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なんで俺が異世界転移してるの?  作者: 特に何も考えてない
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5.魔力

本を取り、適当なページを開き、斜め読みをする。

今は、魔法に関する本を探して見ている。

しかし、これだ!と思える本は見つかっていない。


それもそのはずだ。

ルフラさんとの会話から察するに、この世界でも魔法の行使に詠唱や陣を使うのが一般的であることは想像に難くない。


魔力との調和に特出した進化を遂げた種族でなければ、魔力を思うように操るのは困難且つ、慣れるまで時間が掛かる。

だからこそ、詠唱という形で浅くとも広く、魔法が様々な人に扱えるように広がっているのも当然の事だ。


しかし、素質がある者にとって、基礎となる知識や、基盤となる始まりの部分は、自身の限界や成長性を決める重要なモノだ。

魔力を扱うには、より正しい知識を身に着け、幅広い認識を持つ事に尽きる。

やはり、本を読ませて教えるより、俺が直接見て指導した方がよさそうだ。


そう考えながら本を元の場所に戻す。


「この本もダメなの?」


俺の肩によじ登って本の内容を覗き見してたリアーナが聞いてきた。


「うん、やっぱり俺が直接教えた方が良さそうかな」

「じゃあ、明日からは、調べごとを夜にして、朝に魔法の勉強になるの?」

「うん、さっき話した通りにね」

「わかった、明日から魔法の勉強頑張る」

「それじゃあ少し早いけど、もう寝るか」

「うん!」





先日冒険者になったばかりの二人をコソコソと見ていた女性は、二人が図書館を出たのを確認すると、先ほどまで立ち読みしていた本を手に取り、見ていたと思われるページを素早く読む。


あの二人の会話は、遠かったから聞こえなかったけど、なんで魔法の事が書かれた本なんか読んでいたのかしら…?

彼の魔法技術なら、今更こんな初心者向けや子供向けの魔法の本を読む必要ないと思うのだけど。

かと言って、少女に読み聞かせる訳でもなく本棚に戻した。


何故…?

