表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢になるのも面倒なので冒険に出かけます(仮)  作者: 綾月百花
3   魔物の森
29/121

11   14歳のお誕生日(2)


 食後、リリーは騎士団の制服のままで、アトミスを待った。アトミスは美しい洋服を着ていた。薄化粧をして、白い靴を履いていた。いつもの制服姿とは全くイメージが違う。まさに美しい令嬢だ。

「リリーお願いね」

「上空を飛びますから、落とし物には気をつけてくださいね」

「ええ、わかったわ」

アトミスは小さな鞄を左手に持っている。

「手を繋ぎましょう」

「・・・・・・はい」

 リリーの手にアドミスの手が繋がれ握ってきた。

 リリーが集中して、気を高めていくと、アトミスの体が浮き上がっていく。そのままリリーも浮き上がっていく。

 アハトやワポル、フィジも見ている。

「行ってきます」

「いっといで」

 リリーが三人に言うと、三人が仲良く声を揃えて答えた。一気に上空に飛び上がった。

「すごいわ、リリー」

「手を離さないでね」

「わかったわ」 

 朝の景色は美しく、王都まで見渡せる。

「どこかしら?」

「我が家が見えるわ」

「近くかしら?」

「街の中に屋根が青で丸い温室がある家、わかるかしら?」

「わかりました。この際、家まで送りますね」

 リリーはストームかけて、スピードを上げる。

「すごいわ。リリー」

「落とされないでくださいな」

 あっという間に、アトミスの家の庭に降りた。

 庭が広くて、立派な建物だ。さすが伯爵家である。

「素敵なお屋敷ですね」

「お茶でもいかが?」

「嬉しいお誘いですけど、帰らなくてはいけませんわ」

「・・・・・・そうね」

 リリーは微笑んで上空に上がっていく。手を振り、勢いよく飛んで行く。

「王都まではそんなに遠くはないのね」

 胸の笛に触れる。

 今吹いたら会えるかしら?

 笛を吹こうか迷っていると、

「リリー」

 すごいスピードで飛んでくる人がいた。

「ビエント様・・・・・・」

「ずいぶん久しぶりだ。父上から手紙をいただいたが、なかなか会いに行けなくて申し訳ない」

「今、私は魔物の森の騎士団に入っています。今日はお友達を家まで送りに来たのです。笛は危険な場所なので吹けません」

 リリーは首にさげている笛を握った。

「少し話をしたい。下に降りないか?」

「・・・・・・はい」

 ビエントの手がリリーの両手を掴んでいる。

 くるくる回るように、公園へと降りていく。

 ビエントはリリーと手を繋いだまま、公園のベンチに座った。

「私はリリーに婚約者になってほしいとリリーの父上に手紙を書いた」

「・・・・・・え? 誠ですか?」

「リリーからの笛の音を待っていたが、どんなに待っていても、笛の音はしなかった・・・・・・」

「私、ビエント様に会いたくて、家出をしたんです。笛を吹いて来ていただくのではなくて、自分の足でビエント様に会いに行こうとして。けれど、私は未熟者でした。魔術も中途半端で魔物の森で傷を負い、光魔術師のお姉様に治していただいたんです。もっと強くならなくてはと思いました。今、修行中なんです」

「傷は治ったのか?」

「はい、それは綺麗に治りましたわ」

「それでリリー、返事を訊かせてはくれないか?」

 リリーは首を傾ける。

「私はリリーに正式に婚約者になって欲しい」

「本気ですか?隣国の伯爵令嬢ですよ?この国の伯爵令嬢ならお力になれるかもしれませんが・・・・・・」

「何もなくても、リリーを好きになった」

「承ってもいいのでしょうか?私もビエント様をお慕いしておりますの」

「危険な騎士団から抜けはくれないか?」

「パーティーメンバーに迷惑をかけてしまいますわ。私も騎士団の一人で責任を持たされていますので・・・・・・」

 リリーは婚約してもらえて嬉しかったが、騎士団を辞めることはできない。

「私が抜けたら、パーティーは四人になり、危険になりますの」

「リリーが入る前までは四人パーティーだったのだろう」

「それはそうですけど・・・・・・」

 ビエントはリリーを抱きしめる。

 ウエストに入っているポーションが、二人の間で触れる。

「ポーションを飲んだことはあるのか?」

「いいえ。光魔術師のお姉様がいらしているので」

「安全なのだな?」

「おそらくは、大丈夫だと思います」

「わかった。騎士団にいてもいい。笛を吹いてくれ。これは婚約の約束の笛だ」

「危険な場所なの」

「危険な場所でもリリーに会いたい。こうして王都まで来られるなら、リリーが王都まで来てくれてもいい」

「睡眠時間がなくなってしまいます」

「わずかな時間でも会いたい」

「休暇がもらえたら、会いに来ます」

「そうしてくれるか?」

「はい」

「リリー今日は誕生日だな。おめでとう。やっと14歳だ」

「ありがとうございます。やっと14歳です」

 頬にキスをされて、拘束を解かれた。

「寄宿舎まで送ろう」

「いいのですか?」

「どれほど、飛行が上手くなったのか見てみたい」

「さすが師匠です。どうぞ見てくださいな」

 リリーはビエントと手を繋ぎ、一気に上空に上がった。

「それでは行きますよ」

 リリーはトルネードを出し、飛行を早くするが、その手を引かれた。

「ゆっくり戻ろう。デートだ」

「・・・・・・はい」

「飛行は上達したな」

「ありがとうございます」

 二人は手を繋ぎ、ゆっくり飛んだ。



 寄宿舎に着いて、ビエントはリリーの頬にもう一度キスをすると、手を離した。

「ゆっくり眠りなさい」

「おやすみなさい」

「おやすみ」

 ビエントは上空に上がった。

「さあ、寄宿舎に入りなさい。危険だ」

「はい」

 リリーはビエントに手を振り、寄宿舎の中に入った。

 窓から上空を見ると、ビエントはまだ寄宿舎の上空にいたが、しばらくしたら飛んで行った。



 リリーは部屋に戻り、制服を脱いでお風呂に入った。

 頬が緩む。ビエント様と婚約できていると知って、リリーは嬉しかった。

 時計を見ると、もうお昼近かった。

 早く眠らなくては・・・・・・。アトミスの目覚まし時計を借りてセットをする。

 布団に入ってアイマスクをすると、すぐに眠りに落ちた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