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8   シオン(2)


 最後にアハトの家の荷物を入れて、アハトの家族を乗せると、この山の住人はいなくなった。アハトの家の前に下ろして、大きな窓があったから、荷物を家の中に下ろした。


「リリー、ありがとう。山の住人は魔物を恐れて逃げた人たちなんだ。家族が襲われたり、傷ついたりした者が多くて、魔物退治で稼いだお金を貸し付けて、みんなでここに降りてきたんだ。これからは魔術を上手く使って働いていくよ」

「アハトは偉いわ。頑張って」

「今日は王子様を連れて来たのか?」

「街の様子を見ていただきたかったの。この計画を立てたのはビエント様ですもの」


 集まった街の人々が拍手をした。


「不自由はありませんか?」

「買い物先が遠いですわ。以前より近いですけれど」

「子供が遊ぶ公園が欲しいですわ」

「考えよう」


 ビエントは国民の前で、答えた。


「リリー様、引っ越しの手伝いをありがとうございます。年寄りや子供もいたので助かりました」

「喜んでいただけで嬉しく思います。この先、素敵な生活を送れますようにお祈りします」


 リリーは頭を下げた。


「殿下もありがとうございます」

「どうぞお幸せに暮らしてください」


 ビエントも頭を下げた。

 国民の笑顔を見て、ビエントは満足していた。今までの苦労が報われていく。


「では、皆さん、山に忘れ物はありませんか?」

「ありません」


 大声が返って来て、リリーは微笑んだ。


「私はこの乗り物を戻しに行きますが、何か用があるときは、アハトに伝えてください」


 アハトが手を振っている。


「皆さん、お元気で」


 リリーは二つの乗り物を軽々持ち上げて、上空まで上がった。ビエントも一緒に上がって、二人で北の寄宿舎まで戻り、乗り物を片付け始めた。


「どうでしたか?」

「街に活気があったな。公園と買い物する場所か。空き地を利用して作るか」

「髪を切ったりする美容院やクリーニング店や床屋でしたっけ?幼稚園や学校も必要だと思います」

「なるほど。宮殿に帰ったら、一緒に考えてくれるか?」

「はい。私でよければ」


 乗り物をふたつ綺麗に並べて、ビエントはリリーの手を繋いで空を飛んだ。






 その頃、シオンが捕らわれている檻の中で、シオンは椅子に座らされ、目の前に国王が立っていた。


「死ななかったのか。やはり俺の魔術が弱いのか?」


 今回は側近の二人も一緒に牢に入って、国王を守るように立っている。


「誰に攻撃したんだ?」

「父だ。父で国王陛下だ」

「分かっているのだな」


 国王はコップいっぱいの水をシオンの前に置いた。


「飲め」

「毒か?」

「ただの水だ」

「毒でもいいよ」


 シオンはその無色透明な液体を飲み干した。

 食事も水も与えられていなかった体に染み渡る。

 シオンは鼻で嗤って、目を閉じた。




 シオンの亡骸は、棺に入れられホールの片隅に置かれた。

 国王は棺の前に座り、穏やかな顔をしている息子の顔を撫でる。

「どこで間違ったのか、情けない父だ」


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