気になる…


「何をしているのですか?トレスティ殿」


急に声を掛けられて体がビクリッ!と跳ねる。


「きゅ、急に声を掛けないでください、ジープス館長。それと、私の事は家名ではなく、名前で呼んでくださいと言っているではないですか」


この、人が良さそうな壮年の男性は、此処共同図書館の館長を務めているジープス・オフィールだ。


「おぉ、すまなかったのルフラ殿。ところで、コソコソと他人の事を探るとは、関心しませぬぞ?」

「そう言われましても、これも仕事の一環ですので」

「アナタが似合わない事をしてまで、他の人を探るのは珍しい。そんなにあの青年と少女が気になるのですか?」

「…えぇ、あの二人は見ていて疑問に思う所が多いですから」

「そうですな、私もあの二人の噂は耳にしましたよ。初日からなりたて冒険者とは思えないほど稼いでいたと、それも武器も杖も持っていないのに」

「はい。更に試験官も簡単に気絶させてしまう程の強さ、魔法技術を持っておきながら、私もギルドマスターも名前に聞き覚えが無い。マークしておくべきなのは確かです」

「そういえば彼、『黒髪』でしたな」

「……勇者と関係があると言いたいのですか?」


勇者の特徴の1つ、黒髪。

別に普通の人で黒髪が居ない訳ではない。

しかし、勇者として召喚される方々は、その殆どが黒い髪をしていた。


「可能性の話ですぞ。もし仮に、国から逃亡してきた勇者が居て、彼はこの地に逃げるようにやってきた」

「それはもっとあり得ない話です」


勇者が召喚されるのは、信徒が管理している女神アルナを崇める女神像がある場所のみ。

この街にも彼の女神と男神を崇める教会はあり、信者から情報は各地へと流れていく。

もし、どこかの地で召喚された勇者が、この街に来たのなら、教会の者たちが動かない訳がない。

そのことは、この人も重々承知のはず。


「ハハハ、それもそうだの。付き合わせて悪かった。それでは、おやすみ」

「はい、おやすみなさい」


図書館から出て、渡り廊下を経由してギルドに戻る。

どうやら、あの二人はもう就寝した様子。

私も、ギルドマスターの様子を見てからおやすみしましょう。







次の日、酒場で食事を取っていると、なんだかギルド内が騒がしくなった。


「入口の方、なんかうるさいな」

「むぐ?」

「職員の人もドタバタしてる感じだし、何かあったのか?」

「わはんない」


リアーナは、食べる手を止める事無く、口に食べ物を入れたまま答える。

とりあえず、何かあったか聞きに行きたいから、残り少ないご飯を詰め込み、まだ食べているリアーナには、席で待ってるように言ってから様子を見に行く。


ある程度近づくと、会話内容が耳に届く。


「ホントかよ、本当に勇者が王都に召喚されたのかよ」

「マジだって。今朝、王都から来た商人が言ってたんだよ。こっち教会も勇者の受け入れ準備に取り掛かってたんだよ」

「なんでここの教会が準備なんかする必要あるんだ?」

「だから、さっき話してただろ。邪王があの森に現れるって予言があったって」

「え?俺が聞いた話だと、エルフの森の奥で魔王が現れるって予言だったぞ?」


といった会話が、ギルド内の冒険者を主軸に、どんどん広がっていく。


勇者、現れたんだ。

ていうか、話的に、こっちの街に来る感じか?

それに、邪王の話も魔王の話も上がっている。

勇者1人で手に負えるのか?

まぁ、邪王や魔王討伐は勇者様の仕事だから頑張ってもらわないと困るわな。





今は、昨日森に入った場所より少し北の平地に来ている。

ここなら、他冒険者や邪族の邪魔が入らなそうだ。


「それじゃあ早速始めようか」


腰を下ろして、向かい合う形でお勉強開始。


「先に確認するけど、リアーナは魔法について何か知ってる事とかあるかい?」

「えっと、お兄ちゃんに会う以前は、お母さんや他の大人の人が生活魔法って呼ばれる魔法を使ってるのは見たことある。たまにだけど…」

「その生活魔法を習った事は?」

「ないよ、学校で最後の年に魔法についての授業があって、その授業で生活魔法の実技をするはずだったの」

「じゃあ、魔法について殆ど知らないんだね?」


そう聞くとコクリと頷いた。

正直、下手に知識があるよりやりやすいので助かる。


「それじゃあさっそく、魔法について話していこうか」

「うん!」

「そもそも魔法って言うのは、魔力によって引き起こされた現象の総称なんだ」

「私が見えるヤツだよね」

「そうそう」


リアーナにわかりやすいように、手のひらの上に魔力を集めて火を起こして見せる。


「この一連の流れを魔法と呼ぶ。じゃあ、そもそもその魔法を起こすのに使われる魔力とは何なのかって話だけど」


俺は分かりやすい様に地面に図を描きながら説明する


「人や生き物には魂が宿っていて、この魂を構成するのが魔素と呼ばれる物なんだ。そして、この魔素は魔力で構成されており、更に魔力を生み出している」

「じゃあ、魔力の源は魂って事?」

「単的に言えばそうなるね。更に言うと、リアーナがリアーナたらしめているのが魂でもある。魂は意思そのものだからね」

「そうなんだ」

「うん。魔力が魔力を取り込むことで魔素となる、魔素が一定以上の魔力を取り込むことでその自我が強まり魂と呼ばれるものとなる。当然、魂を構成する魔素量が増えれば生み出す魔力も増えるし扱える魔力も増える」

「じゃあ、強くなるには魔素や魔力をいっぱい取り込めばいいの?」

「極端な話そうだね。でも、いきなり多すぎる量を取り込むと魂や体が持たないから、馴染ませながらじゃないと危ないよ。」

「うん、わかった」


リアーナは素直に笑顔で頷いた


「…さて、これで魔力の根本的な部分については以上だよ」

「ねぇ」

「うん?」

「魔法を習うのになんで今の話をしたの?」

「あぁ、これを知ってるか知ってないかで将来的に魔法の知識の間違いを起こさない為だよ。こういう根本的な部分を分かっていないと出来ない魔法ってのもあるし、リアーナの体は魔眼を持つ程に魔力との親和性が高いからね。正しい知識を付けて頑張れば、魔法が得意な種族にだって引けを取らなくなるよ」

