6 鉱山
四日仕事に出て、三日休みを取りリリーの家に戻っているビエントは、いつものチョコレート店で期間限定のチョコレートの詰め合わせを買い、空を飛んでリリーの元に帰ってきた。
「お帰りなさい」
「ただいま」
通い夫になっている。二人の左手薬指にはお揃いの指輪をはめて、お揃いの笛のネックレスをはめている。
リリーを愛しげに抱きしめて、リリーの体の具合を案じる。
「体はどうだい?」
「お医者様は、もう大丈夫だと言って下さいました。肺の音も正常に戻ったと言われました」
「それは良かった」
ビエントはスーツのポケットからいつもより大きめなチョコレートの箱を取り出してリリーに渡す。
「ありがとう」
「期間限定の品らしい。新商品も入っていると言っていた」
「まあ。嬉しいですわ」
使用人がビエントの荷物を部屋へ運び、他の使用人がお茶を淹れに行く。
「こちらのお部屋にいらして」
家族が集まる応接室に入って、リリーはビエントの横に座る。
「顔色も良くなった。このまま春になったら、王宮に戻るか?」
「でも、王妃様が反対されているのに、戻って大丈夫かしら?」
「国王は応援してくれている」
「そうなのですか?」
「一度挨拶に来たいと言っていた」
「国王様がうちにいらっしゃるの?」
「ああ、そうだ」
使用人が紅茶を並べて、部屋を出て行った。
ビエントがリリーの手からチョコレートの詰め合わせを取ると、リボンを解き、宝箱のようなチョコレートの箱を広げた。
「まあ、とても綺麗ですわ」
「新しいチョコレートは教えなくても、どれだか分かるだろう」
「ええ、分かるわ」
「さあ、お食べ」
「いただきます」
新作のチョコレートを口に入れた時、ビエントは、リリーを抱きしめた。
「どうなさったの?」
「リリーの予想は当たっていた。ダンジョンを掘り進めたら金が見つかった。立派な鉱山だ。
「まあ、すごいわ」
「リリーのお陰で、鉱山が二つも見つかった。ありがとう」
「私は想像で話しただけだわ」
「リリーの勘は優れている。我が国の宝だ」
リリーは微笑んだ。
「大袈裟ですわ」
「大袈裟なものか。山間部から住人が降りてきて、街に人が住みだした。いいことずくめだ」
「ビエント様の努力のたまものですわ」
街の進展の話をしながら、二人は仲良くチョコレートを食べた。