6 村人の引っ越し
「ビエント様、今日、アハト達を送っていったのですけど、山から街に引っ越しをする方が多いらしくて、引っ越しが大変らしいのですの。お手伝いをしたいと思いますがいいでしょうか?」
「あの山岳地帯から、引っ越しをするのは大変だろう。リリーが体調を崩さなければ、手伝ってあげなさい」
「ありがとうございます」
リリーは嬉しそうに微笑んだ。
「人の役にたてることが嬉しいんですの。せっかく特殊な魔術を使えるのでお手伝いしたかったの」
ビエントは微笑む。
リリーらしい。
「コートを着なさい。山は冷える。体を壊したらいけないからね」
「分かりましたわ」
リリーは翌日から、運搬を開始した。
ワボルもフィジの家の荷物が入れられた乗り物に、家族が乗るといっぱいになる。危ないので荷物の上に座ってもらった。ワボルもフィジも弟や妹がいた。家まで送ると、降りてもらって、荷物を空いた場所に移動させる。
「ありがとう」
「いいえ。片付け頑張ってくださいね」
フィジの家は野原になっているところに家が建っていた。
「これから、この土地を耕すんだ。好きなように土魔法が使える」
「楽しみですわ」
「金貨は山ほどあるから土地を増やしてもいいかと考えているんだ。野菜や果物ができたら食べてくれるか?」
「勿論ですわ」
「今日はありがとう」
「片付け頑張ってくださいね」
リリーは手を振ると、また山に登った。
準備ができた家には目印にタオルを巻き付けた棒を立ててもらっている。
「お待たせしました」
「お願いします」
魔術で荷物を乗り物に乗せて、乗り物に乗ってもらうと次の場所に移り、荷物を乗り物に載せて、家族が乗り込む。
「危ないので、座っていてくださいね」
家の場所を聞いて、飛んで行く。
お昼までに4件終わらせ、王宮に戻り、昼食を食べる。
「お腹が空きましたわ」
「あまり頑張りすぎるなよ」
「はぁい」
コートを脱ぎ、手に持っていると、使用人がコートをハンガーに掛けてくれる。
ダイニングには既に国王陛下が座って待っている。
「お待たせしてすみません」
「いや、早めに来ているだけだ」
「父上は、食事の時間が楽しみらしい。時間が近くなると、仕事を辞めてしまうんだ」
リリーは微笑んだ。
三人で「いただきます」をして、運ばれてきた昼食を食べる。食後にオレンジジュースを置いてくれるようになった。なかなかおかわりを言い出せないリリーのために、テーブルにパンを置いてくれた。トングを使いパンを取ることができるようになった。
「リリーは葡萄パンが好きなのか?」
「はい。葡萄が好きなんです。父が経営している果実園では葡萄がたくさん採れますから。季節になると、葡萄ジュースばかり飲みますし、葡萄をよく食べますの。ワインも自家製だったのですよ」
「父上はいろんな事業をしていたのだな」
「はい。支配人を雇い。雇用もたくさんしています。オレンジ園やりんご園や穀物の畑も持っていたので、いつも食べるものには恵まれていました」
「父上、聞きましたか。リリーのお父様は働き者ですよ。父上も見習って欲しいですね」
「最近、耳の調子が悪いようだ」
国王はのんびり、食後のお茶を飲んでいる。
食後のお茶を飲むと、3人はダイニングを出て行く。リリーはまたコートを着た。
「行ってきます」
「気をつけるんだよ」
「はぁい」
「リリー無理をしては駄目だよ」
「はぁい」
国王とビエントに頭を下げると。リリーは元気に駆けていった。