Ep3 陛下と王妃の恋の話
陛下のキャラが定まらない^^;
「なんとも愚かなことだろう? それでも自分の不始末だ。今更戻るに戻れず、それでもなんとか生きていた……そこへ現れたのが、彼女」
フフフ、と国王は嬉しそうに王妃を指さす。
「それはそれは恐ろしい形相でわたしの胸ぐらをつかんでねぇ。『一体いつまで反抗期をこじらせて社会勉強なさっているのです?!』と相も変わらぬ調子でぴしゃりと一喝さ」
バツの悪そうな顔の王妃と愛しさがあふれ出るような笑顔の国王、対照的な二人だがそれでもとても懐かしそうな表情だった。
「その時はなんとも小憎らしいやつめ、と思ったのだが……
評判の髪はボサボサ、目の下にクマ、顔もやつれていてね。よく見たら着ているドレスもあちこち汚れているんだよ。そして馬もどこかで乗り継いだのか彼女の愛馬ではない、普通の馬だった。そこで初めて気がついたんだよ……ああ、探してくれたのか、と」
フッ…と国王は自嘲気味に笑いながら続けた。
「その時すでに私には影がついていないのは知っていた。城から馬車に押し込められ、街で放り出された瞬間からすっかり気配がきえていたからね。そこから本当に自分の力だけで生きる必要があったから、仕事を求めて寝泊まりする場所も転々としていた。最後は辺境近くの鉱山にいたかなぁ?
なにかしら功をたてて、女を迎えに行こうとしていたのに、その女にあっさり逃げられ、
自棄になっていた、というのもある。冒険者まがいのこともしたしいっそのこと国を出てもいいかと考えていたから、決まったところに居つくことはしなかった。
……そんなわたしを自力でみつけてくれたんだ」
愛おしそうに王妃を見つめる国王の目には様々な想いが滲んでいた。
(このお二人はこうして国の為政者となり、夫婦となったのか)
リディアーヌは今更ながら気付かされた。
「わたしが王位継承を失った後も彼女が王妃となる事に変わりはなかった。わたしの次に王太子に選ばれる従兄弟の妃としてね。だから、当然彼女はわが従兄弟殿としっかり国を治めていくのだろう、と思っていた。
そこへいきなり現れたものだから何事かと思いつつ、自分でも驚くほど喜びを感じた。そして彼女が現れた事情を聞きさらに驚かされたんだ。
わたしから逃げた女、そいつが今度はわが従兄弟殿にどこからともなくすり寄ってきたらしく、さすがにこれには王家も憤って不敬罪で一族ごと取り押さえたこと。
そしてわたしと幸せに暮らしていると思っていた女がそんな形で現れたのを見て、いろいろと察したこと。
そこからどんな経緯があったのかいまだにあまり教えてくれないんだけど、まぁ秘密の一つ二つあった方が人生楽しいからね。
それに、わたしか彼女が儚くなるまでには教える、と約束してくれているし」
(は、儚くって……反応に困る……)
リディアーヌは戸惑いながらもそんな二人をうらやましい、と感じていた。
いつか誰かとそんな関係を築けたら、そう考えた時ルイスの顔が浮かび慌てた。
(いやいやいやいや…さすがにそれはだめ。彼の人生もあるのだし…)
浮かんだ考えをかき消すかのように頭を振っていると
「あなた、その話いまは関係ないでしょう……」
あきれた声で王妃が諌めた。
「あはは、すまないね、ちょっと懐かしくなっちゃってね」
語ってしまった自分に恥ずかしくなったのか、国王はコホンと咳払いをし続けた。
「わが愚息達の行い、わたし自身は苦い思い出というか、あまり言えたことではないがそれでもこれはいかん。もっとほかのやり方っがあった。ここはひとつ、先方に倣ってあいつらの運命を試させてやろうと思う」
厳しいまなざしで語る言葉には国王としての決意と親としての苦悩が見て取れた。
かつての己の恥部にふれ耐えられないというのも多少はあるのかもしれない。
「ま、どんな仕置きかはお楽しみということにして……可愛いリディの今後についての相談だ。実は……君にはそのまま王太子の婚約者であってほしい」
「え? で、でも、一体どなたと……」
「ここからはまだ口外禁止なんだけど、いいかな?」
「は、はい……」
「うん、いい子だ。リディは王家にまつわる双王子の悲劇のことは覚えているかい?」
『双王子の悲劇』妃教育の中にあったものなので、コクリとリディアーヌはうなずいた。
次回にやっと、ヒーローが登場します。
少し修正したいところもありますがまずは完結まで投稿し終わってからにしますので、最後までお付き合いください。