「ホント?」

「もちろん、だから頑張ろうな」

「うん、ガンバル!」

「お昼まで少し時間があるし、魔法の練習を少ししようか」

「わーい」


ようやく魔法の練習に入れるからか、凄く嬉しそうだ。


「とは言っても、いきなり魔法を行使させる訳じゃないぞ?」

「え、そうなの?じゃあどうするの?」

「前も言ったが、リアーナには素質がある。だから、魔力自体を感じ取って自分の意思で操れる様に特訓するんだよ」


こうして、今日からリアーナの魔法の特訓が始まった。


その後、お昼頃には一度街に戻り、午後からは昨日と同様、採取と狩りを両方こなし昨日より少し多い成果で夜を迎えた。


魔石は昨日と同じでゴブリンの魔石は全部消費、ホブゴブリンの魔石は換金して貰い、所持金も1万Cを優に超えた。

それから、リアーナのレベルの方は、5(≠)となっていた。

そろそろゴブリンの魔石全投入では足りなくなるだろう、1レベルも増えなかったらその時はホブゴブリンのも消費するとしよう。





それから3日経ち、今日も採取と討伐をこなしていた。

リアーナの魔法勉強の方も極めて順調で、自身の魔力であればある程度は自分の意思で動かせれるようになった様だ。

実際に目で見える分、動かす事に慣れるのにそんなに時間は掛からなかった。

ただ、まだ魔法として発現させる方法は教えていないのでまだ魔法が使えるという訳ではない。

あくまでも魔法は、魔力が何かを象る時の事だからな。


レベルの方も三つ上がり、8(≦)になった。

魂が保有する魔素量が多ければ魔力の回復量も総量も向上する。

そろそろ魔法の方も次のステップに入っても良さそうだ。

座学もある程度教えたし、後は魔法を実際に使ってからでないと、よくわからない事が多い。

魔力操作の練習も、手持無沙汰の時は常に動かし、いち早く慣れようと頑張っている様子。


それから、先日買い物もした。

勿論買ったのは服だ。

リアーナのお伽話通りで有れば、勇者は十中八九日本人だ。

そんな勇者をこの街の教会は受け入れ準備をしていると冒険者は言っていたので、この街に来る前に俺が日本人だという証拠を手放しておきたかったのだ。

という訳でジャージは燃やして、今はこの街で買った古着を着ている。


そして、この3日間で変わったのはそれだけじゃない。


今もこうして森の奥側から近寄ってくる邪族を仕留めて、魔石やらを剥いでいる時もそうだが、あの効率の悪い安全な森入口付近で頑張って薬草採取をしていた子供達のグループ。彼らは、俺らが森に入っていくのを確認した後にこっそりと後ろを付いて歩き、俺たちが採取と討伐をしている後方で薬草採取をする様になった。


一応、バレない様にそして離れ過ぎないようにこちらを常に見ているだけの子供もいる様子。

それでも時々草木を揺らす音を立ててしまっているので、リアーナにさえも一日でバレていた。


ま、こうやってお零れを頂くだけなら別に怒る理由も無い為、見て見ぬ振りをしてあげる事にした。

事実、俺達がやってることは初日と変わらないし、居ようが居まいが同じように稼ぐだけなので問題ない。


それに、こうやって少しでも多くお金を稼げるようになった事で、朝食と夕飯時に見る彼らの食事が少し豪華になり、涙ぐみながら美味しそうに食べてるのを見ると止める気も失せる。

しかも、昼食時には見かけないから恐らく、朝と夜の2食しか食べれてないのだろう。


そんな子供らを横目に今日もいつもの場所でリアーナに魔法を教える為、平地へと赴く。





今日も仲間のみんなと手分けして薬草採取。

いつもは少ししか薬草が生えてない場所で集めていたけど、最近はいっぱい生えている場所まで行ってたくさん集めれるようになり、ご飯も前より少し多く食べれる余裕もできてきた。


でもその場所はお昼を過ぎてからじゃないと行けない、だからお昼前は前と同じように街の外壁が見える安全で開けた場所で集めている。


うー、あの兄ちゃんがお昼前も森に入ってくれればいいのになぁ。

なんでお昼前は森に入らず開けた場所で女の子と座って話してるだけなんだ?


