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悪役令嬢になるのも面倒なので冒険に出かけます(仮)  作者: 綾月百花
11   ままごとのような時間
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4   リリーのために


 ビエントはリリーに会うために、猛烈な勢いで仕事を始めた。帰宅した夜から溜まった書類に目を通し、解決策を書き込んでいった。翌日の議会では、止まっていた時間が猛烈な速さで動き出した。指示を出された議員には、期日を決めて動き出してもらった。溜まっていた書類は三日もしないうちに指示が出され、後は期日まで待つだけだ。


 ビエントが勧めていた道路工事の指示も出され、土地が売り出された。魔物を恐れて山岳地帯に逃げ出した国民に、魔物はもう出ない事を知らせ、土地の分譲や建て売りの案内をさせるように指示を出した。王都の周りや西の街に住宅街が並び、予想図では、美しい町並みになるように宣伝させた。西の街には工場地帯も完成しているので、働き口はあるだろう。西の街の外れには農場を作るように土地を売り出した。土魔法を使える者が魔術を使い生活できるだろう。


 騎士団への勲章は、時期も過ぎてしまったので1周期を期日にした。金でできたメダルを造り、首からさげるデザインを提案して、魔法学校の生徒には金のタイピンにした。国民にデザインの公募をした。公募なら平等に参加できる。集まったデザインを議会にかけて、決定させればいい。騎士団と魔法学校の生徒とは別のデザインで、大きさも違う。それくらい騎士団は国に貢献してきた。殉死者にも贈るように指示を出した。リリーが言っていた。人食いコウモリの亡骸の話を思い出したら、残された家族は、さぞかし悲しんだだろうと思えた。ならば、殉死者も称えなければ浮かばれないだろう。


 ビエントは四日目にリリーの家に戻った。


「お帰りなさい」

「ただいま」


 通い夫だ。

 ビエントは会えなかった時間を埋めるように、リリーを抱きしめる。


「ビエント様のお食事を増やすようにシェフにお願いしてください」

「畏まりました」


 使用人がキッチンに入って行く。


「お荷物をお部屋に運んでおきます」


 ビエントのスーツケースを使用人が運んで行く。


「お茶を淹れますので、どうぞ応接室に」

「お願いします」


 リリーは家族が寛ぐ応接室にビエントを誘う。


「チョコレートをお土産に買ってきたんだ。一緒に食べよう」


 上着のポケットから、リリーの好きなお店のチョコレートを出して、リリーに差し出した。


「ありがとう」

「体の具合はどう?」

「お医者様は暖かい部屋で、ゆっくりしていれば良くなっていくだろうと言っていましたわ」

「そうか」

「国王様は大丈夫でしたか?」

「不抜けておった。仕事をすべて押しつけてきた。まったく、あれで国王とよく言う」

「お疲れなのかもしれませんね」


 使用人が紅茶を持ってきてくれた。

 最近では、リリーの紅茶には蜂蜜が入れられ、甘い紅茶を飲んでいる。

 まだ時々咳き込むリリーは、家の中で過ごしている。

 滅多に外には出ていない。


「この間、ダンジョンはどうしてできたんだろう?とビエント様が言っていたことを考えていました。私、鉱山に入った事がありますの。今、思い浮かべると、ダンジョンの造りは、金鉱山の造りによく似ていたと思い出したのです。どうして、そこに魔物がいたのかは分かりませんが、金貨に変わる魔物のボスは金でできていたのかもしれないかなと、幼い考えかもしれませんけれど。ダンジョンの奥を調べると、意外と金鉱だったりするかもしれないですよ」

「それは勘かな?」

「はい。ただの勘ですわ。大きな洞窟に小部屋のような洞窟が幾つもあって、その中に魔物がいましたもの。金を掘り出すときと同じだと思ったのですわ」

「調査員を出してみよう」

「ただの勘ですわよ」

「リリーは実際のダンジョンを見てきている。そう感じたのなら、その可能性は0ではない」

「無駄かもしれないですのよ?」

「調査員は仕事がもらえる。経済はまわる」


 リリーは微笑んで、大好物のチョコレートをひとつ摘まんだ。


「美味しいですわ」


 微笑みが笑みに変わる。

 その笑みを見て、ビエントも笑みを浮かべた。


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