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会社辞めて異世界送り業するわ  作者: 旬のからくり
19/22

英雄の人生

 日本語が通じるんでこいつがあのデブなのは間違いなさそうだ。

 紙に書けばこいつと話が出来る事もわかった、神様と勘違いされてるけどそれならそれでいいか別に。


〔そうだ、オレがお前をここに送った。〕

「やはり! しかしそれならどうして今まで語り掛けてくれなかったのです!?」

 知らねーよそんな事……、ついこの間来たばっかりだわ。

 無視しとくか。


〔このせかいの生活はどうだ?〕

「はい、見ておられたでしょうが私は魔王を見事討ち果たし、この国を救う事が出来ました。今は達成感と幸福感に包まれております……。もしや魔王のせいでこれまで干渉する事が出来なかったのですか?」


 だから知らねーって、来たらもう魔王とやらを倒してたんだろお前が勝手に。

 でもまああれだな、随分充実した生活みたいだな。

 流石にこの喋り方がこっちに来る前からだったとは思えねーから、この歳になるまでこっちで暮らした影響なんかな。

 確か0歳からだったよなこいつ。

 

〔今と昔、どっちが幸せだ?〕

 俺が一番気になってたのはこれだ、本当に異世界に行って幸せになれてんのか。

 俺達がやった事は無意味なんじゃねーか。

 その答えが欲しかった。


「そんなもの、聞かなくてもお分かりになるでしょう? もう二度とあんな世界に帰るのは御免です、このアルガスト皇国こそが本当の私の国です。私の人生です!」


 お、おうそうか。

 そこまで言い切られるとは思ってなかったから、申し訳ねーが少し引いちまったわ……。

 どんだけきつい生活してたんだあっちで。


〔そうか、これからもこの世界でがんばってくれ。〕

「勿論です! 魔王を倒した事でデゾルクエストで言うゴールには行き付きましたが、その続きは私が切り開いていくのですね……。神が見せたかったのはこの先の未来……、そういう事なのでしょう?」


 いや、違うけどな。

 つーかやっぱりこいつはこの世界がおっさんの言ってた【ボードゲームの世界】って自覚はしてんだな、デゾルクエストってーのか。

 ゲームの内容は知らねーが、用意されたストーリー通りに進めたって事だよなちゃんと。


〔そうだ、この先も平和が続くかはお前しだいだ、ご安全に。〕

「ご安全に……?」

 しまった、癖で現場の挨拶書いちまったわ……。


 まあいいか、とにかくデブの兄ちゃんは日本を見限るくらいにゃ満足してんだ。

 神様の出番は終わりだな、このままこいつと仲良くなってここに住むのもいいけど、こいつの護った世界ってのを見て回るのも悪くねー。




 そう思ってペンを机に戻して、部屋から出ようとドアノブに触ったら…………

 一瞬で世界が灰色に変わった。

 ビビッて振り返ると、さっきまで話してた元デブの兄ちゃんが固まってやがる。


(え、なんだこれ?)

 触ってみたが石みてーにカチカチで訳が分からねー……。


 呆然としてたら後ろでドアの開く音がしたから、咄嗟にまた振り返る。

 ドアの向こうは灰色じゃねえ。

 そんで、この三日で見慣れた廊下でもねえ。


  

 このままここでビビってても仕方ねーから、ドアの向こうに行ってみる事にする。

 開いたドアから向こうを見てみると、アルガスト皇国とやらとは雰囲気が全く違う世界があった。

 よくわからんがとにかくバカ高そうな敷物に、これまたよくわかんねーけど高級感溢れる家具が並べられた部屋。

 俺の全身が部屋に入ると、後ろのドアは跡形もなく消えちまった。


(またどっかに飛ばされた?)

 ソファに座ってまじまじと部屋を観察してたら、部屋の外からドタドタと騒がしい音とうるせー声がこっちに近付いてくるのがわかった。

 やがてバンッ! とドアが開き、紫色のドリルみてーな髪型の女が勢いよく入って来る。


「’%$&’(&$!~|)’!? ’%$&’$#$$%&’~|)’!!!」


 誰かと話してんのかと思ったらくそでけー独り言だったわ。

 何だこの女。

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