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不器用な片想い  作者: 長月マコト
【本編】 第1章 - 5/24
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side Karen - 2

「ま、お前が男前ってのはホントのことじゃん? マジで、オレもお前のことカッコイイと思うし。あ、それオレにも頂戴」

浅倉は、そう言うが早いか、私の手にあったペットボトルをさっと奪うと、躊躇すらせずに自らの口に付ける。

あーっ、せっかく真由子がくれたのにー!

私は思いっきり浅倉を睨んだ。だけど浅倉は涼しい顔でお茶を味わっている。

「ん」

ひとしきり飲むと、浅倉は「世は満足じゃ」とでも言いたげに、笑顔で私にペットボトルを突き返した。

その反対の手の甲で、自分の口を拭っている。

ってゆーか、他人のペットボトル勝手に飲んだんなら、返す前に飲み口ぐらい拭けっ!

私は浅倉からペットボトルを受け取ると、首に下げていたタオルで飲み口を綺麗に拭き上げ、それから口を付けた。

「あのなぁ……オレはバイ菌かよ」

「あれ、違った?」

「いいじゃん、オトコ同士なんだし、そんなにいちいち気にすんなって」

「誰がオトコかっ!」


  すっこぉぉおん!


これは、私がペットボトルで浅倉の頭を叩いた音。

もう空になってるから全然痛くないはず。

「いい音♪」

私は、ふふっと笑った。

真由子も河合君も笑っている。

「いってーなぁ」

「今のは、誰がどう見ても浅倉が悪い」

正面から声がした。

「あっ、鈴木さん。今のって、見ちゃいました……よね?」

私は『見ていませんように』なんて淡すぎる期待を胸に、聞いてみる。

鈴木さんは苦笑交じりに肩をすくめた。

「永野さん、ごめん。バッチリ見た」

やっぱりですか。

私はため息をつく以外にない。


鈴木さんは、さっきの試合の審判をしてくれていた先輩。

整った顔立ちで、爽やかで、仕事もできて、背も高い。

しかも、明るくて頼りになる性格だから、男女問わず人気がある。

私と同じ、マーケティング企画部に所属している係長、兼、課長代理。

未だ32歳。課長代理っていうのは異例の昇進。

私の憧れの人だ。

多分、私だけじゃなくて、ほとんどの女子社員が憧れてるんじゃないかな。

中には、本気で好きだった人もいると思う。

バレンタインや誕生日の日には、鈴木さんの机の上が毎年すごいことになってたし。

鈴木さんの彼女も大変だ。

でも、その鈴木さんも来月末に結婚を控えている身。相手は総務部の豊田さん。

豊田さんもすごく素敵な人。

私たちは4人とも、その披露宴に出席することになっている。

披露宴って言っても、1.5次会ってやつね。

式は身内だけでやって、披露宴はやらないんだって。


「相変わらず仲がいいね、香蓮と浅倉君って」

真由子がにこにこと笑いながら、突然トンデモないことを言ってのけた。

「ちょっと真由子っ、これのどこが『仲がいい』のよッ!?」

「そうなんだよな。部署でもこの2人すっごく仲がいいんだよ」鈴木さんもうんうんって頷いている。「俺、初め、2人は付き合ってるんだって思ってた」

痛恨の一撃。

あぁぁぁ。間違ってる、絶対に解釈が間違ってるよぉ……。


確かに、私と浅倉はよく話す。

同期だってコトもあるけど、同じ部署に所属しているからっていうのも大きい。


そう。浅倉も、今、マーケティング企画部に所属している。

去年度までは開発部にいたけど、人事異動で4月からこの部署に所属することになった。

鈴木さんがこっそり教えてくれたところによると、経験のため、らしい。

マーケティング関連の業務を一通り勉強した上で、また開発部に戻ってもらう予定なんだそうだ。

逆に言うと、開発部のシゴトをマーケティング企画部に伝える役割も負っていることになる。

組織が縦割りだけにならないようにっていう、会社の新しい試み。

来週末で5月が終わるから、浅倉がこの部署に所属してもうすぐ2ヶ月経つことになる。

入社して5年間ずっとマーケティング企画部にいた私が、同期だからという理由で浅倉のOJT担当になった。

開発部って言う全然畑違いの部署からの異動の割には、この2ヶ月、すごい勢いで仕事を吸収している。


頭いいんだよね、浅倉って。要領もいいし、勘も働く。

綺麗って言う感じじゃないんだけど、男らしいちょっとワイルドな顔立ちしてるし、髪も長めで、ワックスで適度に固めてるのが様になる。

スポーツ万能だし、背も私が見上げるほど高い。

そういえば、浅倉が異動してきてから、マーケティング部のフロア周辺をウロウロしてる女の子の数が倍増した。

今までも鈴木さん目当ての女の子は多かったんだけどね。

それに拍車がかかった感じ。

あれはきっと、浅倉目当ての子が増えたからだ。

明らかにモテてるんだと思う。

でも、入社してからずっと、未だに浅倉の隣に彼女らしき影はない。

なんでだろ?

ま、いたとしても、私に言ってないだけかもしれないし。

報告の義務があるわけじゃないんだから。

ただ、性格の悪いところがあるから、彼女ができたとしても、あっという間に振られてそうだけど。


隣に座っている浅倉を見る。

「ちょっと浅倉、アンタも何か言ってよ」

「ん? 何が?」

浅倉は、首を回してストレッチしていた。

コイツ、今の話聞いてなかったの?

「だ・か・ら、『仲がいい』って話!」

「――別に、仲が悪いわけじゃねーんだから、いーじゃん。ま、曲解はされてたみてーだけど」

なんだ、聞いてたんじゃん。

ってゆーか、なに、その余裕?

「やっぱり違うのかぁ」

鈴木さん、お願いだから、その残念そうな微笑みは止めて下さい。

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