1 大規模作戦の話
夕食の時間に全員集合のアナウンスが入った。
夕食をトレーに載せて、テーブルに着いて食べていると、騎士団の団長が前に立った。
「食べながらでいい、聞いてくれ。いつも魔物退治ご苦労。国王様からも感謝の言葉を聞いている。街に魔物が頻繁に出るようになり、国王様は憂いておられる。そこで大規模な調査を行いたいと思う。この魔物の森の奥に突き出た山があるのを見た者もいるだろう。夕刻になると、その山の洞窟から、大量な魔物が出てくる事までは調査済みだが、中の様子は未知の段階だ。今回は洞窟の中の調査をして欲しいと国王から依頼がきている。志願者はいないか?礼金は普段の5倍額出されるそうだ」
「団長質問です」
「言ってみろ」
「小規模で調査をするのは危険ではないでしょうか?毎日、たくさんの魔物が出てくる洞窟です。皆で協力して出かけないと死にに、行くだけです」
「確かにその通りだ。危険を伴う業務になることは間違いないから、国王様も皆でという指示が出せないでいる」
食堂はシーンと静まりかえった。
「姿を消せるスキルを持った物はいるか?」
誰も手を挙げない。
「空を飛べるスキルを持った物はいるか?」
リリーは手を挙げた。
「リリー嬢一人か」
皆の視線がリリーに注がれる。
「全員に行けとは言えない。調査は人数次第で決める。来週もう一度、決意を聞く。よく考えて欲しい」
団長は敬礼をして食堂を出て行った。
「リリーが言っていた、ダンジョンね」
アトミスが、こそっとリリーに言った。
「ダンジョンって何だよ?」
アハトがリリーに聞く。
「その洞窟の中に、魔物を生み出す魔物がいると聞きましたわ。その魔物を生み出す魔物を倒さなければ、魔物はずっと生み出され続けるというわけです。その洞窟をダンジョンと呼んでいるそうです・・・・・・」
他の席の者もリリーの話を聞いている。
「魔物を生み出す魔物を倒しに行かせたいわけか」
他の席の戦士が口にした。
「ずっと雑魚ばかりを倒していても、毎日生まれてくるから、魔物を生み出す魔物を倒さなければ、魔物はずっと湧き出すばかりだからな」
「やってみる価値はあると思うが、やはり危険を伴う」
食堂では戦士達がそれぞれ意見を出し合って話し合いが始まった。
リリーは食べかけの食事を急いで食べて、オレンジジュースをゆっくり飲む。
「俺はやってみてもいいと思う」
アハトは言った。
「毎日の魔物退治もいつまでも続けられないだろう」
「金貨五枚はかなり嬉しい。家族に仕送りができる」
「生きてこそではないか?」
反対の意見もでてくる。
リリーとアトミスは黙って、皆の意見を聞く。
いろんな意見が出たが、狩りの時間になり、話し合いはお開きになった。
「ポーション持ったか?リリー」
「はい。最近は10本持っています」
「偉いな」
アハトがリリーの髪を梳く。
美しい髪が広がる。
アストラべー王国は金髪が多いが、白銀の髪の者はいない。リリーの瞳の色は、この国の持つ青とはまた違った青だ。
濁りのない宝石のような青だ。黄金色のアトミスと珍しい白銀のリリーは、騎士団の中で知らぬ者がいないほど有名だ。
二人が王家の者と婚約している事を知る者は、騎士団長くらいしかいないだろう。




