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108回目の転生

作者: 埼城

後半に変態要素が多分に含まれております。主人公への愛が怖いです。ご注意下さい!

「 ふ ざ け る な !!!」


私の死んでからの第一声はコレだった







私こと、相模 佑香 21歳は死んだ。


大学からの帰り道、いつも通っている道を通っていたら急に視界が暗転。

あっと思ったときには心臓が止まっていて、そのままジ・エンド。

そこまではいいさ。

人生色々あるだろうし、突然死だって珍しいわけではない。

だがしかし!!

だがしかしである。


それは寿命とか、そういった意味で納得できるわけであって、

これが誰かの一方的な都合によって引き起こされるのだとしたら、どうして納得できるというのか。


「すまん、ゆうか。また転生をしてもらうことになってもたw」


んな笑顔で言ってんじゃねーーー!!


できない。私にはどうしたって納得が出来ない!

コレじゃ約束が違うじゃないか!!!!






私が住んでいた世界には輪廻転生という宗教的概念がある。

死んだ魂は輪廻の輪に戻り、再びこの世に生を受けるのだそうだ。

確かに、それは本当らしい。

事実私にとって今回が99回目の生だった。

もちろん、人であったときも、微生物や植物、異世界の住人だったこともある。

その全ての生を憶えているわけではない。あんなことあったな~とか、その程度に思い出せるくらい。

別に超人的な記憶力があるわけではないので、ここ最近の分はまだ鮮明だが、最初の頃はもはやおぼろげになってきている。

それでも毎回このなんにもない白い空間で繰り広げられるこの自称:神様とのやり取りだけは

毎回絶対忘れてやるものかと記憶に強く残されているのだ。

なにせ、私とこの神の対決は未だに決着が付いていないのだから…


「いい加減にしろ!なんでまた転生なんてしなきゃいけないのよ!」

「仕方ないじゃろ~今、人手ならぬ魂不足なんじゃもん」

「もんってなによ!もんって!!大体、前の時にこれが最後だって言ったじゃん!!」

「じゃけど、もう手が回らないから、ゆうかに頼むしかないんじゃよ」

「ざけんな!私はもう安らかに眠りたいのよ!!」

「ならば眠れば良いじゃろ?起こしてやるわい。向こうに着いたときにw」

「だから、行きたくないんだっての!!」


そう、私の望みは唯一つ!

安らかに眠ることである。


ほら、死んだら安らかに眠るとか言うでしょ?

それも本当なのだ。

魂は死んだら必ず一度眠りに付いて現世で魂にうけた傷や汚れを落とす必要がある。そうしてまっさらな魂になって新たな転生を待ったり、昇華されて世界の一部になるんだ。


いま、私が渇望しているのはこの昇華の方の眠りだ。

本来魂は個体差こそあるがだいたい50回程度の転生を終えるとこの昇華が行なわれるはずなんだ。

そうしなければどんなに眠りで傷などを消したとしても魂に書き込まれる情報や経験が莫大な量となり、一個の魂としての形を維持できなくなるからだ。

なのに私の場合はその昇華はおろか傷に癒す眠りさえ一切されることなく転生させられて今回で99回目。


これは別に私が望んだわけではない!

むしろ私は毎回眠りの姿勢に入っているし、50回目が終わった瞬間にさ~昇華だとお祈りの姿勢でその時を待っていたくらいなのだ。

(この時の私は敬虔なクリスチャンだった。)

なのに、この神が

「世界の危機なのじゃ。あなたの力をお借りしたい」

とか言って私の魂を別世界の魔王として転生させたのだ。

この時に私がしっかりと断っていればこのような事にはならなかっただろう…




半泣き状態のご高齢なお爺様に聖魔のバランスの重要性だとか魂の選定の難しさだとか色々説明され、役職が魔王なだけで悪行をするわけでもなかったから私はそれで多くの魂が救われるならと精一杯努めさせて頂いた。

記憶にある様々な知識を活用して、それこそその生全てを使って世界革新を起すほどに活躍もした。


しかし、これがいけなかった。


このおかげでこの世界の危うげだった聖魔のバランスは向こう1000年は安定を保ち、自然と共存しながらの革新を続けていけるだけの道筋が作られ、その世界の神に号泣されながら感謝を述べられたのだ。


しかもこの神は余計なことに私に多大な加護だの力だのを授けていきやがった。

これから昇華されようとしていたってのに!!


これらの異世界の力が付与されたことで、私の魂の昇華が困難となり、再度基の世界での転生を言い渡された。


それには私もまあ、仕方あるまいと了承した。

異世界から分け与えられた莫大なエネルギーをそのままこっちの世界で昇華なんかしたらエネルギーの爆発やら飽和やらをおかしても不思議ではないと思ったからだ。


仕方がない、とそれからはエネルギーを少しずつ昇華するように世界に影響を与えながら転生を繰り返すことにしたのだ。


でも、


だけど、


もう限界だ!!!


なんなんだよ一体!!

私が何をしたって言うんだ!!


もういい加減に魂の限界を感じ出した62回目の時にこの神は私と取り引きをしたのだ。

(この時の私は経済破綻を起こした国の財政再建を果たした敏腕外相官だった。)

次の転生で加護として受けたエネルギーを使い切るので、天寿を全うしたその時には魂の昇華を行って欲しいと。

神は転生先で世界革命の一助になることを条件にそれを了承し、私は実際にそれをやってのけた。

だがその革命が終わった途端私は子供が放った祝いのテープが頭に当たり、そのまま永眠することとなった。


なんでだよ!?


