6 帰省(2)
「素敵ね」
新しいドレスは、ゆとりがあって、リリーにとても似合っていた。
美しいレースがふんだんに使われ、ゴージャスだ。
「とても似合っているわ」
父がリリーの手を取り、ダンスを始めた。
「お父様ったら」
「いいではないか。この先、娘とそんなに踊れないだろう」
「リリーはまた身長が伸びたな」
兄がぽつりと呟いた。
「はい。今はまだ成長期ですもの」
「街に出て、買い物でも行くか?新しい靴を買ってやろう」
「ビエント様が注文なさってくださいましたけど」
「できあがるまでに時間がかかるだろう」
「それもそうですね」
「ワンピースもお下がりを着ているんだろう」
「はい。少し小さくなって窮屈ですけど、そのうち、できてくるでしょう」
「今、着る物が必要だ。アコラサード伯爵令嬢として相応しい物を着なさい」
父はダンスをしながら、ご機嫌だ。
「ハスタも踊りたいか?」
「父上、どうぞ」
「リリーが嫁に行ってからでは踊れないぞ」
「では、一曲」
父から、兄に変わる。
「綺麗になったな。昔はお転婆だったが」
「今でもお転婆ですわ」
「そうだったな」
「お兄様、ダンスがお上手になりましたね」
「僕は17歳だ。それなりにレッスンを受けているぞ」
「そういえば、ビエント様の弟さんが17歳なのですの。私のお友達の婚約者なのですけど、婚約パーティーの時と雰囲気が違いますの」
「どんな風に違うんだい」
「なんか、愛想がないような気がしますわ。お姉様はとても優しい人なのに、あの方でいいのかしらと思ってしまう時がありますの」
「リリーが日々見ている姿が、普段の姿だろう」
「お姉様はシオン王子様より一つ年上で、婚約を不安に思っていらっしゃるの。王宮でご挨拶したとき、こんなチビが姉になるのかと言われましたわ」
「性格曲がってそうだな」
「・・・・・・なので、心配ですの」
くるくる回りながら、リリーは宮殿での不思議を兄に話した。
アストラべー王国では口にできないことだ。
「さあ、ダンスはそれくらいにして、出かけよう」
モリーとメリーが着替えを手伝ってくれる。
ドレスを脱ぐと、メリーがドレスをハンガーにかけて、陰干しするように片付けている。
モリーは脱いだワンピースを着せてくれた。乱れた髪を梳かして、唇に紅を差してくれる。
「さあ、お出かけしていらしてください」
「行ってきます」
リリーは両親と共に街に出かけた。
久しぶりに乗る馬車は、ゆったり揺れて、景色が止まって見えるほどだ。
街に出て、有名専門店のお店に入り、洋服を吟味する。
店員がリリーのサイズを出してくる。
リリーは少し大人っぽい物を探した。白と黒を使ったワンピースや黒色や反対に赤色など。ビエントが選ばなかった物を選んで着てみた。
「リリー、似合うわよ」
「ありがとう。お母様」
靴は髪に合わせて白銀を選んでみた。綺麗に光る小さなストーンが付いて輝いている。母が落ちついた黒い靴やドレス用の白い靴もあった方がいいと、足に合わせてくれた。
店員が色々出してくる。鞄は赤を持っているので、黒色か白銀で迷ったら、父が両方買ってくれた。
洋服はワンサイズ大きめで買ってくれたので、しばらくは着られそうだ。靴だけはちょうどいい物ではないと危ないので、足に合った物を選んでもらい。新しい洋服を着て帰った。
赤いワンピースは初めてだ。シンプルな形に、白いレースのストールをお洒落に着けて、有名茶葉店に入り、お茶を飲みながら、スコーンを食べる。慣れ親しんだ食べ物を食べて、家に戻ってきたのだと、改めて思った。




