2 ビエントの苦悩
「おかえりなさい、ビエント様」
「リリー、ただいま」
頬にキスされて、照れくさい。
手で頬を擦り、ビエントの手を握り、ソファーに座る。
リリーはアトミスから聞いたことを話した。
「そんなことはないだろう」とビエントは言った。
「それでも、昨日のパーティーでは、アトミスさんは、シオン様と一緒にいなかったし、アトミスさんが笛を吹くまで姿も見せなかったのですよ。姿を見せたら、あまりに酷い仕打ち。私なら国王様に直談判しますわ」
「おいおい」
リリーが言うと、リリーならやりかねないとビエントは思う。
ビエントは初めて聞いた内容だが、確かに光の魔術師だから婚約してもいいだろうと言っていたことは覚えている。
「それでアトミスさんが北の魔物の森の戦士になられると言うので、私も戦士に戻ろうと思います」
恐れていた言葉が飛び出した。
「リリーとアトミス嬢とは別人だ」
「戦場では背中を預けられるのは信頼できる相手ですわ。アトミスさんが魔物を倒す戦場に戻るなら、私も戻ります。毎日、暇すぎて体も鈍ってしまいますし、杖も使ってみたいので・・・・・・」
リリーは立ち上がり、掌の上で風の渦を作っている。
ゴオオオオオオオと風が回る音がする。
「・・・・・・シオンの婚約破棄の話をしてみよう」
リリーは座ると、風の渦を消した。
「アトミスさんは酷く傷つき、泣きくれておりましたの。このまま放ってはおけませんわ」
「わかった。父上と母上にすぐに話そう」
リリーは頷いた。




