3 ダンスのお相手は?
リリーは壁の花になっている。
婚約者であるリリーをほったらかしたアルミュール王子が、ずっとミーネ子爵令嬢と仲睦まじく腕を組み、招待客への挨拶に回っているからだ。
ミーネは愛らしい顔立ちはしているが、美人ではない。
そばかすだらけの顔に、髪も瞳も赤茶で、クラスでも地味な方だ。それなのに、第一王子のアルミュールと腕を組んで歩く度胸はあるのね。
音楽が流れ出すと、そのままアルミュール王子はミーネとファーストダンスを踊り始めた。
優雅に?
ミーネはアルミュール王子の足を踏み、転びそうになっている。その度にアルミュール王子は微笑んで、ミーネを支える。
・・・・・・転べばいいのに。
(ウインドウシュートス)
心の中で魔術を唱えると、ミーネのドレスが捲れ上がって、ミーネは座り込んだ。
・・・・・・いい気味。
恥ずかしそうに、ミーネはアルミュール王子から手を離して、駆けだしていった。
ダンス会場では笑い声が聞こえる。
駆けていって、自分で従者にぶつかりワインを頭から浴びた。
・・・・・・少し悪戯が過ぎたかしら?
壁の花になっているリリーの前に、国王様と王妃様がやって来た。
「リリー嬢、今日はよく来てくれた」
「いいえ」
「せっかく来てくれたのに、婚約者の貴方にあの子は何をしているんだろう」
国王様が頭を下げてくれる。
リリーは正式なお辞儀をした。
「あの娘は何処の家の令嬢でしょう?初めて見ます。・・・・・・ドレスを捲り上げるようなはしたないお嬢さんとは関わり合って欲しくはないのだけど」
「・・・・・・恐れながら王妃様。あの方はミーネ・カノニ・ヴァンヴァ子爵令嬢でございます。私と同じ13歳のはずです。・・・・・・アルは私などよりも、あの方がお気に入りのご様子みたいですね」
「そんなことはないぞ。あの子はリリー嬢にプレゼントをしたいと、それはそれは美しいドレスを作ったのだよ。もう少ししたら、綺麗な白いドレスを貴方に贈ってくれるだろう」
「まあ、そうなのですか?」
「ああ、実を云うとリリー嬢が白いドレスを着たがっていたのを知って、この間、リリー嬢のドレスを仕立てたばかりなのだ」
「それはもう美しい。まるでウエディングドレスのようなドレスですのよ」
「王妃様、それは誠ですか?」
「もちろん本当ですよ。・・・・・・ファーストダンスをお誘いしなかった息子は後で叱っておきますね」
「ありがとうございます」
「もう少しお待ちになっててね」
国王夫妻はリリーに丁寧に頭を下げてくれた。
リリーも美しくお辞儀をした。