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第12話 『新しい朝が来た』

「ん……んん……」

 なんだか長い間眠っていた気がするけれど、気のせいだろう。

 昨日定期考査の3日目を終えて、今日は12月20日。もうすぐクリスマスだ。

 しばらく布団でぬくぬくしていたけれど、気合を入れて布団から出て、身支度を済ませる。

「おはよう愛乃」

「おはよう母さん」

「今日はいつになく元気ね」

「そう? もうすぐクリスマスだからかな」

 テーブルにはすでに2人分のトーストと目玉焼き、ベーコンとサラダというメニューが並べられていて、湯気を立てている。

 お父さんはすでに他界しているため、2人分。お父さんは自衛官で、サバゲが好きだった──らしい。あまり家に帰ってこなかったのと、私がまだ小さかったこともあってあまり覚えていないのだ。

 仏間にモデルガンやサバイバルナイフがあるのもきっと父さんの形見なのだろう。

「いただきます」

「はい、いただきます」

 お母さんと一緒に食卓を囲むのはとても楽しい。確か前の土曜は廉治と一緒に母さんの特製カレーを食べた。やっぱり、お父さんの記憶が全然ない分、食卓に男の人がいるとすごく安心するのだ。

「ねえ、愛乃」

「ん~?」

「クリスマス、廉治君に何かあげるの?」

「ん~……考えてる」

「そう」

 お母さんは私が廉治のことが好きなのは知っている。だけど、冷やかしたりからかったりするどころか、アドバイスや協力をしてくれるからなんでも話すことができるのだ。今まで数多の男子から告白されてきたけれど、母さん直伝の「相手を傷つけない断り方」のおかげで、これまで何とかなってきた。けれど、たくさんの人の告白をすべて振らなきゃいけないのはとても心苦しい。かといって、私が廉治に告白したら、きっと廉治が周りから恨みを買ってしまうだろう。だから迂闊に告白できずに、これまでこの気持ちは仕舞ってきた。

「ごちそうさま!」

 食べ終わり、時計を見ると7時半。いつもより少し遅いだろうか。急いで支度を済ませ、家を飛び出した。


 8時前。生徒がちらほら見え始めて来た頃。私は異変に気付き始めた。

 いつもなら私を見るなり挨拶してくる女子が一人もいないのだ。この言い方だと私が強要しているとか脅迫してるとか、スクールカースト最上位に君臨してるとか思われるかもしれないけれど、自然にそうなっていったのだ。

 校門が見えてきた頃、しばらく様子を窺っていたけれど誰も来ないから、私から挨拶して回ることにした。

「おはよう、佐藤さん」

「お、おはよう……」

「おはよう、井手さん、福原さん」

「……どうも」

「おはよう……」

 あれ? おかしいな? なんでみんな目を逸らすんだろう。それと、なんでまるで私とかかわりたくないオーラを出しているんだろう。

 きっと寒いからかな? 私が元気すぎるだけなのかな? それとも低血圧?

 なんにせよ、まだ一日は始まったばかりだ。もっと頑張らなきゃ。


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