14 皇太子をなくした王国
「国王様、マスコミがリリー様の行方を捜しています。婚約者のビエント様に会いたいと、日々、何度も訪ねてきます。ダンジョンの攻略が終わり、英雄に勲章を渡さないのかと国民が不満を抱いています」
「勲章は贈ろう。勲章を作成してくれ」
「どのような勲章を作りますか?デザインと一つ当たりの費用など、決めていただけなければ作れません。魔法学校の生徒と騎士団は同じ勲章を贈るのでしょうか?騎士団は魔物の森での討伐を長年続けております。魔法学園の生徒は、大多数が怪我をして、本格的に倒したのは騎士団の者だと聞いていますが」
「ビエントにさせろ」
「ビエント様はこの国にはいません」
国王の側近のリュートは、国王にきつく言い放った。
王妃がビエント殿下とリリー嬢の婚約破棄をさせる作戦を考えていたのは知っている。あまりにも酷い仕打ちに、リュートは近くで聞いていて、王妃の意地悪さに背筋が冷たくなったものだ。
騎士団が解散した直後、リリー嬢の部屋の空調を壊し、ビエント様のスケジュールを変更し、リリー嬢と出会えないように仕組み、食事も自分たちが食べた後に一人で食べさせていた。厨房で働く者に厨房で言葉を発することを禁じ、リリーに話しかけることも禁止した。リリー嬢が孤独に陥り実家に帰ったのを見て、すぐにパーティーを開催した。次の婚約者は、よりにもよって、シオン殿下の元婚約者で、リリー嬢の親友と言ってもいいほど仲の良いアトミス嬢・・・・・・。
隣国のリリー嬢は13歳で騎士団に入ったという。それ以来、大人と混ざり魔物の森で魔物を倒し、ダンジョンでは大活躍をしたという。我が子が可愛いのは分かるが、シオン殿下が無茶をしたときも、リリー嬢を責め立てる様子。ダンジョン攻略の功績も称えず、リリー嬢は落胆した顔をしていた。国王も王妃の言いなりで、情けがない。
国王とは魔法学校からの付き合いだが、王妃と結婚してから王妃の尻に敷かれ、我が儘な王妃の言いなりだ。「嫁と姑の確執は深いのだ」と言葉にして、ビエント様の婚約者をアトミス嬢にしてもいいと許可を出された。
我が主であるが、情けない。その結果、陛下は皇太子に育てたビエント王子をなくしてしまった。
ビエント殿下が宮殿を出てからは、気力もなくし議会も欠席している。国の何もかもが進まない。ビエント殿下が続けてきた、国の道路の舗装工事も途切れたままで、企業が指示を待っている。
このままでは、アストラべー王国は潰れてしまうだろう。国王は既にビエント王子に国政をさせていたのだ。ビエント王子がいなければ、事が進んでいかない。
なんとしても、ビエント様を宥め、帰国していただけますようにお願いしなくては、今の国王は飾りの国王と変わりない。
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