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なんで俺が異世界転移してるの?  作者: 特に何も考えてない
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2 街道を使って街へ

「んぐ…」


 床で寝て凝った体をほぐす様に大きく伸びをする。

 朝日が暖かくて気持ちがいい。

 程なくしてリアーナも目が覚めたので顔を洗い、昨日採った残り少ない木の実を食べた後、昨日話した通り街道を目指して南へ出発する。


そのつもりだったのだが…

森の奥からゴブリン達がやってきた。


「すっかり忘れてた」


ゴブリン達はこちらを警戒している様でボロボロな武器を構えてこちらを睨んでいる。

小さいのはギャアギャアとうるさく騒いでいるが威嚇しているだけで均衡状態だ。

もしかして、リアーナが傍に居るからか?

昨日だって大事そうに運ばれて来てたし。


でも何故ここで一泊させたのかが分からない。


「リアーナ、もしかしてアイツ等が何言ってるか分かるか?」


「わ、分からない」


俺の後ろに身を隠してそう答える。


「なら、なんでここに連れてこられたのかも分からないか?」


「うん。私、殺して欲しかったけど、何故か食事与えられて、何故かここに運ばれたの。今思えば、最初あった時も騒いでは居たけど、威嚇とかして来なかったし、敵対心も感じなかった気がする」


はて?ますます不思議だな。

リアーナ側に理由があるとは思えないし、ゴブリン側に何か事情があるのか?

しかし、話は通じない。

今にも襲いかかってきそうな見幕。

引き渡して、さっさと立ち去れば襲いはしないだろうけど、リアーナが嫌がるのは一目瞭然。


「リアーナ、少し後ろに下がっててくれるか、サクッと片付けるからさ」


「でも、1対7だよ!危険だよ!」


「大丈夫だって、俺は強いんだぞー」


心配そうに見上げて来るリアーナの頭を撫でて落ち着かせると、わかったと一言言って、廃墟の方へ行き、様子を伺う様に顔を覗かせる。


その様子を確認してから左手を前へ伸ばす。

具現させる魔法の形をイメージし、己の魔力で魔法を発現する。


【凍結】


一瞬にして、俺の目の前の空間からゴブリン達の居る場所まで走る様に凍っていく。

走りだしていたゴブリン達は全員それに巻き込まれ全身を白く凍結させた。


生えてた草は霜が降りたように白くなり、空気中の水分も氷や雪となって地に落ちる。


 ゴブリン達も動けず、瞬間的に凍ったせいで足が地面とくっついてしまっている。

 指なんかの厚みの無い部位とかは力を籠めれば折れるぐらいには冷えているので放置していても凍死するが、しっかりトドメも刺す。


 そこから更に手の平を上に向け、再び握る。

 ゴブリン達は内側から氷柱がいくつも生える様にして肉体を貫き、痛みで小さな声を上げた後すぐに絶命した。


 本来、動作なんかしなくとも魔法の行使は容易だが、イメージを具現させる関係上この方が感覚的にパッと出る。


 この様子にリアーナは口を開いてポカーンとした様子で見ている。


「す、凄い!こんなのを一瞬で」


「だから言ったろ、強いって」


「うん!」


 嬉しそうに返事を返してくる


「さてリアーナ、ついでだからちょっと魔法に付いて勉強しようか」


「魔法の勉強する!」


「やる気があって何より、まずは知識を付ける所からだ。今やって見せた様にこの氷は魔法だ」


 一番近くのゴブリンから生えた氷を折ってリアーナに見えるようにする。


「そもそも魔法というのは魔力を使うことで何かを生み出したり、維持したりしている。氷は本来、日に当たっていたり、暖かい場所にあると水へと溶けて小さくなっていく。魔法の氷も同じで火を近づけたら溶けてしまう。しかし魔力によって維持し続ける限り溶けにくくなる。強度も魔力の籠め方や魔法行使時のイメージ次第で普通の氷より硬く壊れにくい。ここまでは分かる?」


