9 ビエント様とデート(2)
「魔物を浮かせますので、その間に移動させてください」
「お嬢さん、できるのかい?」
「おそらく、できると思います」
リリーは魔物近づき、意識を集中する。両手を翳して、上に持ち上げるイメージをする。
「おお、重さがなくなった」
「今のうちに移動させてくださいな」
クレーンが動いて、静かにトラックの上に魔物が乗った。リリーは魔術を解いた。グンとトラックが沈み込む。
「お嬢さん、ありがとう。すごい力だね」
「・・・・・・いいえ」
リリーは頭を下げると、ビエントの場所まで走って戻って行く。
「リリーは物を持ち上げる力もあるのか?」
「はい。最初に旅行鞄に乗って旅に出ました。旅行鞄を持ち上げる練習をしていたので、力のないアトミスさんをおうちまで送くることもできます」
「私にはない力だな」
「そうなんですか?」
リリーは自分のまだ小さな手を見つめる。
「旅行鞄が重くて持てなかったのです。だから、鞄を持ち上げたら軽くなると思い練習をしました。鞄に乗って旅をしたのです」
「お転婆な考えだが、魔術学校にトレーニングの仕方として、報告をしておこう」
リリーは笑った。
「だが、窓から家出された両親はさぞかし私を恨んだだろうな。魔法を教えなければ、おとなしく育っていったのだから」
「私は魔法を教えていただいて、良かったと思っています。旅行中に人の役にたてたこともありますので」
「そうか」
トラックがやっと走り出した。ロープが片付けられ、水が撒かれている。魔物の血の痕跡は消えていく。
「さあ、私たちも移動しよう」
「はい」
ビエントはまたリリーの手を繋いだ。
「街を案内してくださいな」
「歩いてばかりで退屈ではないのか?」
「初めて来た街です。どこを見ても新鮮ですわ」
その日、ビエントとリリーは街を歩いてはカフェに入り、リリーは甘いケーキやお菓子を食べさせてもらった。
夕方、アトミスの家に送ってもらい、アトミスの家長に「世話になって申し訳ない」とビエントは頭を下げた。
「アトミスの友人として招いていますので、お気遣いなさらないでください」と家長は、焦っていた。
「リリー、明日は宮殿に招こう。迎えに来る」
「・・・・・・はい、お待ちしています」
ビエントは空に飛び上がった。リリーは手を振った。ビエントも手を振り替えし飛んで行った。




