第壱怪 選ばれたのは未成年でした。
時すでに遅し。
この言葉を今すぐに消滅させてやりたかった。
「先生なんで教卓を盾にしてるのさ!」
「私は妖怪恐怖症なんだよ!!」
私、安倍 月猫はかの陰陽師 安倍晴明(男)と月読尊(女)を両親に持つという完全神信仰一家で、対称的である妖怪にはとてつもなく嫌悪感が発動してしまう体質が出来上がってしまった。
この体質は恐らく父の遺伝であろう。私自身が騙されてここに来てることが父にバレれば確実に本家総出で攻めに来る。マジであのジジイはやりかねない。
母はまだ優しい。そもそも夜の神であるために妖怪に関しては理解はあるし、うちの家で数少ない常識人である。だが、問題点は母のぶっ壊れ性能。性能なんて言ったら最悪かと思われるが、その能力値は明らかにぶっ壊れている。
そんな夫婦の子供である私は、何故か能力が全く発動しなかった。そのために本家の人間たちは私に過保護なのだ。
「とはいっても、神化は可能なんだけど・・・」
「先生!生徒から助けが来たんですけど・・・ってなにやってんの!?担任だろ!」
「いててて!引っ張らないで酒呑童子先生!私は騙されたんです!気づいたらここに居たんです!」
「うっさいわ!」
何たる理不尽。
「これぞ生きとし生けるものの縦社会運命・・・」
「先生・・・どんまい!」
目の前のチビ助は星を飛ばしてきやがった。
あれ、泣いていい?ここ、妖怪だらけなんだけど。一部だけの可能性信じたんだけどさ、気配が妖怪だらけなんだけど。
「酒呑童子せんせーい!担任が倒れましたー!」
「はぁ!?」
これが、教師歴一日目の安倍 月猫の初仕事であった。
「学園長!なぜ月読尊様と宿敵の安倍晴明の子供がここに・・・」
「いやぁ、彼女の健気な瞳が可愛すぎてつい・・・」
「ロリコンか」
ちなみに彼らの年齢は既に百を超えており、私の年齢は十九歳。つまり未成年である。
勉学?それはまぁ何とかなりそうだが、それどころの話ではない。
「先生、引きこもらないでくださいなぁ。教師歴二日目にしてブラックリストに載るとか嫌やろ?」
「・・・その発言を人間にして欲しかった・・・」
次の日、もちろん私はいつの間にか眠っていた部屋の布団に立て籠っていた。
人間の帰る道を教えて欲しい。切実な願いだ。
「はぁ、先生・・・諦めなはれや。」
「唐突!?な、なぜ!?」
「ここは地獄に一番近い場所なんやわ。人間との道はせいぜい夏のお盆程度。それ以外は開かれんのよ」
なら、なぜ私はここにいるのだろう。
連れてこられたのは昨日。まだ四月のはずだ。
「そうやね、学園長は『ぬらりひょん』っちゅう妖怪なんやわ。ぬらりひょんは牛頭馬頭がいる門の前でものらりくらり、相手を化かせる程の力があるんや」
「・・・牛頭馬頭って、あの?」
「そうやで」
そりゃあ、自分はお盆以外は逃げられないな・・・と、一瞬で悟った。
牛頭馬頭は聞いたことがある。てか父がよく言ってた。
「牛頭馬頭っていう見た目が牛な奴らに出くわしたら即刻逃げろ」
・・・と。
「・・・でも、私どうしても妖怪恐怖症で、ビビっちゃうんですよ?担任なんてしたら、チョーク投げられたり、机投げられたり・・・死にますって」
「担任に対してどんな認識しとるんや・・・生徒たちは優しい子ばかりや。そんなことはせぇへん」
「・・・本当、ですか?」
「本当や。未成年のまま連れてきたんはうちの配慮ミスやからわからん所は生徒に聞いたらええで」
ちなみに担任するのは二年生らしく、結構学校に詳しい子供ばかりなのだとか。ちなみに酒呑童子先生に関しては私がこっちに来たばかりで案内してくれた仲であり、今外にいる先生は座敷童子先生である。
「妖怪、苦手なのは・・・」
「そこは気合で何とかしいや」
「うぉぉ!?」
いきなり襖を開けられた月猫は驚きすぎてブリッジをしていた。
座敷童子先生はお構い無しに月猫を担ぐ。
「や、やっぱ無理!!殺さないでぇ!!」
「殺さんわ!」
泣き喚く先生を担ぎ教室にたどり着く座敷童子。
生徒たちは変な目を月猫に向けていた。
「座敷童子先生、その人・・・教師なんですか」
「なんか、未成年感が強い・・・」
「学園長がなぁ、十九歳の人間を連れてきてしもうたんやけど、まぁ仲良くしいや」
人間と聞いた瞬間、全員が何故か戦闘態勢に入っていた。
「こ、殺さないでぇぇ!」
「おら、泣くなや!あんた人間界戻っても子供に泣かされとるやろ!この前見たで?犬っころに泣かされとったの」
「見たの!?」
恐怖心から、暴露されたことへの羞恥心が勝った瞬間だった。
そして、全員の目が警戒心から軽蔑の目へと変わっていた。
「ひぃぃ!そんな目で見ないでぇ!」
「はい先生!」
「え、あ、え?私先生?十九歳だよ?」
「だから何度も言わせるなや!あんたは先生や!」
子供に働かせるとかどこのブラック企業だと思う月猫。だが、よく良く考えればここは妖怪の世界なので常識は通じないのだと何故か自己完結してしまっていた。
「・・・わ、わわ、私、安倍 月猫デス!先生、なんかやらされてるけど、十九歳なんですよね私!?優しくしてね!」
「後半やけくそになってるぞー」
「かわいー!」
「ひぃ!」
こうして、二日目は挨拶をして気絶して幕を閉じました。
・・・別の作品を作ってしまって申し訳ない・・・
言い訳を申しますと、ちょっと主人公と周りがワイワイしたやつを書きたくなってしまって・・・
もうひとつの方はこちらの熱が冷めたら投稿します・・・はい、すみません┏○┓