0 プロローグ
私は虐められていた。
人に見えない物が私には見え、暗闇でうっすら光る瞳。
皆、私を気味悪がり、石や泥を投げつけられる。
物心付く前からずっとそうだった。
かと言って、家にも居場所はない。
パパは生まれる前に他界、ママも私が生まれて間も無く死んだらしい。
その後は、ママの妹だったというおばさんの家で暮らしていた。
でも、おばさん私に優しくしてくれる事は無く、いつも私を怒鳴り、叩いてくる。勿論、泣いてもやめてもらえない
私の人生は酷く理不尽な物だった。
そんな生活が変わったのはいつだったか…、自分が何歳の時なのか、それは分からない。
私はずっと怯えながら生きていたから。
そんなものを数える余裕なんて無かった。
ある日、偶然にも耳にした会話
町外れに住んでいた、老いた頭のおかしい魔導師が行方不明になっていたらしい。
昔に恩を受けた近所の人が時より様子を見に行っていたそうだが、ある日を境に突然いなくなってしまったそうだ。
歳を取って奇行が増え皆不気味に思っていたため、今では誰もその家に寄らないそうだ。
その時の私は何を思ったのか、その老いた魔導師が住んでいた家に行くことにした。
恐らく、誰も寄ろうとしない。そんな言葉が理由だったと思う。
とにかく理由はなんであれ、あの日、あの家に行ったおかげで、私は…
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もしも、原点の始まりがあるとすればそれはとても静かであろう。
無から生まれるが故にそれを認識する存在も居らず、認識する存在がいなければ、その原点さえも自身が始まっている事にさえ気づく事はない。
故に、一番最初の始まりとは、とても静かで、静寂に包まれたものだ。
しかし、次に何かが始まった時は違う。
静寂なのか、そうじゃないのか、それは誰にも分からない。
しかし、それが原点ではない限り、既に存在していたモノがそれを必ず認識する。
故に、本当の始まりとはとても静かで孤独なものだ。
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私は虐められている。
私の目は魔眼だと、お母さんは言った。
その為、私には人には見えない物が見える。
お母さんはこの事を誰にも言ってはイケないと私に言い聞かせた。
だから、門限も少し厳しかったし、みんなと遊べる時間が少なかった。
私も、友達とみんなが帰るギリギリまで遊びたかったし、夜にたまに集まって遊ぶのにも参加したかった。
だから、私はお母さんとの約束を破って友達の家へのお泊りに参加した。
でも目の事がバレ、その日以来今まで仲が良かった子達と遊ぶことはなくなった。
私が目に着くと、大人も子供も関係なく私を化け物と呼び、物を投げつけてくる。
お母さんも周りから孤立していき、次第にやつれ始めていた。
それでも、お母さんは私に優しく、仕事を辞めさせられた後も、私と一緒に森へ入り、薬草や木の実を取って、それをお金の足しにして暮らしていた。
当然、学び舎には行けなくなったけど、嫌な目に合うあそこに行くよりも、私はお母さんと一緒にいられるのがとても嬉しかった。
私のせいで酷い目に合っているのに、それでも私に優しくしてくれるお母さん。
だから…私は恨んだ、私を置いて死んだお母さんを、お母さんを私と同じ様に化け物だと言った村の人達を、そして何より、お母さんがこうなってしまった原因である私自身を。
私は…私が嫌いだ、他の人たちよりもずっと…、だから早く死にたい…
死んだらきっと、お母さんにも会える。
死にたいから森に入った。
お母さんはいつも森に入る前に魔除けのお守りに祈り捧げていたけど、そんな物は要らない。
森に住む動物でも魔獣でも邪族でもなんでもいい。
早く私を殺して………