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不器用な片想い  作者: 長月マコト
【本編】 第7章 - 6/14
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side Karen - 24

もともと私は、女性らしさのカケラもなくて。

背だって、男性並みに高くて。

テニスをさせたら男性と肩を張り合えるほどで。

気も強いし負けず嫌いだし、可愛げなんてものも全然持ち合わせてなくて。

恋愛だって、ほとんどまともにしたことなくて。

このままずっと、一人でも平気だって思ってた。


でも、公私共に憧れていた先輩が結婚するとなると、ちょっとだけ寂しい気持ちが生まれたりする。

そして、とっても仲のいい2人を見ていると、生涯の伴侶って呼べる人がいるのって羨ましいな、とも思ったりもする。



週末。私はまたテニスサークルに参加している。

って言っても、私は、今日はのんびりと見学するだけにさせてもらった。

女性って、いろいろあるんだよね。

少し貧血気味だし、身体がだるい。

これが来週じゃなくてよかったって思っておこう。

休もうかなぁとも思ったんだけど、真由子が「香蓮が来ないなら私も休もうかなぁ」なんて言うんだもの。

今日は河合君も来れないって言ってたから、そうしたら、浅倉が一人になっちゃって、可哀想じゃない?

河合君は、今日、彼女さんの誕生日なんだって。だから誕生日デートするって言ってた。

河合君の彼女さんって、どんな人なんだろう。彼女さんの前でも、あんな風に、ゆったりとして落ち着いてるのかな。


そういえば、私ももうすぐ誕生日だ。

翔はどうするんだろう? 一緒にお祝いできるといいんだけど。

あ、翔は翔で、彼女とデートするかな。聞いておかなきゃ。


「疲れた」

浅倉だ。私の座っていたベンチの隣に、どかっと腰を下ろした。

「あれ? 真由子は一緒じゃないの?」

確かさっきまで、浅倉と真由子が一緒に組んで試合してたはず。

「武田さんなら、向こうの試合の審判頼まれて行っちまった」

「あ、ホントだ」

浅倉の示す先、高い椅子の上に、真由子がちょこんと座ってるのが見えた。

薄手の長袖ジャケットにお揃いのズボン、サンバイザー。日焼け対策はバッチリという格好。

今日は曇ってるから大丈夫だよって私は言ったけど、曇りの日こそ紫外線対策はしなきゃいけないんだって、逆に真由子に怒られちゃったんだよね。

「さすがに鈴木さんは今日、来てないね」

「結婚式、来週だろ? さすがに無理だろ」

私の言葉に、浅倉が言った。

結婚式まで1週間。怪我をしちゃいけないから、この週末、鈴木さんはサークルを休むって言ってた。

鈴木さんのいないテニスサークルは、やっぱり、雰囲気が違う。

鈴木さんの存在感の大きさを改めて感じる。

「そういえばさ、私たちって、何時に会場に着いてなきゃいけないのかな? 浅倉、知ってる?」

鈴木さんに受付を頼まれて以来、ほとんど何も聞いてない。

会費制の披露宴だから、来場予定者の出欠を取って、会費を集めて、それくらいしかやることはないと思う。

それでも、他の参加者よりは早く着いてないとばつが悪いものね。

「永野、鈴木さんから聞いてねぇの?」

「うん」

「鈴木さんがそーいう用件伝え忘れるなんて、実は結構テンパってんだな」

「浅倉に言えば伝わるって思ったんじゃない?」

「もしかしたらそうかもなぁ。あぁ、で、一応、17時半に来てくれってさ。開場が18時で開宴が19時だから、まぁそんなもんだろ」

「17時半、ね」

ダメだ、忘れそう。

私はバッグから手帳を取り出した。

滅多に見ない手帳だけど、書いたって記憶は残るだろうから書かないよりもマシだし。

見開きで1月の手帳。6月のページを開く。

6月20日の欄、『鈴木さんの結婚式』と書かれた上に『17:30集合』と書き込む。

逆算していくと……16時に家を出れば間に合うよね。

そうだ、翔にも言っておかないと。

また、メイクアップとヘアアレンジをしてくれるんだって。

一人じゃできそうにないから、せっかく言ってくれてるんだし頼むことにしている。

だから、翔に16時にはセットが終わるようにお願いしなきゃね。

「じゃあ、17時半に現地集合でいいよね?」

バッグに手帳をしまいながら浅倉に言う。

あれ? 返事がない。

顔を上げて浅倉を見た。

浅倉はぼーっとしていた。なんだか、焦点が合ってない感じ。

「浅倉?」

浅倉の目の前に、手をかざして上下に動かしてみる。

「ん? おぉ」

あ、やっと気づいた。

「聞いてた?」

「いや、すまん。なんだっけ?」

「17時半に現地集合でいいんだよね?」

「そうだな。それでいいんじゃね? あの式場、駅から近かっただろ?」

浅倉はそう言いながら、自分のバッグからペットボトルを取り出した。

蓋を開けて勢いよく飲んで行く。

そりゃ、試合した後だしお水欲しいよね。

あ、もしかして、真由子、水分補給せずに審判やってるのかな。

だとしたら、真由子も喉渇いてるはず。ペットボトル、持って行ってあげよう。

私は立ち上がって、真由子のバッグの上に乗っていたペットボトルを手に取る。

そこで、何か違和感を覚えた。

あれ?

浅倉って、いつも、私が飲んでるペットボトルを横取りしてなかった?

バッグの上に置いておいたのを勝手に飲んだりとか。

「ねぇ、浅倉」私は聞いてみた。「もしかして、浅倉って、いつも自分でもペットボトル持って来てるの?」

浅倉が、私の方を見て、口からペットボトルを外す。

「ん? 持ってきてるけど。それがどーかした?」

え? そーなの?!

いつも勝手に私のペットボトル飲むから、持って来てないんだと思ってたのに。

「じゃあ、なんでいつも私の飲むのよ?」

「……趣味?」

そんなこと、趣味にするなー!


最近ちょっと見直してたけど。

やっぱり、こいつ、ムカつく。

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