「うん、大丈夫」


「魔法を維持する場合も魔力は消費し続ける。魔眼を持ってるリアーナなら、今も俺から魔力が氷へと少しずつ送られているのが見えるだろ?」


「ホントだ、薄いけど確かに流れてる」


「そう、単純な維持だけならそう多くは必要としない。だが大きく損壊した場合は、修復する為にその分の魔力を多く使われる」


 先ほど折って取った部分を指さし、リアーナにそちらを注視するように促す。

 彼女が見ているのを確認したら先ほど折った部分を復元する。

 彼女には俺の指から魔力がその折れた部分に集まり、徐々に再生させていくのが見えているだろう。


「わぁ…凄い」


「これがもし魔法を維持しないでそのままにしていた場合、周囲の、空気中の魔力を使って状態を維持しようとする。まぁ魔力の濃度がある程度ないと1時間も持たないけど、逆に空気中の魔力が多い場所なら自然に任せるだけでもずっとそのまま残る事もある」


「へぇ、じゃあ溶けて水になったら?」


「いい質問だ。その場合は、氷として生み出された魔法だから、水になったらすぐに魔力へと帰って霧散してしまう」


「むさん?」


「散って消えるって事、コレの場合は魔力へと自然に戻るんだよ」


「へぇ…」


「だから、この氷も自然の魔力からの魔法維持もさせないようにすれば、普通の氷が日にあたって無くなるよりも早くなくなっちゃう。何故かと言うと、魔法、というより魔力っていうのは使った人とか、別の人がその魔力を支配していないと勝手に自然に帰っちゃうから」


「魔力を支配…?」


「そう。まぁコレについて教えるには、そもそも魔力がなんなのか教えないと話しても訳がわからなくなるから、よくは分からないけどそういう事をしないとイケない、とだけ覚えておいて」


「うん、わかった」


「ちなみに昨日飲んだ水、あるだろ?俺が魔法で出したの」


「うん、…あれ?水の魔法を維持してないよね?でも私ちゃんと乾いてた喉潤ったよ?」


 このことに対して不思議そうに俺の全身を見る様に周りを回って観察しだす。


「あれはまた別で魔力を消費しないでもずっと水であるようにしたんだよ。そうじゃないと飲んでも気がついたら水が勝手に霧散したり、飲んだ人の魔力を勝手に吸い上げて水として維持しようとしちゃうからね。これを物質への固定化と言って、【創造魔法】を扱うに当たって基礎となる技術だよ」


「んー?」


「そういう魔法の種類もあるって事、少しずつ理解していけばいいから」


 そう言ってまた頭を撫でる。


「ま、【創造魔法】は普通に魔法を発現させるよりも消費魔力が多いから、リアーナに教えるのは大分先かな」


「その固定化?って言うのを出来る様になれば私も自分で作ったお水飲む事出来る?」


「勿論だとも、それどころか食べ物を生み出して最悪飢えないでも生きて行けるぞ。まぁ、普通の人には効率が良いとは言えない上、複雑な物だとまともに作れなかったり、満腹と言えるほど量を作れないで魔力が枯渇したりするから最終手段だよ。 単調な食事ならコストも低いけれど」


