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悪役令嬢になるのも面倒なので冒険に出かけます(仮)  作者: 綾月百花
7   北の魔物の森
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8   不眠


 アトミスを先にお風呂に入れて、リリーは杖を片付け、金貨を旅行鞄の中にしまった。

 アクセサリーを外して、汗を水洗いするとタオルで拭い、引き出しの上に置いた。

 ブーツを脱ぎ、靴下も脱いでしまう。疲れた足が疼いている。部屋の真ん中に両手を広げて横になると、そのまま1メートルほど浮かぶ。

 床に横になっていたら、100%寝落ちるだろう。

 浴室からは音がしない。きっと色々ショックを受けて湯船で考え事をしているのだろう。

 アトミスには悩みが多すぎる。

 人格不明のシオン王子は、人前で猫を被るし、平気でアトミスを傷つける。

 どうしたら婚約破棄できるのだろう。

 リリーは一度、婚約破棄を国王に直訴して受け入れてもらったが、性格の穏やかなアトミスにそんな無謀な真似はできないだろう。国王次第で伯爵家の位を落とされてしまう恐れもある。

 リリーは自分が婚約破棄されたときより成長し、いろいろ考える事ができるようになった。リリーの家は国王の計らいで、父は議員の委員長になり以前より給料も増えて、伯爵家としての位も上がった。

 すべて国王陛下次第だ。

 アストラべー王国の国王と王妃が、どんな方なのか、またリリーは知らない。

 リリーの前では優しくしているが、アトミスの話では、この婚約はシオン王子のための愛のない婚約だ。そんな仕打ちを平気でできる人ならば、心はオープンにはできない。大切な部分には鍵をかけて、見せないようにしないと不安だ。

 シオン王子はリリーの婚約式にも欠席し、リリーの事はチビと罵るくせに、人前ではきちんと挨拶もできる。一体何枚舌を持ち、どれだけたくさんの仮面を持っているのだろう。


 それにしても遅い・・・・・・。お風呂で眠ってしまったのだろうか?


 心配になって、床に降りると、お風呂の扉をノックする。


「アトミス、寝ているの?お風呂で眠ったら危ないわよ」

「・・・・・・ごめんなさい。すぐに出るわ」


 アトミスが湯船から出た音がして、リリーは部屋に戻る。脱衣所のカーテンを閉めて、リリーはお風呂の準備をする。白色のネグリジェと下着を持ち、アトミスが出てくるのを待つ。


「リリー、遅くなってごめんなさい」

「いいのよ。お風呂で眠ると溺れてしまうわ」

「・・・・・・そうね」

「先に寝ていてくださいな」


 脱衣所が開くと、リリーは脱衣所入ってカーテンを閉める。この部屋で洗うものと、寄宿舎の係員が洗ってくれる物を区別して服を脱ぐと、お風呂に入った。

 今日も薔薇の香りのするピンクのお湯だった。

 確かに、こんな気分のいいお風呂なら何時間でも入っていたいだろう。

 リリーは髪や体を洗うと、ピンクのお湯に入った。暖かくて気持ち良く、眠りかけて急いでお風呂を洗い、お風呂から出た。タオルで髪を拭き、体も拭うと手を翳し、微風で髪を乾かす。

 濡れたままより乾かした方が気持ち良く眠れる。アトミスを起こさないように、クローゼットを開けて、顔にクリームを塗る。肌がしっとりして、気持ちがいい。

 身体を浮かばせたままベッドに入ろうとしたら、アトミスが起き上がった。


「リリー、こちらよ」

「うわぁ!もう眠ったのかと思いましたわ」

「私、不眠症なの。リリーがいないと眠れないの」


 リリーはアトミスのベッドに入った。

 アトミスがリリーを抱きしめてきて、やっとアトミスは目を閉じた。

 リリーはすぐ眠ってしまった。アトミスは目を開けて、リリーの白銀の髪を撫でる。


「眠れないのよ」


 リリーを抱きしめて、アトミスは目を閉じる。リリーの温かさを胸に抱いて、やっと眠り落ちた。


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