7 手紙
「旦那様、リリーお嬢様からお手紙が届きました」
モリーが慌てて応接室に入って来た。
「リリーからなの?」
「はい、奥様。今度は手紙です」
父親のスパーダは封筒をペパーナイフで開けると、1枚の便箋を取り出した。
『お父様、お母様、お兄様、そして我が家の皆様達へ
突然黙って家を出て、申し訳ありませんでした。私は今、アストラべー王国の国境付近にある、魔物を退治する為の騎士団寄宿舎におります。隠していて申し訳ありませんでしたが、大分前から風魔術をビエント・アネモス・アストラべー様より教えを乞い、修行しておりました。今回の婚約破棄を契機に、ビエント様の元で本格的に指導をお願いしようと決意しました。ですが途中で、まだまだ自分の風魔術が未熟だという事に気付きました。偶然居合わせたアストラベー国の騎士団の方々に誘われ、この国の魔物を退治して風魔術を極めたいと思います。
とても危険を伴うので家族には必ず居場所だけは知らせておくように、寄宿舎の担当者と、騎士団の仲間に言われましたの。今の居場所はお知らせしましたが、とても危険な場所なので、会いには来ないでください。愛する家族や、知っている誰かが傷ついたり、最悪亡くなることは望んではおりません。
お叱りは、生きて帰れたときに、しっかり聞きますので、どうぞお許しください。
食事はとても美味しいです。安心してください。
お父様、あまり怒って血圧を上げないでください。お母様、心配しすぎて胸を傷めないでください。お兄様、至らぬ私になり代わり、どうかお父様とお母様をお守りください。落ち着いたらまた手紙を書きます。
皆様を愛してやまないリリーより』
「なんて危険な場所にいるんだ」
スパーダは手紙を握り締め、頭を抱える。
母も堪えきれず泣いている。
「……父上、リリーの手紙をもう一度見せて下さい」
ハスタはリリーの手紙を読み返す。
「父上、この手紙に書かれている、ビエント・アネモス・アストラべー様というのは、今回リリーに婚約を申し込んできた方ではありませんか?」
スパーダは顔を上げると、応接室から書斎に走り、婚約申込の書類を持ってきた。
「ハスタ、確かに同じ名前だ。リリーはビエント様に風魔術を習っていたのだったな」
「父上、ビエント様にリリーの事を伝えましょう。救ってくださるかもしれません。リリーはビエント様に会いに行くつもりだった。その途中で騎士団に入ってしまった。何かあって、騎士団に入ったのかもしれません」
「うむ、すぐにビエント様に手紙を出そう」
スパーダはリリーからの手紙を持ち、書斎に駆け込んで行く。
読んでくださりありがとうございます。
毎日、文章を指摘し下さりありがとうございます。些細なミスまであり、自分の未熟さを痛感しています。文章の細やかな言い回しは勉強になります。ありがとうございます。