「燃費悪いの?」


「うん、燃費悪い。だからリアーナが扱える様になるのはまだまだだよ」


 さて、そろそろ移動しないと。そう思い立ち上がったら


ぐぅぅぅぅ…


 空腹を訴えるお腹の音が

 ちょっと顔を赤くして俯いているリアーナ

 流石に痩せるほどの状態なせいか、あの程度の食事じゃ足りなかった様だ。

 俺もあんまりお腹が満たされては居なかったし、最悪道中で木の実を採って食べ歩きすればいいと思っていたが。


「ついでだし実際に創って食べるか、リアーナはパンとおにぎり、どっちが食べたい?」


「おにぎり?」


「食べたことない所かそもそも知らないか」


 この世界にも似たような物はあるだろうし、いつか食べる機会があるかも知れない。先に知っておいても損はないだろう。

 先ほど教えたものでおにぎりを創り出し、それをリアーナへ渡す。


「白いツブツブがいっぱい、それにホカホカー」


 初めて見るおにぎり、というかお米を不思議そうに色んな角度から見ている。

 俺も自分の分を創り、食べて見せると、リアーナも習って口に運ぶ。


「おいしー!パンとは違って柔らかい」


「塩も入れてるからな、日本の主食であるお米は基本なんにでも合う」


「日本?」


「ぁ…、アレだ。遠い国の―」


「日本ってこことは違う世界の国なんでしょ?」


「うん…うん?知ってるの?」


「うん、お母さんがいつも寝る前にお伽話を聞かせてくれるから」


「なるほど、じゃあ街道を目指して歩いてる間にどんなお話があるか聞かせてくれるかな?」


「うん、いいよ」


 おにぎりを食べた後すぐ出発。っと、その前にやる事が。

 さっきの魔法行使時にゴブリンの体内に魔石があることを確認してたから取り出さないと

 という事で、【創造魔法】でナイフを作ってさっさと回収。

 血が付いてるので水で洗って、とりあえずポケットへ


 その後はリアーナをおぶって森の中を進む。

 流石に痩せこけて体力落ちてる子に同じペースで歩かせるには体力的にもきついだろうからね。

 ちなみに俺は、元々並み以上には体力などあった上、魔力を使って強化や補正がガッツリ掛かっているので平気だ。


 移動中は魔物とかに合わないように俺が魔力を通して索敵で周囲を警戒している。

 話してる時もゴブリンが沢山集まってる場所を見つけた。

 恐く住処だと思う、周りの木々が色々装飾されてるみたいだったし。


 それから、リアーナから約束通りお伽話をいくつか聞かせて貰った。

 得れた情報は以下の通り。


 この世界の人類史はかなり古く、女神アルナが太古から現在に至るまで人々を導いてきた。

 女神アルナはあらゆる災厄を払い、幾度も人類の危機を救ったと。

 その為、今では人々を導く美の女神、なんて呼ばれている程だ。

 そしてその女神アルナには弟が居るらしい。そう男神様だ。

 名前はアズマ、こちらは才子を齎す愛の男神と呼ばれている。


 男神で愛のという二つ名が付くのは非常に珍しいが…。


 他にも人族ではない、亜人種に信仰される神もいるらしいが少なくとも人族の歴史に置いて、特に女神アルナが非常に深く関わってくるそうな。

 事実、リアーナから聞いた色々なお伽話でも大体は女神アルナが何か行動をしている。

 世界的に問題となっている災時には女神アルナが行動を起こし、これを収束。

 そういう流れがいくつもあるようだ。

 そして、その1つに勇者の召喚がある。


 異世界から人を選んで連れてくるアレである。


 まぁ、勇者を呼んでやらせるのは魔王や邪王と言った人類と敵対する人類ではない強者を倒す事らしく、過去に現れた邪神や異界の魔人軍とか、後は今では女神アルナの従魔となった神狼獣なんて言うのも、女神アルナが直接出てきて倒しているらしい。

 つまり、基本は勇者に任せて、どうにも出来ない時は動いている様だ。

 ま、人間でも解決出来る問題にわざわざ神様が出る必要ないもんね。

 ただ、召喚された勇者に関して、人類同士の国と国との外交問題。つまりは戦争への参加は禁則らしく。

 過去に無理やり束縛して魔王討伐後の勇者を戦争へ参加させた国は神の怒りに触れ、神罰で一夜にして滅ぼされた。というお話まであるようだ。


 何は共あれ、なんでリアーナが日本を知っていて、この世界が何故、日本の言語を使われているのかも大体わかった。

 最初に廃屋で日記を見た時、表紙に普通に漢字で《日記》って書いてあったから日本国内だと勘違いしてたわ。紛らわしい……。


 そんな話を聞いている間にも街道に無事到着し、そこから東に街道を進み街を目指していた。


 ちなみに、森では装備を身に着けた人(恐らく冒険者だと思われる)が索敵に引っかかったけど、すべて避けて通った。






 森の中から数時間、空が夕焼けになってようやく街へ到着。

 リアーナが住んでいた村から馬車を使えば、日が高い位置からでも夜までには間に合うとの事なので、俺がリアーナをおぶった状態でずっとランニングして来た。


 リアーナが住んでいた村、名をスージー村というらしいが、そこから東へ街道に沿ってを真っ直ぐ行った所にあるこの街には、リアーナも何度か来たことがあるそうで名前はポゼスというらしい。


