14 久しぶりの狩り
アトミスが実家に帰って三日目にやっと狩りができるようになった。
狩り場を土壁で囲ってしまったので、その土壁を壊さなくてはならなくて、4人は早めに夕食を取り、夕方前には狩り場に来て、壁を壊す作業をしていた。
土壁に水魔法をかけて、風魔法で吹き飛ばす。その作業を繰り返し、土魔術師のフィジがしっかり固まった土を地面から動かす。火属性のアハトは、突然現れる魔物を倒していく。2時間ほどかけて、やっと壁がなくなった。
「土魔法ってすごいのね」
「壁を作ると壊すのが大変なんだ」
「でも、この壁があったから逃げ出せたんだけどな」
男性メンバーは食事が足りなかったのか、ポケットからパンを取り出して、食べている。
「リリーも食べるか?」
「いりませんわ」
ポケットから出てくるパンは、さすがに食べたくはない。
「そろそろかな?」
「背中は預けるぞ」
「声がけしていこう」
「はい!」
定刻通りに魔物が大量に湧き出してくる。
「この魔物はどこから湧いてくるのでしょう?」
ライトニング・ウインドを的確に当てながら、リリーは3人に聞いた。
「どこだろうな?」
「俺は知らない」
「俺も」
なんと3人共知らないという。
アトミスなら知っているのだろうか?
精神を集中させて、魔物を寄せ付けないように攻撃していく。
「トルネード・ウォールウイング、ライトニング・ウインド」
連即技もできるようになってきた。
「大きな蜘蛛が毒蜘蛛だ。あれは注意しないと」
「麻痺が引かない奴だ」
「わかりましたわ」
3人なら危険だが、4人ならなんとか倒せる。
アハトの火魔法は、魔物を焼き殺してしまう。火力が強く、残るのは骨とわずかに残った肉くらいだ。
ワポルの水属性は、大群の魔物を水で流し、水を自在に操り倒していく。
フィジの土魔法は、地面を揺らし、魔物が目眩を起こしているうちに、土をうねらせ、攻撃していく。
属性によって戦い方が違うし相性もあるようだ。
辺りが、明るくなってきた。
長い夜が終わり、体はくたくたになる。
ああ、そうだわ、家族に手紙を書かなくては・・・・・・。
リリーは爆風をかけて、魔物の死骸を森の奥へと飛ばした。
「後ろお願いできますか?」
「任せておけ」
「ラウガン」
リリーの小さな掌から爆風が飛び出していく。魔物の死骸は飛ばされていく。
四方を片付けて、リリーは「ありがとう」とお礼を言った。
「背中を守ってくれると安心できますわ」
「俺たちは慣れすぎて、時々油断をしてしまうんだ」
「ええ、そうなんですね」
「片付けを終えたから、夕方は少しゆっくりできるな」
「そうか、その日のうちに片付けてしまえばいいのか・・・・・・」
フィジが呟いている。
「早く出てくるより、その方が効率的だわ」
「リリーって頭もいいんだな」
「さすが伯爵令嬢」
「勉強、いっぱいするんだろう?」
「・・・・・・そうね。物心ついた頃から家庭教師が何人もついて、いろんな勉強をしたわ。でも、私は国を捨ててきた身なので、勉強をし直さなくはいけないわ」
狩り場から寄宿舎へと戻る。
「リリーは婚約破棄されたんだろう?」
アハトが横に並んで聞いてくる。
「されたけれど、また婚約したの」
「いつの間に?」
「いつの間にかよ」
「相手は誰だよ」
「私が会いに行くつもりだった私の師匠よ。私が旅に出た後に連絡が来たらしいの。アトミスお姉様を送った後に、会って来たわ」
「それで遅くなったのか」
「迷惑をかけてごめんなさい」
「いいけどさ。辞めろって言われなかった?」
「言われたわ。でも、人員不足で辞められないわ」
「・・・・・・そうか」
アハトは考えるように、黙った。




