13 ビエントとリリー
リリーの高熱は長く続き、肺炎を起こし生死を彷徨った。ようやく起きられるのに1ヶ月を要した。
「ビエント様、婚約の笛はお返ししたはずです」
「私は婚約破棄を受け入れてはいない。まだ婚約者だ」
「でも、王妃様が私では駄目だと・・・・・・」
激しく咳き込み、リリーは苦しそうに胸を押さえた。
「無理に話さなくていい。無理がたたったんだ。今は安静にしていなさい」
リリーは頷いて、ベッドに横になる。確かに、13歳で家出をしてから、ずっと緊張して暮らしてきた。ダンジョンが崩壊し、騎士団が解散した後は、王宮は寒く、寂しくて、家に帰りたいと思えるほど孤独で。
疲れていた体を休めるためには、部屋は寒すぎて、着る物も寒くて、体が不調になっていった気がする。
ビエントと過ごすために頑張ってきたのに、ビエントとは夜、少し会うだけしかできず、なんのために頑張ってきたのか、分からなくなっていた。
ビエントはリリーが意識を取り戻した時から、ずっと側にいてくれる。
話では、リリーが倒れた時には、既にこの家に来ていたと母が教えてくれた。
「お仕事、大丈夫なのですか?」
「国を出てきた。このまま、この国で暮らしても構わない」
「でも、皇太子ですよね?」
「いざとなったら、シオンが継ぐだろう。今も国民に優しい国ではない。シオンが国を崩壊させても、自業自得だろう。国を良くするために務めてきたが、腹黒い母に嫌気が差した。父もそんな母を止められず、自由にさせている。なんと情けないか」
ビエントはリリーの手を握る。
「この国では、どんな仕事をしようか?」
「本気なのなのですか?」
「リリーが寂しい思いをしないようにしたい」
「・・・・・・ビエント様」
「さあ、少し眠りなさい。またぶり返したら大変だ」
「・・・・・・はい」
リリーは目を閉じた。