第11話 『俺の3日間』
12月17日、月曜日。俺の1日目。
まず、愛乃に近づいてきた人間には俺の罵詈雑言ボキャブラリーの限りを尽くして、“誰にでも優しくて愛想のいい愛乃”という幻想をぶち壊してやった。やつらはきっとこれを愛乃の本性だと思っただろう。
そして、テストを受けた。
今日は3科目あるということで、表はそれぞれ無記名、無回答、回答ずれ。裏は愛乃の記憶を頼りに、あらゆる教師、生徒の罵詈雑言や秘密の数々をびっしり書いた。
これで、廉治を除く交友関係はぶち壊した。
12月18日。火曜日。俺の2日目。
昨日の行動はすでに周りに広まっているのか、もう俺──じゃなかった、愛乃に話しかけてくる人間は誰もいなくなった。有名人の悪い噂は広まるのは早いもんだ。
今日も3科目。表は昨日の通り。裏は昨日書ききれなかった分の生徒の罵詈雑言を書いた。
テストが終われば学校は終わるので、さっさと帰宅する。意外にも教師連中から呼び出されることはなかった。きっと動揺して立ち直れないとかそんなところだろう。試験監督の教師も死んだ魚のような目をしていた。
部屋で廉治に対してのラブレターをしたためる。もちろん、中身は普通のラブレターだ。罵詈雑言なんて書かない。そういうのは直接本人の口から伝えてあげないと効果が薄いからな。
12月19日。水曜日。俺の3日目。締めの3日目だ。
今朝は早く学校に行き、廉治の靴箱に手紙を投函。テストが終わったら屋上に来る手筈になっているが、昨日の今日だ。来てくれるかは分からないが、廉治は必ず来ると確信できる。なぜなら、やつも俺──じゃなかった、愛乃のことが好きなはずだからだ。それは見てれば分かる。
今日もテストは3科目。昨日おとといと同様に書いた。
そして、運命の昼休み。寒空の下屋上で待っていると、扉が開いた。
その後は言うまでもない。俺の罵詈雑言ボキャブラリーを以て廉治を罵倒した。廉治は最後まで黙って聞いていたが、言い終わると、一瞬グーで殴られかけたが、流石にそれは自粛したようで、平手打ちを食らった。俺はSとかMとかそういう感情はない。だが、対象が傷つく姿は見ていて楽しい。だから、俺はSでもMでもあるのかもしれないと思った。
これで廉治との交友関係は断絶できたと思われる。後は母親だが──特に何もしなくてもこいつの性格だ。よっぽどのことがない限り心配をさせるようなことは言わないだろう。
そういえば愛乃の自我のことを説明してなかったな。こいつの精神は廉治への想いが強すぎて支配するのに苦労したが、日曜日に一日かけて支配した。
骨のあるやつは嫌いじゃない。
最後に、愛乃の中から俺に関する記憶を抹消したら完了だ。
これで愛乃が一番恐れたIFの現実を経験することになるだろう。
以上で俺の3日間は終了。ここからは愛乃に自我を戻し、俺は堪能するとしよう。