表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
会社辞めて異世界送り業するわ  作者: 旬のからくり
12/22

茶番

 取り敢えずおっさんにここの住所をメールしながら動きを待った。

「どちら様ですかー?」

 インターホンから男の声がする。

 さっきの男だろうな、すっとぼけやがって。

 居留守の選択をしないでくれたのは好都合だクズ野郎。


 普通に開けろって言ってもいいけど、ここまで来たら楽しんでやるか。

「はー? ここ渚の家だろうが、なんで男の声がすんだよ、おまえ誰だよ。」

 襲いに入ったら女の彼氏が来ちゃいましたよ、ってとこだ。

 何も返してこねーな。

「鍵持ってんだぞ、開けるからな!?」

 そんな事わざわざ言う奴なんか居るとは思わねーけど、ちゃんとお知らせしてあげないとな。

 鍵なんか当然持ってねーけどさ。

「少し待ちなさい。」

 お、待ちなさいと来たか、開けてくれんのかね。


 少しして、ガチャリと鍵の開く音がする。

 まあ籠城したところで騒ぎが大きくなるだけだしな、追い払うかついでに俺も殺そうって腹かね。

 ドアが少し開いて男が顔を見せる、マスクをしてるから顔はよくわからん。

「誰だよおめーよ?」

 こっちから仕掛けてみた。

「私は渚の兄だ、君みたいな男と付き合っているなんて聞いていないがね?」

 くっそ、こいつ笑わせにきてるだろこれ、がねって何だよがねって。

「あ、そうなんすか? 渚と俺付き合ってんすよ、今日から覚えてください。で、渚はどこっすか?」

「妹は今いない、悪いが君みたいなやつとの交際は認められないな。」

 追い払う方で来たか。

 最初から殺す気がないんならありがてーや。

「マジっすか? さっき連絡したら家に居るって言ってたんすけど、おかしいっすね、お義兄さんの事も何も言ってなかったすけど。」

「抜き打ちで来たからだ、うちの教育方針は君には関係ないだろ、帰りたまえ。」

 こいつ絶対兄と父がこんがらがってるよなウケる。

「いやいやそうじゃなくてっすね、渚から兄弟が居るなんて聞いてないって言ってんすよ、あんた誰なんすか。」

 こいつが女の知り合いならすぐバレる嘘だな、でもそれなら配達員に変装しねーわな。

 もしかすっと重度のストーカー野郎で徹底的に女の事調べてるのかもしんねーけど、まあバレたらバレたでいいか。



 無言で目が泳いでやがんな。


「何とか言ったらどうなんすかねえ?」

「うるさい! たまたまお前に教えなかっただけだろ! 早く帰れ!」

 あーあ、キャラ崩壊しちまったよ。

「なぎさー! いるんだろー? 入るぞー?」

 面倒になって男を思いっきり押し飛ばしてみた。

 玄関の段差に引っかかって後ろに倒れる変態。

 毎日毎日建築資材運んでると、その辺のジム通いの大学生の兄ちゃんより筋肉ついちまうんだわ、わりーな変態野郎。

 見たら右手に包丁握ってやがる、どうせこいつは捕まるんだし、ついでに強めに殴っといてもいいか。

 そう思って顎を集中的にぶん殴っといた。

「何でお義兄さんが包丁なんか持ってんですかねえ? もしかして料理の途中でした?」

 安全靴で右手に思いっ切り蹴りをいれてやった、同時におっさんからの着信。

「はい。」

〔おうもしもし、なんだこれ?〕

「なんだって送りの住所っすよ、今そこにいるんす。」

〔あー、なるほどな、でもなんで俺に?〕

「ちょっと特殊な現場なんすよ、ポリさん呼ばなきゃならんかもしんないっす。これるんだったら来てくんないすか?」

〔なんだそりゃわけわかんねーな、高速(うえ)使って出来るだけ急いでみるわ。〕

「おねがいします、じゃ。」

 電話中も男から目を離してねーが、特に反撃しようとはしてこない。

 右手折れたのかね? ぐったりしてるしほっとくか、靴紐で足縛っときゃいいだろ。


 さて、家主はどこにいるんだろうか。

 無難に一番奥の部屋かね。

 そう思って奥の部屋に行ってみる、ソファーの横に転がる半裸の女。

 口にはビニールテープが何重にも巻かれてやがる、ひでえなこりゃ。

「有里渚さん?」

 目の前にしゃがみ込んで聞いてみたけど、泣くばっかりで話聞いてねえみたいだな。

「困ったな、俺一応あんたを助けに来たんだけど。さすがにそのビニテ剥がしたら髪の毛抜けまくりそうだしな……。」


 目を見開いてンーンー言ってるだけでどうにもならねえ。

「一旦落ち着けって、もうすぐ警察も来るから、な?」

 どうすっか、なんかよく見るとこの女俺と目線も合わせようとしねえな。

 待て待て、そんな事あるか、この女が叫びながら見てるのは俺じゃなくて!


 慌てて女の後ろに向かって飛んだ。

 振り向いたら変態野郎が倒れ込むように女に抱き着いてる瞬間で、女の顔には包丁が突き刺さってた。

 後ろから俺を刺そうとしたわけだ、でも俺がこの女を盾にして殺しちまった訳ね? はいはい。

 そういう扱いね、俺が来なかったらこの女の命は助かってたかもしんねーもんな、俺のせいね。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