数日前に突然やってきた見知らぬ兄ちゃん。

この街で冒険者になって最初に受ける試験。

その試験の試験官をしているドドラさんは厳しくも優しい人で、元Cランク冒険者なのだ。

ドドラさんは、元々僕らみたいに貧民街の出らしく、たまにご飯を奢ってくれたり稽古を付けてくれている。


そんなドドラさんを試験で気絶させてしまったあの兄ちゃんは、ランクもEから始まりドドラさんが医務室に運ばれるのを偶然見てしまった僕らはその晩、あの兄ちゃんの話題で持ち切りだった。

どっかの国の貴族様?もしくは元騎士?しかし見た感じは俺らと10歳も離れているように見えない。

だからか、黒髪という事もあって勇者じゃないかって思ってた子が多かった。

でもそれは僕らの勝手な想像で、結局何なのかは分かっていない。


そして次の日の夕食時、あの場に居た他の冒険者達の間でも話題になっていた。

理由は簡単、初仕事で多すぎるほどに稼いでいたからだ。

ただ、試験時にドドラさんを気絶させてた話も広まっていて、それなら納得という人が多かったようだ。


そんな兄ちゃんが午後に森へ入る際に僕たちはそれをこっそりと後を付いて歩き、あの二人が採取と討伐の仕事を同時にこなしている後方でバレない様に僕らも薬草を取っている。


最初はマナーがどうの、バレたらどうのと反対意見もあったが、僕たち子供は大人みたく、ドドラさんを気絶される実力者だからという理由であんなに稼げる事に納得が出来なかった。


もしかしたら何か特別な事をしているのでは?と思い、後を付ける事になった。

正直僕は、リーダーでもある年長のオズ兄と1、2歳しか離れていないと思われる。冒険者なりたての新人に稼ぎを独り占めされている感じがして面白くなかったのだ。


でも、後を付けたその日にそんな思いは簡単に吹き飛んだ。

あの兄ちゃんは薬草採取と邪族討伐を交互にこなしていた。

そんな簡単な事じゃない。


邪族は狡猾で特に、上位種が居る時はオオカミの様に賢く、待ち伏せや奇襲なんて当たり前のようにしてくる。

それなのに、邪族が姿を見せる前に何やら魔法を放って的確に倒している。

勇者かもって予想はもしかしたら間違ってないのかもしれない…。


ちなみに女の子の方は薬草の採取と邪族の死体から剥ぎ取りだけしかしておらず、僕たち同様、痩せている事もあって兄ちゃんの奴隷なのでは?と皆予想している。





…気が付くと、仲間たちから結構離れた場所まで来てしまった。

森の中に入ってる訳ではないから凄く危ないって訳ではないけど、姿が見当たらなければみんなに心配を掛けてしまう。

そう思って急いで戻ろうとして気が付いた。

いつの間にか兄ちゃんと奴隷の子がいつもいる場所近くまで来ており、二人が視界に入った。

遠巻きではいつも座ってる姿しか見なかったが、今は立っている。


何かするのかと思い、葉に身を隠し覗いてみていると、あの兄ちゃんが奴隷の子に何かを説明しながら魔法を出したり消したりしている。

その動作をじっと見つめ、その後に自分の手に視線を落とし何か集中している。

すると、奴隷の子の手のひらに水が出来て、パシャンと音を立てて地面に全て零れた。


魔法だ!あの子はあの兄ちゃんに魔法を教えてもらってたんだ!


