると言う。
「アトミス、大丈夫よ。シオン様はアトミスのことを一度も見てないわ。勿論、私のことも見てないわ」
「・・・・・・ええ」
シオンはマイクを持ち、まず自己紹介をした。それも素っ気なく。「第二王子のシオンです」と挨拶をした。
「攻略は我々がする。騎士団の諸君は見ていればいい。手出しは無用。そこのチビが運搬係だ。攻略は明後日の早朝だ。では質問は?」
シオンはマイクを置いたまま前に立っている。
騎士団のメンバーは、声こそ出さなかったが、険悪な空気を漂わせている。
山までの移動は、リリーに回って来た。
手出し無用と言いながら、移動も自分たちでできないのに、威張りすぎだ。
「そこのチビが移動係だ」とシオンに言われて、リリーが爆発する前に、アハトが立ち上がった。
「頼むなら頼み方があるだろう。うちの騎士団でリリーをチビと呼ぶ奴は誰一人もいないぞ」
「チビだからチビと言っただけだ」
リリーはアハトの手を握った。
これ以上、何を言っても無駄だ。
100人だと2往復しなければならない。その上、騎士団の80人を合わせると、あと2往復が必要だ。全部で4往復。かなりの時間が必要になる。
リリーの体力もかなり削ぎ落とされるだろう。彼らが協力的だとは思えない。うろうろ動かれれば、かなり疲労するし落とす恐れもある。
「質問はなさそうだな。では解散」
シオンはそれだけ言うと、仲間達と外に出て行った。
団長は渋い顔をしていた。
「リリー嬢、すまない。リリー嬢の負担を増しただけだ」
「ですわね。ご褒美はアイスクリームやチョコレートでは足りないわ」
大きなため息を一つ。
外へ出て行ったのだから、シオンは空を飛べるのだろう。
「シェフに何か甘い物を作ってもらおう」
「それよりも団長。彼らに、動かないようにおっしゃってくださいまし。落ちても責任は持ちませんので」
「わかったよ」
団長は平謝りだ。騎士団のメンバーの機嫌はかなり険悪だ。雷が落ちても火が噴き出しても温泉が噴き出してもおかしくはないほど、怒り狂っている。
「アトミス、部屋に戻りましょう」
「そうね。私の婚約者は最低の人間だわ。とても恥ずかしいわ」
アトミスの気持ちを考えると、それ以上、何も言えない。
魔法学校の生徒は、どんな戦い方をするのだろう?




