第陸怪 いざ挑め身体測定!(下)
最後の課題は禁断のあれである。
男からすればどうってことないが、女子にとっては地獄の・・・
「いやぁぁ!体重増えとるがな!」
「ちょ、見ないで!?」
そう、体重測定である。
しかし、ポンコツ教師こと安倍月猫先生は図ることがないためにパイプ椅子に座って優雅にお茶を飲んでいた。
「先生せこい!」
「先生も測りなよ!」
「何言ってるんですか。私は教師なんですから、測る義務はないんですよ」
どうやら勝ち誇った気でいる様子。
「人間界ならばこの時期は死ぬ気で町内走ってましたけど、今は教師という権力に守られてますからね」
「何言ってるんですか安倍先生。私達も今から身長とバスト・ウエスト・ヒップと体重を測るんですよ?」
「・・・え?ちょ、嘘ですよね獏先生。嘘だと言ってください」
夢を食う妖怪 獏の獏先生は優雅な雰囲気を一瞬でぶち壊しているようだった。
しかも、生徒では決してしないバスト・ウエスト・ヒップを測るのだとか。
「・・・ぶっ」
「先生どんまいね」
「あ、私十九歳なので先生では無いのでどうぞやっていてください。じゃ、体重を・・・」
そのとき、襟元に強い何かの負荷がかかっていた。
「なにあんただけ逃げようとしとんのや?アンタの首にかかっとるその名札はなんや」
「名札?なんのことでしょうか・・・」
「あのポンコツ教師が反論してる・・・」
「いや、あと数秒で土下座するにかけるわ」
しかし、意地でも月猫先生は足を動かしていなかった。
「・・・だって、最近動かなかったので・・・ぶよぶよに・・・」
「大丈夫や、先生。・・・あんたは若いんやから、私たちよりは可愛いもんやで!!」
「嫌だァァ!」
結局、測定後に出された紙を見て月猫先生はムンクの叫びのような顔をしていたのだとか。
その紙を不意に見えてしまった蛍火さんもまた、ムンクの叫びのような表情をしていたのだとか。
「蛍火ちゃん太った?」
「・・・先生って、意外にナイスバディなのよ水蛇ちゃん。見ちゃったのよその数値を・・・そして一瞬で想像できてしまった体型。
いぎゃぁぁぁ!殺してやる!」
「ちょ、やめろって!」
全てを終えた教室では、凄い落ち込んだ空気が漂っていた。
「俺らは別にどうでもいいけどよ、女子が凄いよな」
「身体測定に命かけてるからそーなるんだろ」
「先生、男子殺していいですか」
「・・・許そ、」
「あ?」
「すみませんでした!殺さないで!?」
やはり女子にとっては身体測定は嫌なものらしい。当初の予防接種など頭から抜け落ちてるレベルである。
「あ、安倍先生話があるのでちょっと来ていただいても?」
「?くだん先生どうかしたんですか?」
扉を微妙に開けてちょいちょいと合図しているくだん先生に気付く月猫先生。
全員がそれに気づいて何かなにかと考えていた。
「先生、どうかしましたか?」
「実は、今度転入生が来ることになったんですけど・・・」
「そのあとは聞きたくないですよ私」
「このクラスなんですよ」
「お構い無し!?え、新米兼未成年の私のクラスに!?学園長お疲れですね!?」
転入生。もしも問題児だったならばどうしよう。虐められて殺されかけたらどうしよう。
一気に月猫先生は沈んでいった。
見るに堪えないくだん先生は額に指を添えてため息をついていた。
「僕もあなたが担任だなんて心配でたまりませんよ」
「そこは励ましましょうよ」
「ですが、今回の転入生はなんとですね、厄病神と先生とは別の座敷童子の子供でしてね、あまり不都合はありませんよ」
厄病神と座敷童子の子供。
不幸の妖怪と幸福の妖怪の子供・・・
月猫先生は一気に調子を取り戻していた。
「能力は打ち消されてしまってるみたいですし、害はないそうです」
「でも、なぜここに?」
「実は、その二つの能力が打ち消された代わりに、新たな能力を手に入れたらしく・・・その能力は神を弱める能力だそうです。」
それ、自分ヤバない?
今までよりも顔を真っ青にさせる月猫先生にくだん先生は余計に不安を覚えていた。
「学園長曰く、この教室に馴染めば必ずコントロールが効くようになるから、だそうです」
「コントロール出来ない!?それ以前に自分教師生命が絶たれますよ!?休みください!」
「馬鹿なの?ダメですよ。今度からなのでそれまでに心の準備を整えておいてください」
そのまま、くだん先生は去っていってしまった。
残された月猫先生は死んだような顔をして教室に戻って椅子を取り出して『雷獣』雷伝さんの前に設置して顔を毛に埋めていた。
その一連の動作が滑らかすぎて、全員が何があったと思うまで少し時間がかかっていた。
「・・・あぁ、ふわふわ・・・」
「ど、どうしたの月猫ちゃん」
「・・・うう、半神殺しの転入生がくるんだって・・・私死んじゃう」
その発言に全員が驚愕していた。
「か、神殺し!?」
「なんか、座敷童子と厄病神のハーフで、化学反応で神を弱らせる能力持ち主がくるんだって・・・うう、これでヤンキーだったら私消えてるよ」
教師が愚痴ってどうすると思うが、そういえばまだ未成年だったな、とつくづく実感させられるクラスメイトたちだった。
すると、扉が開かれる音がした。
「ほら、元気だせって安倍先生。俺の取っておきの酒だぜ」
「未成年って飲めないよ先生」
「げ、そうだった・・・忘れてた・・・」
「みんなして老け顔って言いたいのか!?うう!嫌だァ!酒呑童子先生、担任変わってぇぇぇ!」
「はぁ!?こんな問題児クラスの担任とか・・・そ、そうだよ!お前にしかできないことだろ!?」
何が始まったんだと、一瞬で切り替えられる生徒たちの心。
月猫先生は涙を拭いながら酒呑童子先生に目を向けていた。
「新しいやつがどんなやつだろうが、天邪鬼のやつに比べたらやわだろ!な!?」
「・・・た、確かに」
「納得すんな!!ポンコツ教師が!」
しかし、この茶番のおかげで月猫先生は元気を取り戻してい様子だった。
それに全員はほっとする部分もあったのだった。
「・・・先生そろそろ人型に戻っていい?」
「あ、ごめんなさい」