衝撃的だった。僕ら貧民街の子たちが魔法使いになる事なんてなく、生活魔法すら習うことなく大人になるのが当たり前。

それを、あの奴隷の子はあの人に習う事で魔法を覚えたんだ!


その後も奴隷の子は何度か挑戦し、気が付けば水を地面に零す事なく手の平の上に浮かせたままにして見せ、更にそれを凍らせて見せた。

さっき兄ちゃんが繰り返しやって見せてた魔法を少し不格好ではあるがやってみせたのだ。


驚きで食い入るように見ていると、突然後ろから声を掛けられビックリしながらそちらを見るとリーダーのオズ兄が居た。


「こんなところでサボって…、探したんだぞ?何してんだ?」

「あ、ごめん。薬草集めてたらいつの間にか離れちゃって」

「気を付けろよ。街の外壁が見える位置だからと言って完全に安全って訳では無いんだから。それに、最近は邪族の量がいつもより多くなって、ホブゴブリンの割合も増えてるって話を昨日しただろ」

「ごめんなさい、ちょっと見るのに夢中になってて…」

「ん?あぁ、あの兄ちゃんと奴隷の子か…ってアレ、魔法使ってるのか?」

「やっぱそうだよね。あの兄ちゃん、あの子に魔法を教えてたんだよ」

「だからこの時間はいつも森に入らず、あそこに居たんだな…」

「ねぇ…、頼んだら僕たちにも魔法を教えてくれるかな?」

「バカ!俺達は黙ってあの人のお零れを貰ってるんだぞ。そんな事頼める訳ないだろ」

「そう…だよね。ごめん…。僕も魔法を使ってみたかったからつい…」


あの子が羨ましくて再度2人の方を見ると、兄ちゃんの方がこちらを見ている。

覗き見してるのバレた…、そう思ってると兄ちゃんがこっちに魔法を構えてた。


問答無用!?ヤバイ!

咄嗟に目をつむり身構える。

何かが空を切る音がしたが、痛みはない。

恐る恐る目を開けてオズ兄を見るとオズ兄も無事だった。


ドサッと音がしてそちらを見ると、2体ホブゴブリンの死体が僕らの後ろに倒れていた。

もしかして、助けてくれたのか…

僕が驚いているとオズ兄が急に腕を引っ張り無理やり走らせた。

森の方を見ると数体の邪族がすぐそこまで迫ってきていた。


「ぼさっとするな!もっとしっかり走れ」

「う、うん!」


僕たちは兄ちゃんと奴隷の子の方へと走っていく。

走りながら後ろをチラッと見ると矢を構えてこちらを狙っているゴブリンが僕を目掛けて射ってきた。


「あ…」


矢が放たれた瞬間、当たると確信し、声が漏れた。

このままだと頭に当たる。

そう思った瞬間、迫る矢がゆっくりに感じたが、体は思い通りに動かず、オズ兄に引っ張られるままに走る。

走馬灯の様な者が見え始めたと思った瞬間。

矢は空中で何かに弾かれてどこかへ飛んで行ってしまった。

矢を弾いたのは氷柱だった。あの兄ちゃんが矢を弾いてくれたんだとすぐにわかった。


後はもう必死に二人の方へと走り、後ろは振り返らなかった。

兄ちゃんがその後も魔法をいくつか放っていたが、僕らが目の前に到着する頃にはもう魔法を使っていなかった。


「ぜぇぜぇ...助かりました。ありがとうございます」

「はぁはぁ...ありがとうございます」

「うん、次からは気を付けなよ」


兄ちゃんは僕たちにはあまり関心が無い様で、その一言だけ喋って奴隷の子に向き直り、魔法の指導に戻った。

奴隷ちゃんは水を作り出し、水を氷に、氷を水に変える作業を繰り返してる。


あれ?魔法ってこんな風だっけ?

生活魔法を使える子が仲間に居るけど、詠唱って言うのをしてから魔法が出てたけど…この子、さっきから一言も喋ってない。

そんな事を頭で考えているとオズ兄が突然土下座しだした。


「お願いします。俺達にも魔法を教えてください!」

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