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悪役令嬢になるのも面倒なので冒険に出かけます(仮)  作者: 綾月百花
6   王宮での暮らし
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9   色


「リリー、話があるんだ」

「なぁに?」

「少し部屋に行ってもいいかな?」

「ええ、どうぞ」

 リリーはビエントに連れられて、リリーの部屋に向かった。

「今日のリリーはずいぶん大人っぽい服を着ているんだね」

「そうですか?似合わないかしら?」

「とても似合うよ」

 部屋に入るとモリーとメリーはいなかった。

「クローゼットを見せてくれる?」

「いいですわよ」

 リリーはクローゼットを開けた。

 ビエントはまずドレスを見た。

 白くレースをふんだんに使い作られたドレスだった。以前のものとデザインは違うが、素晴らしくいい物だと思える。

 普段着のワンピースはお古のワンピースではなく、洒落た赤のワンピースにシックな黒のワンピースがかけられている。今着ている服は白と黒の布でお洒落に作られたワンピースに白銀の輝く靴を履いている。

「リリー、私は迷ってしまったんだ」

「何を迷っていらっしゃるのですか?」

「ドレスの色を青にしていいのかどうかと、ワンピースの色だ。リリーが本当に好きな色を私は知らない。嫌いな色も知らない。新しく作られたドレスも、とても豪華なものだ。リリーは白が好きだと言ったが、また作られたドレスは白い。もう一度、デザイナーと洋服を選ぼう」

「いいですけど・・・・・・。前に選んだドレスは、どうされたのですか?」

「いったん、止めてある。いい思い出がない青いドレスを着て気分は良くならないだろう」

「私は青いドレスは好きではないの。・・・・・・昔、母と兄が決めた青いドレスを着たときも嫌なことが起きました。そのドレスは、事故が起きて1回きりで着られなくなりました・・・・・・」

「やはりそうだったのか」

「ピンクや水色は、昔から着ていましたけれど、好きなスタイルはやはり・・・・・・」

 リリーはドレスに触れた。

 白いドレスが好きだ。

 レースがふんだんに使われたドレスは、もっと好きだ。

「今からお店に行くか?」

「お父様達が来ているのに、宮殿に置いて行くのですか?」

「では一緒に参ろう」

「大勢で押しかけて、お店の迷惑になるわ」

「ご両親にも見てもらいたい」

「・・・・・・分かりましたわ」


 二台の馬車に乗り、洋服屋に向かった。

 以前と違ったタイプの洋服を着たリリーを見たデザイナーは、気持ちを改めた。

「まずはドレスから決めましょう」

 デザイナーはスケッチブックを持って椅子に座った。

「嫌いな色は?」

「青よ」

「好きな色は?」

「白よ」

「白以外は?」

「白に近い色がいいわ」

「では、デザインは?」

「レースのついた物が好きですわ」

「わかりました。デザインを描くので、お店で好きなデザインがあるか見ていただけますか?」

「はい」

 両親がリリーにいろんな服をあてがう。楽しそうな笑い声が聞こえる。

 デザイナーは、急いで数枚のデザインを描いていく。

「リリー来てくれるかい?」

「はぁい」

「デザイン画を見てくださいますか?」

 リリーと母と兄と父もデザイン画を見ている。

「リリー、このドレスはあの時のドレスに似ているな」

 兄がリリーの髪を撫でる。

「あの時のドレスより裾が開いているわ」

 母が細かいところまでチェックしている。

「気に入ったのはありましたか?」

 リリーは指を指した。

 最初に着られなかったドレスに似ているドレスだ。

 繊細なレースがふんだんに使われたドレスを着たかった。リリーの未練だ。

「では色を決めましょう」

 デザイナーはいろんな色の布を広げて、その上にレースを重ねていく。

「綺麗だわ」と母が口にすると「そうね」とリリーも答えた。

「バイオレットやレッドも鮮やかになりますよ」

「派手よ」

「綺麗な白をお持ちなので、派手やかな色もあると変化があって面白いですよ」

「では、バイオレットで」

 ビエントはホッとしていた。婚約式で婚約破棄されたかもしれない。

「では、ワンピースを決めましょう」

「これからは公務もあるから、いい物が欲しい」

「私も公務をするのですか?」

「することもあるかもしれない」

「この間、選んだ色でいいのよ」

 リリーはビエントに素直な気持ちで言った。

「今着ている物と印象がずいぶん違うが・・・・・・」

「重ならない物を選んだのよ」

「提案ですが、ピンクの色をもう少し明るくしましょう。水色は薄めの色で」

 布を出して、リリーの顔の肩にかけて顔写りを見ていく。

「白はパールホワイトにいたしましょう。アクセントにパールを着けましょう。ミッドナイトブルーは予定通りで」

「リリー、気に入らない物はないか?」

「ありません。お願いします」

「普段着は気に入った物はあったか?」

「4着あるので、大丈夫よ」

「王女に着る服がないのは、私の恥」

「リリー、買っていただきなさい」

 兄がリリーの背中を押した。

「妹は普段着ならどんな色も着ますので殿下がお選びになっても文句は言わないと思います」

お店でリリーの着られそうなワンピースを選んで並べられた。胸元がお洒落なピンクのワンピースにスカートの部分が二重に重なった水色のワンピースとミッドナイトブルーのシンプルなワンピースを選んだ。

「ブルーは嫌いじゃないのか?」

「ドレスが嫌いなだけよ」

「これは、また難しい」

 サイズを大きめで購入すると、リリーは「ありがとうございます」と頭を下げた。


読んでくださりありがとうございます。

オマケです♪

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