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そんな運命、知りません!  作者: 楓美伽
1章 廻りはじめる運命
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Ep4 双王子の悲劇

モブのつもりだった陛下がお気に入りになりつつ…

もう少し陛下のターンが続きます。

「リディ、許しておくれ?」

ニコリと笑った国王がリディアーヌの腕を取ったかと思うと何か言葉を発した。

その瞬間彼女の視界が暗転した。


「こ……これは、魔法?」


「正解。リディは本当に魔力感知が優れているよねぇ。さ、ちょっと移動するからしっかりつかまって!」


「陛下!!」「ちょっ、あなた!!」「ディアをどこへ連れていく?!」

三者三様の反応があがる中、楽しそうに国王は笑う。


「ちょっと昔話をするから場所を移すよ。ルイス、さぁ探してついてきてごらん?

ベラ、あとよろしく! ローラン、リディはもう少し借りるよ~」

軽く言い放って姿を消した。


あとに残されたのは、呆気にとられた王妃とリディアーヌの父親と、……そして少し後方に控えていたルイスだった。








(ここはどこなのだろう? うぅ……気持ちわる……)

古い書物や魔道具が無造作に積み上げられている空間に出た。

リディアーヌはそんな空間の放つ不思議な感覚と急な移動に、魔力酔いを起こしてしまっていた。


「ごめんごめん、急だったから酔っちゃったね……」

と謝る国王と向かい合って突然現れたソファーに座らされた。


「一息つこう?」とこれまた突然現れた茶と菓子をすすめられたので、恐る恐る1つつまんだ。


「まぁ、食べながら聞いて?」

と前置きをされ、国王が話し始めた。


「昔々、この国の双子の王子たちが一人の女をめぐって争い国家を二分するまでに発展した。国は乱れ、とても不安定な情勢が続いた」


迷惑な兄弟げんかだよね?と国王は笑うが、臣下の立場では笑えない。


「そしてそんな国内の動乱に乗じて、他国がこぞって侵略してきた訳だ。この国は昔からいろいろな資源に恵まれていたからね、格好の餌食だった。


それでもなんとか神々の加護や、幻獣・亜人族の協力のおかげで退けることができた。二人の王子は、恋の熱から冷め共に手を取って他国を退け、王位は間もなく産まれた三番目の王子が継ぐ事になった。心から反省した二人の王子は弟を文武両面からサポートし、国の復興につとめ仲良く暮らしました……ここまでは大丈夫だね?」


「はい」


「この話にはね、王家にしか伝えられない本当の話がある。国の危機に発展しても、王子二人はまともな状態ではなかった。精神錯乱というかほぼ狂人といっても過言ではないくらいだったそうだよ。


担ぎあげて煽っていた連中も権力争いしている場合ではない、と正気になるくらい。国そのものの存続が危ぶまれていたから、どっちの王子派なんて言ってられないよね。そうして分裂していた国は徐々に一つにまとまっていった。


ずっと中立を保って騒動を納めようとしていた貴族の四家が中心になって、まずは王子二人を拘束した。そして騒動の元になった貴族たちを処分しながら、他国を退けるために奔走し戦った。


……この4家が今の4大公爵家の成り立ち」


「え?」

ポカンと口をあけてリディアーヌは国王を見つめる。

内緒だよ? と人差し指を口元に添え、国王はニコニコと笑っている。


「この話は禁忌事項なんだよ。まぁ王家の恥だしねぇ」


「禁忌って、伺ってもよろしかったのですか?」

慌てるリディアーヌにうなずくと国王は続けた。


「さて続きを話そう。拘束された王子達だけど、手の施しようのないほどの精神状態だったので、大精霊の力を借りて王家の秘宝とされていた”珠”へ封印した」


「ふ……封印? 生身の人間をですか?」


「そう思うだろ? 当時は神の加護が今と比べ物にならないくらい、むしろ神自身がこの地にあった、とさえ言われているくらいだからね。王子二人はことのほか精霊に愛されていたらしいし処罰しちゃうことはできなかったんだろうね。肉体を捨てさせ珠で浄化を行った、とされている。その珠が今の神殿に納められている神体二つなんだよ!」


(あ……あの珠、そんなものが封じられていたの?! 通りで普通じゃないオーラが見えると……)


どや顔の軽い口調で語られる、衝撃の事実にリディアーヌは言葉を失った。

彼女は魔力や気の流れが見える。それは人だけではなく鉱石などの無機物から植物、動物に至るまですべてで……人ならざるものまでも対象であった。


「そんなこんなで、今に至るんだけど。それから双子がよっぽどトラウマになったんだろうね。王家に双子が生まれたら、神殿で神に王に相応しい方を問うて王を決めることになったんだ。選ばれなかったほうは神にささげる、ってこととともに」


「神に……ささげ……?」

不穏な言葉にリディアーヌの表情が曇る。


「言い方変えたら生贄だよねぇ。まぁもともと王家に双子って産まれないからね。双子が生まれた治世は乱れる、とか、国が乱れる不吉な予兆、とかいろいろ言われるんだ。さすがに時代とともに生贄はないだろう、ということで適性の神託を受けたあとは、王と影に分けられる今の形に落ち着いたんだ」


「……っ」

王と影、告げられた言葉に彼女は言葉を失う。

ドッドッ……とうるさいくらいに心臓の音が自分の耳に響く。

今日何度王と王妃の口から『あの子“達”』という言葉が出てきただろうとリディアーヌは考えた。今の話を聞いて、疑問が確信に変わる。


「リディにもつけてあるけど、王家につく影は王にならなかった方の王子の末裔なんだ。普通の影は血縁とか関係なく才能でスカウトしているけれど、特に双子が誕生した世代の王子妃には婚約した段階で王座に上らない方の王子が影でつくんだよ。……王の方に何かあった時にいつでも代われるように、本当の影としても、ね」


(本当の、影?)

疑問を口にしようとした瞬間、室内の魔力にひずみが生じた。


バンッ!!


勢いよく扉(だと思われるもの)が開く。

開くと言うか、扉が消えて空間が歪んでいた。

そこから飛び込んできた人物にリディアーヌの鼓動は跳ね上がった。



「アルベリク、行儀が悪い入り方だなぁ……ゆっくりお茶の時間を楽しんでいたのに」


「あなたがいきなり転移なんかして、リディを連れていくからでしょう?」

いつもはとても穏やかなルイスがこれでもかというほどの怒気を放っている。


(いま、アルベリクって……)ドクンドクン、と鼓動がうるさい。


「あなたはいつもいつも……」


「やぁベラ、意外と遅かったね。ここはまだ君も入り方知らないってことかな?」

ひらひらと手を振ると、素早いしぐさで妻をエスコートし隣の席へ誘った。



感想、ブクマ頂けることに驚いていますが、嬉しいです。

想った以上にキャラが暴れ始めたのですが、完結目指して書いていきます。



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