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会社辞めて異世界送り業するわ  作者: 旬のからくり
8/22

窓口の壊れた機械

 翌日、おっさんに適当に話を合わせて貰って、会社へは遅刻していく事にした。

 今更俺の評価なんかどうでもいいので、社長がどう思おうが構わねえからな。


 朝一番に通帳を持って銀行に行って、記帳する。

 通帳にはデブの振込額3752円、社長の娘の振込額2000万円がきっちり書き込まれた。

 おっさんと同じで振込んできた相手の名前は無い。

 それを持ってすぐに窓口へと向かう、怪しまれてもいいからハッキリさせとくべきだと思ったからだ。


「どういったご用件でしょうか?」

 俺は窓口の姉ちゃんに通帳を見せる。

「これ見て下さいよ、いきなり2000万振り込まれてるんですけど。何かの手違いですよね?」

「どういったご用件でしょうか?」

 は?

「いや、だからこれ見てくださいよ、おかしくないですか?」

「どういったご用件でしょうか?」

 なんだこいつは、頭いかれてんのか?

「何言ってんだあんた?」

「何か失礼になるような事を致しましたでしょうか?」

 あれ、話が進んだぞ。

「だからこれ見てくださいって!」

 通帳を見せる。

「何か失礼になるような事を致しましたでしょうか?」

 んんん?

「いや、そうじゃなくて……。」

「はい?」

「この2000万は何ですかって聞いてるんですけど?」

「はい?」

「はい? じゃなくて……。」

「申し訳ありません、ご用件は……。」

「だからこの2000万!」

「申し訳ありません、ご用件は……。」

 なんだこれ、通帳の事に触れたら話が進まなくなる、のか?

 試してみるか。

「今日はいい天気ですね。」

「え? ええ、左様でございますね?」

「住宅ローンの相談ってここでいいんですか?」

「あ、それでしたらあちらに専用のブースがございまして……」

「この2000万何すかね?」

「あ、それでしたらあちらに専用のブースがございまして……」

「…………」

 無言で通帳を見せてみた。

「あ、それでしたらあちらに専用のブースがございまして……」

 やっぱりか、ほんの一瞬だがタイムリープ? って奴をしてるみたいだな。

「あ、ごめんなさい用事があるの忘れてました、2000万なら貯金あるんでまた来ます。」

「え? あ、はい、ご来店お待ちしております。」

 通帳を見せたりだとか核心に触れる事を言わなけりゃ戻されねえみたいだな、単純に俺が金を持ってるってだけなら問題ないわけか。

 ATMなら何の問題もねえ、おっさんの口座に試しに100万振り込んでみたが、振込み限度額を無視して普通にできた。

 しかもおっさんの通帳に記帳したら俺の名前で振り込まれてやがる。




 トラックを取りに行ったが、例のナビは消えていた。

 昨日のナビの標的がおっさんだとしたら、おっさんは自然に死んでねーとおかしい。

 もしかしたら、殺せって意味じゃない場合もあんのかな、実際これのおかげでおっさんと俺は情報を共有できたわけだし……。

 いや、都合よく考えすぎかな。

 今は俺もおっさんも生きてるし、とりあえず気にしないでおくか。




 昼前に出勤した俺は、そろそろ昼めしだろうと、外の自販機の横に座っておっさんに電話をかける。

「もしもし。」

「あー、お疲れっす、俺っす。」

「おう、どうだった。」

「初日の分も0じゃなかったすね、あと通帳を銀行の姉ちゃんに見せたら時間が巻き戻るみたいす。」

「なんだそりゃ、競馬当て放題じゃねーか。」

「いや、一瞬すよ、2~3秒す。」

「なんだつまんねえ。」

「で、俺昨日考えたんすけど、これって死んだ奴の所持金じゃないすかね?」

「じゃああのサラリーマンは300万ポケットに入れてたのか?」

 んなわけねーだろバカ。

「いや、口座に入ってる分も含めてっすよ、どっちかっつーと口座の金だけかもしんねーす、社長の娘さんはやっぱり2000万ジャストだったんで。」

「成美ちゃんがなんでそんなに金持ってんだ?」

「そりゃ、社長が可愛い娘にお小遣いを……。」

「いやいや、いくらあの親馬鹿社長でも2000万なんか娘にやるかね?」

 そうか、娘と同時に2000万消えてるんだ、普通は警察に言って探す筈だよな、事件性もかなり高まるだろ2000万だぞ?


 …………そうか。


 ……ありゃ表に出せない金だ、娘の名前で口座作ってプールしてやがったんだな。

 そもそも白紙で振り込まれるから、俺達には出元が日本の銀行かどうかもわからねえ。

「どうした? もしもーし?」

「あ、ああすいません。今のではっきりした気がします。やっぱりこれ死んだ奴の口座からそのまま来てますよ、ニートは当然0円、高校生はバイトしてたり親が貯めたお年玉貯金だったり? そんなんじゃないすかね。」

「なるほどなあ。持ち主が死んで、本当に死に金になった金が送られて来てんのか。くじ引きじゃなかったんだな……。」

 バカげた説をいつまでも押してんじゃねーよおっさん。


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