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そんな運命、知りません!  作者: 楓美伽
1章 廻りはじめる運命
3/16

Ep1 運命ってなんですか?

「リディアーヌ! もう我慢ならん! お前とはこの時をもって婚約破棄とする!」


勝ち誇った顔でこの国の王位継承者である、王子シュナウザーが言い放った。

いささか芝居がかった口調ではあるが、その傍若無人な宣言を一身に受けた令嬢リディアーヌの婚約者だ。


ことは彼の母であるこの国の王妃主催のガーデンパーティで起こった。

招待されていない男爵家の令嬢がいたため、彼女がとがめたところ先の宣言へとつながったのだ。


「私がいいと言っているのに、なぜおまえに文句を言われねばならない? もう許さない。わが最愛のアンナを害しようとした罪でお前を捕縛する!」


ガシャーン!! 暴言とともに茶器が投げつけられる。

その瞬間プチンと彼女の中で何かが切れる音がした。


「私とアンナの運命の恋を邪魔するな! お前がかわいいアンナに嫉妬して、

数々の嫌がらせをしていたこともわかっているんだ!」


と、暴言はエスカレートし、身に覚えのない言いがかりまで飛び出してきた。

彼女は心底どうでもいいという顔で、元婚約者が暴れるさまを眺めている。


(ってか、アンナって誰よ? 運命ってなによ? ああ、この数カ月殿下が侍らせていた女のことかしら?)


このところ、王子殿下に婚約者以外の親しい令嬢がいる、ということは王宮にも知れ渡ることになっていた。重臣達や国王陛下自身がいさめても、聞く耳を持たない、と問題視されていたようだ。

世継ぎとしての勉強も公務や政務も放り出し、日々遊び呆け乱痴気騒ぎ、果ては国庫までちょろまかして横領まがいのことも行われており、本当にやりたい放題だった。


(この数日に至っては、むしろこちらの方が毒を盛られるわ、何者かの襲撃に合うわ……そもそも、あんたがサボりまくってやらかしまくってるおかげで、全っっ部のツケがこっちに回ってきてたのよ くだらない嫌がらせなんてやってる暇なんてないわよ!)


16年かけて身に付けた淑女の仮面がズルッと剥げかけたその時。


(しっかり!! かわいい猫が剥がれだしてるよ?)

クスクスと場面に沿わない笑いを含み、リディアーヌへ念話が飛んできた。


念話の送り主である護衛のルイスは、先程の軽口が嘘のように真剣な口調で

(心配しないで、何があってもリアは僕が守るから)

と、目の前の残念王子様よりもよっぽど王子様っぽい言葉をくれた。



ザワ……ザワザワ……

茶会の参加者が異変に気付き、次第にざわつきだした。



「はやくしろ! あの女を捕まえろ!!」



王子がそう叫んだその時、辺りから黒い鎧をまとった騎士たちが忽然と現れた。

(王子の専属騎士? なの? くっ、これは、なにか対応をしなければ……)


さすがに危険を感じ身構えた瞬間、騎士たちは 『失礼します!』 と彼女の横を通り過ぎ王子とその周辺にいた連中を捕まえはじめた。



「な、なにをする。私じゃない! あいつを捕まえろ、といっているんだ!!」

王子がキーキーわめいているがすべて黙殺される。



(よ、よかった……の、かしら?)


ホッとしたとたん、体から力が抜けた。倒れる、と思った時手を引かれ支えられた。

その感触に、リディアーヌは何かを思い出しかけた。


「……え?」

(なんだろう? この感じ、前にどこかで……)


「リディアーヌ様、こちらへ。怖がらせてすみません、もう大丈夫です」


そのまま手を取ってくれたルイスをみてはじめて自分が震えていることに気が付いた。

彼は騒ぎを聞きつけた人々の視線を遮るように彼女を隠してくれている。

その優しい手にほっとした。


「ルイス……ありがとう」


王子の婚約者となってから、私にも影がつけられた。王族一人につき二人つくらしいうちの一人だ。もう一人は結婚してから紹介されるとて聞いていたが、この先聞くことはないのだろう、と考えて彼女はあることに気が付く。


(ん? ということは、ルイスとも、もう……)

その瞬間、ズキンと胸が痛む。


先程、王子から茶器と暴言を投げつけられた時には感じなかった痛み。

初めての感覚にリディアーヌは戸惑う。



(あ……これは殿下だけを責められないかも……しれない……)

気付いてしまった己の気持ちに、リディアーヌは苦笑いするしかなかった。






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