 立派な外壁とそれなりに大きな堀に囲まれたこのポゼスは、南東にある大森林に住む森人族エルフ獣人族ビーストとの戦いで活躍した要塞でもあるらしい。

 ただ今は戦争はしておらず、一応友好関係である。

 それでもこのポゼスは北にある王都と南にある人族領の都市、東にある友好的な異種族の領土を繋いでいる大切な街なのだそうな。


 そしてここで問題がある…。


「身分証は?」


「ありません」


「二人は西の方から来たみたいだけど、出身はスージー村か?」


「はい、一応」


「ふーん?嬢ちゃんの方はともかく、アンタは…妙な格好してるんだな」


 ジャージです、寝巻きに使ってるジャージです。


「まぁコレ動きやすいですし…」


「…二人とも武装は無し、持ち物は魔石7個…か。どうやって手に入れたんだ?」


 その問に笑って誤魔化すと門番の人がコイツ本当に大丈夫か?って目で見てくる。


「はぁ…、本来なら身分証の無い奴からは税を払って貰う事になってるんだが…。幸い魔石を7つ持ってるからな、来た方向からしてあの森の邪族だろうし、3つあれば成年と未成年の2人が通れる金額にはなるだろう。ちょっと鑑定士を連れてきて見てもらい、換金させるからここで待ってろ」


 そう言い残した門番さんは奥へと引っ込んでしまった。

 俺たちはそのまま言われた通り、席に座って待っている。


 そうだ、もう暗くなる。


「リアーナ、あんまり人に魔眼を見られたくは無いよな」


「うん」


「ここは灯りも有って明るいけど、もう日が暮れてる。だからちょっと魔眼を抑えよう」


「どうやって?」


「目への魔力の供給を抑さえればいい。ただ、まだリアーナにはそういうののやり方は教えてないし、分からないだろ?」


「うん」


「だから、俺が手を加えて魔眼を抑えるよ。一度、目を閉じて」


 そう言うと、顔をこちらに向け目を閉じたリアーナの目に親指を沿え、リアーナの魔力の流れを変動させ、少しだけ流れるようにした状態でそれを固定させる。


「はい、目を開けてー、コレが見える?」


 そう言って手の平を上に向け魔力を湧き出させる。

 俺の手を見て目を数回瞬きさせた後、首を横に振り、見えないと言う。


「よし、じゃあ目に違和感は?」


「最初の、目を閉じてる時に一瞬違和感あったけど、今はなんとも」


「なら大丈夫だな、それに最初に違和感を感じたって事は、すぐに魔力を扱える様になるかもな」


 そう言って頭を撫でていると門番さんが口元のシワが見え始めてるぐらいの中年の男性を連れてきた。

 彼は俺たちの正面に座り早速、机の上に置いてある魔石を1つ1つ手に取ってモノクル越しに見る。


「ふむ、こちらはゴブリンの魔石で、…こっちはホブゴブリンの魔石か。これなら…ゴブリンのを1つ100(コイン)、ホブゴブリンのを1つ500(コイン)で交換し、1500Cの支払いだ。良いかな?」


「はい、それで」


 聞き入れた鑑定士は小さい銅貨を5つと大きい銅貨を2つ置いていき、門番が成年200C未成年100Cと言って小銅貨を3つ持っていった。


 通貨はコイン…か、ゲーセン来た気分になったわ。


 とりあえず、貰ったお金をポケットに仕舞い、詰所を出る。

 見送られる際に門番さんに冒険者ギルドの位置を聞いた所、この大通りを真っ直ぐ行った先の広間にあるそうだ。

 それを聞き、礼を言ってから言われた通り大通りを進む。


 空はすっかり暗く、星空が見え、街は街灯や店や建物から漏れる灯りで照らされている。

 時間的に夕飯の時間という事もあって、飲食店が賑わっている。

 他には装備を身につけた人が俺たち同様大通りを広間の方へと進む人が居る。

 そんな人たちに付いて歩いているとすぐに冒険者ギルドを見つけた。

 まだ泊まる場所も見つけて無いからさっさと登録を済ませてしまおう。


 おぶっていたリアーナを降ろし、2人で建物の中へと入っていく。

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