その時はそうやって驚いたものだ。

あの子供、トラウマになっているのではないかと未だに申し訳なく思う。


それもこれもこのジジイが私を便利な駒として世界バランスを図り出したせいだ。


あいつはツッコミを入れた私に早口に世界の危機を伝え、謝罪しながらも問答無用でふたたび転生なんてさせたのだから。


それからというものこのジジイはやれ世界恐慌だの、未曾有の大災害だの言っては私をキーマンに世界のバランスを取りつつ、それが終わった途端に予想もつかないような奇抜な方法で私を殺してはまた生まれ変わらせると意味の分からないことを繰り返しているのだ。


この間で真っ当な老衰で死んだことは唯の一度もない!

どんな確率だと言いたい!!!

もはやこいつは私であそんでいるとしか思えないのだ!


だからこの20回ほどからはもはやガチンコの喧嘩を繰り広げている。


転生させられそうになったらまずは殴りかかり、なにか喋り出そうとしたら蹴りを繰り出し、奴が隙を見せたら自力で昇華へと進むプロセスを踏んで見せた。


だが奴は流石に神と言ったところでなかなかしぶとく、結果こうして互いに折れて100を限りに転生を終えると世界に誓わせたのだ。


だというのにこのくそかみじじいは、、、




「約束が違うだろうが!!!もう私の魂は限界なんだよ!!今までもってるのが奇跡なんだぞ?!これで消滅とかならともかく飽和爆発でも起こしたらどうしてくれる!!それこそ世界崩壊の危機だろうが!!!」


「でも無理なんじゃもん!!もう後は転生一桁の弱い魂しかないんじゃもん!!そんな奴らに邪神退治なんて無理難題すぎるわい!」


「んなこと知るか!んなもんやらせてみないとわからないでしょうが!!何事も経験してなんぼよ!私の時だってそうだったじゃない!」


「お主はハナから眠りなしで他の奴らとは別格じゃったろうが!!」


「そうしたのはあんたが仕事を押し付けてきたからだろうが!!」


「ぇえい!分からず屋め!!さっさと行ってこんかい!!」


「あ!この!!卑怯者!!!」


必死の攻防も虚しく、私はふたたび転生の道へと突き落とされてしまった。


「くそがみ!!!おぼえてなさいよぉおおおお!!!!!」


怨念を、というか最早呪詛を込めまくった私の叫びがあの空間に響くのを聞きながら、一度私の意識は闇におち、生まれるのをまつのだった。





「やっといったか、」


女の姿をした魂が転生の道に完全に落ちたことを確認すると、そこにいた男はとても嬉しそうにほくそ笑んだ。


「これでようやく108回。あの時から5000年が経ったのか…」


そこにはもう髭を振り乱し、乱闘のせいでボロボロになった老人の神はおらず、所々赤く腫れた精悍な顔つきの男神がいた。


彼は多数の世界の秩序を司る神であったが、ある時に出会った少女に恋をしてしまったのである。


彼は神で少女はまだまだ幼い魂の欠片であった。


男神は始めての感情に惑わされることはなかった。

なにせ彼は秩序の神。

彼が黒と決めたのならばそれはたとえどれほど鮮やかな色であったとしても黒となってしまうのだから。


男神はその少女が住む国の王に愚者が座るようにし、その国が飢饉に見舞われるようにした。

幼かった少女はすぐに飢えで死に、男神の元へとやって来た。

しかし少女は直ぐに眠りにはいってあっという間に手元からいなくなってしまった。

その次もその次も。

少女はこの世界の秩序にのっとり、眠りに落ちては転生の道に入り、男神の元から去って行く。

最初はそれでもよかった。

その魂を、生き様をみれるだけで満足していた。


しかし9回目の時

少女は乙女となり、ほかの男に恋をしたのだ。


それから男神はあれに荒れた。

乙女のいた世界の秩序を狂わせ、大きな災厄を齎したのだ。


男神は乙女がそれでもその男を愛し続けるのを見て愕然とした。

これ程までに恋し焦がれているというのに、少女は男神のことを知りもしなければ欠片も思いを寄せてはくれないのだ。


男神はそれが苦しくて狂わしくてついに思いが禁忌への箍を外してしまった。


それは過去に禁忌と指定された、いや、彼自身が禁じた神の作り方。


徳を高く積んだ魂は人神となれるという方法。

だがこれは世界のバランスを崩してしまうため、秩序を守る彼が禁じたのだ。

だが、もしそのバランスさえ保ち、他の神の追従さえも許さない程の徳と生を得ていたのならば


それからの彼は早かった。


死んだ彼女が眠りに入るのを妨げ、老人の姿をとって彼女に世界の危機を訴えたのだ。

なにも知らぬ彼女は自分に出来ることなら、と請負った。姿は違えど自分との時間を忘れて欲しくないがために使命を忘れないようにと嘘をついて彼女を眠らずに転生への道を進ませた。


そうして記憶を残したまま彼女に徳と生を与え続けてきた。


何度も他の神からの横槍や諫言、邪魔を受けた。

加護として呪いを与えられたり、試練を失敗させようとしたり。

他の男を充てがおうとしたり…


それでも耐えぬいてきた。

彼女が昇華なんて望みだした時には本当に焦り、計画を早める為にわざと事故などに見せかけて徳を積んだ途端に死ぬようにしくんだりもした。


だがそれも今回で終わる。


数多の世界で何度も世界の危機を救った彼女の魂は煩悩と同じ108の生を終え、魂の禊を終えることとなる。


そうなれば彼女の魂はどうしたって昇華どころか世界の摂理から弾きだされ、別次元の存在、神となるのだ。


「やっと愛しあえるね、僕の妻神」


次の生を終えるまであと7年。

始めて出会った時の姿と瓜二つの君がここに来てくれるまであと、、、、




逃げて、超逃げて!!!

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