5 写真
「たくさん写真を撮って欲しい」
ビエントは写真屋に注文する。
「リリーは笑顔だ」
「急に言われても・・・・・・」
「両親とは会ってはいないのだろう。家出して以来」
「・・・・・・はい」
「手紙も書いてこないと、私のところに手紙が来た」
「・・・・・・お父様ったら」
「こんなに可愛い娘が家出をして、会いに行けない場所にいれば、心配もするだろう」
「今回はお手紙を書きます。写真を一緒に送ります」
「そうしてやりなさい」
美しいドレスが見えるように、二人で仲良く並んで、ビエントはリリーの頬を突いたりして笑わせる。
「ビエント様。悪戯が過ぎますわよ」
リリーもビエントにちょっかいを出す。
二人の仲睦まじい姿が写されていく。
カメラマンも笑っている。
「最後に、殿下の腕に腕を絡めてください」
「はい」
リリーはビエントの腕に腕を絡めた。
何枚か写真を撮られ、撮影は終わった。
「現像は明日しますので、お届けは明後日でございます」
「頼んだぞ」
「お願いします」
二人で、カメラマンの前から離れていく。
「リリー一週間休みがあるなら、デートをしないか?」
「お姉様と買い物に行く約束をしてしまいましたが、デートはできると思います」
「時間ができたら笛を吹いてくれ」
「この音が聞こえるのですか?」
「我が国の者は耳がいい。笛はすべて音色が違うから、互いに笛を持つ」
「ビエント様も笛を持っていらっしゃるの?」
「持っている」
タキシードの中から笛を出して見せてくれた。
「・・・・・・吹いてみてください」
ビエントは笛を吹いてくれた。初めて聞く音は、綺麗な音色をしていた。
「近くなので聞こえますが、遠かったら聞こえないでしょう」
「私が吹けない代わりに、リリーが吹いてくれ」
「わかりましたわ」
弦楽四重奏が始まり、ダンスが始まった。
「リリー踊ってくれるね」
「はい、喜んで」
リリーはビエントの手に手を載せて、ダンスを久しぶりに踊った。




