Ep6 空白の2年
更新が遅れました…
ブクマ、評価ありがとうございます!
今回少し短いですがこの区切りで投稿します。
(……ん……? ……わたしは一体……)
気づいた時にはリディアーヌは自室のベッドの中にいた。
「そ、そうか、あの時気が遠くなって……」
いろいろと処理が追い付かず、魔力酔いしたこともあって気を失ってしまったようだ。
「……!! っ、お、お嬢様!! 気がつかれましたか? お加減はいかがですか?」
目覚めたことに気付いたメイドのイリーが駆け寄ってきた。ずっとついていてくれたのか、彼女の顔はやつれている。
「イリー、ごめんなさい心配かけてしまって。もう大丈夫よ? わたしはどれくらい眠っていたの?」
目に涙をためたイリーはリディアーヌの背にクッションを当ててくれる。
「ああ、よろしゅうございました。旦那様もご安心なさるでしょう。昨日、旦那様がお嬢様を抱えて転移で戻られてからですから、まる1日でしょうか。
……ったく、王家の連中そろいもそろって……」
チッと言う舌打ちと、問題のある発言が聞こえた気がして振り向く。
が、イリーがいつもの穏やかな笑顔で水を差し出してくれている。
「あ、ありが……とう……あの、イリー?」
「はい、どうかなさいましたか? お嬢様、私はお気づきになられたことを旦那様にご報告してまいりますね。もう少しそのままお休みください」
穏やかな笑みで言われるとそれ以上は聞くことが出来ず、リディアーヌはおとなしく従った。
(き、聞き間違い?)
半刻もしないうちに、父である公爵が部屋に飛び込んできた。
「ディア!!!! 大丈夫か? どこか辛いところはないか?」
「……お、お父様、ご心配をおかけしました」
勢いよく登場した父の迫力に気押されながら、リディアーヌは心配をかけたことを詫びた。
「ディアが謝ることはない! まったくあいつら人の大事な娘に何してくれる!!」
「お、お父様、本日お仕事は……?」
「ディアの意識が戻るまでは仕事を拒否する、と伝えてある」
ふん!!と鼻息荒く告げる公爵にリディアーヌは困惑した。
(きょ、拒否ってできるの?)
いろいろと問題のある発言も多く不敬にならないだろうか心配だったが、リディアーヌは目の前に座った公爵に問いかけた。
「お父様、わたくしなりにいろいろ考えてみたのでが、その、昨日の話ではわたくしは昔、アルベリク様にお逢いしている? ようなのですがそれらしい記憶がございません。そして何とか思いだそうとしていて気付いたのですが、どうも4~5歳あたりの記憶が一切ないのです。これは一体どうしたことでしょう」
目覚めてからの間に、リディアーヌなりに昨日のことこれまでのことを整理していた。その中でどうしてもわからない部分、つじつまの合わない部分があったのだ。
「……それは……」
公爵は口ごもるが、リディアーヌは真剣なまなざしで父である公爵を見つめている。
「……お前にとって決して良い話ではないが、いいのか? できれば知らないままでいてほしい、と今でも思っているのだが」
リディアーヌは覚悟を決めた顔でうなずく。やはり自分には ”欠けた記憶” があるという事だ。知らなければこの先前に進めない、確信している。
(きっと知らなければいけないこと……)
「今のままでは何にも向き合えないのです、お父様」
真剣な表情のリディアーヌに根負けした公爵は、はぁっ、と深いため息をついて語り始めた。
「そこまで思うのであれば仕方ない。
あれは今から12年前、お前が4歳の時のことだ—」
専属メイドさんが出てきました!イリーさんです。
年のころは20歳、6年前から侍女ってます。
彼女も何かお役目をもってそうですが、さて。